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脇役の分際  作者: 猫田 蘭
大学生編
148/180

一月の脇役 その二

 私は未だに乙女ゲームをプレイした経験がない。

 や、もうほんと、すっごく興味はあるんですけどね! カッコイイ声でありえないほど甘ったるいセリフ囁かれて悶えてみたいんだけどね! ゆめみるおんなのことして!

 そんな残念な私なのだけれど、それらしい漫画ならいくつか読んだことはある。


 いやー乙女ゲームって、モブじゃない(重要)ライバルキャラの方に感情移入しがちな私でも、あんまり辛い思いをしなくてすむところがいいね。後半に進むにしたがってライバルとの間に友情が芽生えるし、邪険にされすぎないので安心ってゆーか……。


 まぁ、ライバルにさえなれないモブの扱いはほんとに酷かったりするんだけどさ。人としてどうかと思うほど性格も頭も悪~く描かれてたり、攻略キャラから驚くほどあっさりポイ捨てされちゃったり。


 だから、もしも絵実ちゃんがそんな立ち位置なのだとしたら心穏やかではいられない。かわいい従妹があんな目に遭うなんて、私、耐えられない。

 でも待てよ、絵実ちゃんって、モブに甘んじているような子だっただろーか。


 うちの親族って基本的に目鼻立ちがくっきりしているんだけど、中でも絵実ちゃんは魅力的な猫っぽい目の持ち主で、結構な美人さんだ。まぁ、ちっちゃいけど。背は私とあんまり変わんないけど。あ、あと胸が……。(ごにょごにょ)

 えー、つまりはスレンダーなんですよ。


 私と違って少し小麦色っぽい肌と筋肉質な身体、そして黒髪ストレート。エキゾチックなんだよね、うらやましい。……おかしいな、ちっちゃい頃はそっくりって言われてたんだけど。どうしてこんな違いが出てしまったのか。

 ともかく、身内のひいき目かもしれないけどそう悪くない容姿なわけだから多少のお役目はありそうなもんだ。


「それで、絵実ちゃんは具体的にどんな迷惑被ってるの? ただ単にその子がウザいってだけで私に愚痴ってるわけじゃないよね?」

「ウザいだけならべつにいーんだけどさ。あ、ほんとはよくないけど付き合わなけりゃいいだけだし。でも、同じ部屋ってだけで色々あるんだよねぇ」


 例えば、いきなり「同じ部屋なんだし、私達親友よね!」と宣言されたり。例えば、全然興味のない相手との昼食にしつこく誘われたり。例えば、先輩である生徒会長に敬語で受け応えするのを「他人行儀! 距離を置くなんて可哀想!」となじられたり。

 挙句の果てに、その転入生を鬱陶しく思う一団から呼び出されたり。うわーい、おやくそくぅ。

「そりゃ……ウザいねぇ」

 他に表現のしようがない。


 無論、絵実ちゃんはやられっぱなしの子ではないのできっちりはっきり対応しているみたいだけど。

 親友宣言には「あなたみたいなタイプ苦手」と突き放し、昼食の誘いは断り、先輩へ対するスタンスの違いについては「目上の人にタメ口きく方が信じらんない!」と言ってやったそうだ。よくやった、偉いぞ絵実ちゃん!


「呼び出しは無視だよ無視。呼びに来た子に自分で何とかしろって言って帰ってもらった」

「人の話聞かないタイプには、何言っても無駄だもんねぇ……」

 う~む、やはりその転入生が「乙女ゲーム」に沿った言動を繰り返している線が濃厚になってきたぞ。そして絵実ちゃんは多分、ヒロインの親友ポジション認定されてるんだ。(自力でフラグを折り続けてるようだけど)


 いやー、もうきっちり脇役だね。血は争えないね。

 ここは一応、(不本意ながら)脇役の先輩として忠告しといたほうがよさそうだなぁ。でもなー、何と切り出したら良いものか……。


 何せ絵実ちゃんはあまり漫画やゲームには興味がなくて、愛読書はファッション雑誌という子だ。あんまり非現実的な説明からだと理解してもらえない可能性が高い。

 まさかいきなり「あなたの学校は現在特殊なゲームのルールに支配されてるんですよ」とは言えない!(うぐぅ)


「絵実ちゃんの学校ってさ、もしかしてスクールカーストみたいなの、あったりする?」

「って、身分制度みたいなものがあるかってこと? 学校で?」

「えーと、特別扱いされてる団体とか」

 乙女ゲームに限らず学園モノ作品の中には、舞台が日本だというのにスクールカーストがあることになっているものが一定数存在する。なぜだ、なぜなんだ!


 高校の生徒会だよ? 正直雑用っぽいお仕事が大半だよ? それが、なんで絶大な権力を握っていることになってるんだ! なんで「様」付けで呼ばれてあまつさえ公認ファンクラブまであるんだ!

 あの光山君でさえ、まぁたまーに「海人さまv」なんて呼ばれることはあったものの、グルーピーみたいなのはいなかったぞ。……少なくとも、表向きは。


「んー、生徒会はちょっとトクベツかなぁ。申請しなくても遅くまで学校いていいみたいだし。寮の門限も緩いみたいだし」

 ……ダヨネ、ふつー、高校の生徒会役員が受ける恩恵なんてその程度だよね。


「じゃぁ、生徒会と風紀委員は仲悪い? あ、もしかして寮の自治会とかあったりする?」

「なんでー? ちょー仲いいよ、仕事かぶってるし。ってゆーか私風紀だし。ジャンケンで負けちゃってさー。まぁ、お互い手伝いとかしてるよ。寮はねぇ、各学年から代表出して点呼係みたいなのやってるけど、そのくらいかな」


 そうだよね、生徒会と風紀委員と、ついでに寮の自治会(絵実ちゃん的に、入居者の名前を呼ぶだけの簡単なお仕事)は、お互い協力しないとスムーズに回らないよねぇ。


「あとはー……。あ、保健室って、養護の先生じゃなくて保険医の先生がいたりする?」

「いるよ。うちは寮があるから、その辺気ぃつかってくれてるみたい」

 へぇ、めずらしー。医学部の保健室くらいにしかいないと思ってた。でも確かに、寮付きだからな……。夜中に熱出したりケンカしたり、ありそうだもんな。


「その女の子が、転入から数日で声を掛けた人って、みんなカッコイイ?」

「んー。まー人気あるんじゃん? 私の好みじゃないけど」

「うぅ~ん……」

 そんなに特殊な環境じゃないんだけどなぁ。私の考えすぎかなぁ。


「なんでそんな変な事気にするの? なんか関係あるの?」

「あるのかないのかわかんないの」

「どゆこと?」

 くっ、乙女ゲームを一から説明するのはなんだか気恥ずかしいんだけどな!


「あのね、この世の中には『乙女ゲーム』って言われるものがあってね。カッコイイ男の子を恋人にしちゃうのが目的のゲームなんだけど」

「ぁ~、そういうゲーム知ってるよ~。ケータイでやってる友達いるもん!」

 よかった、基礎はできてた!

「そういうのって、男の子達には一定のパターンがあるの。あ、全員美系で能力的にもハイスペックなのは大前提だよ?」


 私が独断と偏見で分析したところ、まず、メイン攻略対象は「お金も権力もあるオレサマ」であることが多い。

 自分は愛されて当然と言い切る厚顔無恥さで、オレサマ(実際、一人称が「オレサマ」だったりしちゃうんだよ、すごくない?)に従わないなんておもしれー女じゃねーか、とヒロインに興味を抱いて強引に迫る迫る。


 そんなオレサマの傍には、人当たりのいい調整役キャラがひっついている。一見イイ人なくせに実は人間不信の人間嫌いだったりして面倒なんだ。

 やたらとオレサマに傾倒していて、ヒロインを遠ざけようと嫌味言ったり冷たく当たったり……するんだけど、諦め悪くぶつかってくるヒロインにある日突然コロっといっちまうんだな~。ふ、チョロいぜ。


 もう一人必須なのが女の子大好きのチャラ男。女の子には平等に優しくて、何もかも緩いタイプ。

 そんな彼がいつしかヒロイン一人だけを真剣に愛するようになっちゃって、今までの遊び相手をスッパリ片付けて一途にのめりこむ姿が一見健気なんだ、一見。

 実際、切り捨てられた女の子達にとっちゃたまったもんじゃないんだけど。


 そもそもそういう人って簡単に宗旨替えできるもんなのか? 二股とか浮気とか不倫とかしちゃう男の人は、再犯する確率がすっごく高いんだって二軒隣のおうちのおねーさんが言ってた。

 確か彼女、妻子ある男の人と略奪婚したはずなんだけど、2年後……。(ゴホゴホ)

 いやー経験者の言葉は重いわ~。お蔭で私、「人のものを欲しがってはいけません」という大事な教訓を得たんだった。


 と、危ない、脱線しかけた。えーと、あとは年下の男の子と、大人の男の人と、ちょっとミステリアスでぶっきらぼうなお助けキャラあたりか。

 年下の子が双子だった場合、見分けられて喜ぶタイプと間違われて面白がるタイプ、二通りあるみたいでひじょーにややこしい。アイデンティティの問題が関わってくるから。


「それでね、学園ものに当てはめると、生徒会役員になるわけよ」

「会長、副会長、会計、書記?」

「そうそう」

「でも、性格全然チガウじゃん!」


「そうだよねぇ……。でも、その女の子のセリフ聞いてると、パターン踏んでるとしか思えなくない? それに、ゲームの基本はとにかく攻略キャラに接触することだから。簡単なのだと、とりあえず話すだけで好感度上がっちゃうらしいから!」

「ぇー、変なの。ムカつく事言ってもいーんだ?」


「うん、大抵の場合好意的に解釈してくれるはず。あとは、風紀委員長と副委員長、担任の先生、保健医の先生あたりかなぁ。とりあえず、そういう人たちがみ~んなヒロインに夢中になって、取り合いしたりヒロイン助けるために団結して友情築いたりするんだよね」


「ふーん。じゃぁ久実ちゃんは、あの子がゲームやりすぎて、とうとう主人公になりきっちゃったんだって言いたいの? あ、久実ちゃんの去年のクラスメイトにそんな人いなかったっけ?」

「手越さんみたいな人がそんなにいっぱいいるとは考えたくないんだけど……」


 でも、現実がゲームに飲み込まれていると考えるのと、果たしてどっちのほうがが可能性高いんだろう……って真剣に悩んじゃう私って可哀想!(非日常に慣れ過ぎた!)


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