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16.
チョコルは星を見ている。
「親ですか?」
「知っていましたか? 京介。この星はううんと長い時間をかけて旅してきた光なのです」
チョコルは話しはじめた。話の結末を知りたがったが、我慢することにした。
「チョコルは天使です。天使もいつか死にます。意外と知られていなのですが。だけどそれは長い長い時間をかけてのことです」
「知らなかった」
俺は相づちを打った。天使は天使で、生まれて死ぬのか。俺はチョコルについてなにもしらない。
「親の話をします。チョコルの親は、これです」
これ、といってチョコルは掌を空へ向けた。
チョコルの手は柔らかそうだ。積もったばかりの雪を連想させる。
「空か?」
俺はきいた。
「違います。これはこれ、それ以外の何ものでもありません」




