わたしと自動書記
22歳の大学生であるわたし。
学生時代最後の冬休みに入ってから、こたつにこもる時間が増えた。
お弁当作りの必要がなくなり、猫との挨拶もお休み気味で、お隣さんも遠征に行ってしまったうえに…記録的な寒波の到来の影響でバイトもない。
ふと、有り余っている時間を使って、小説を書いてみようと思い立った。
こたつに足を入れ、ノートパソコンを開き、小説投稿サイトの執筆ページを開いてみる…。
ああでもない、こうでもない、そうだ、こんな展開はどうだろう…。
これは書いておこう、もう少し華やかに演出してみようかな…。
文字を打ち込み、短い話を完成させるために…ウンウンと頭をひねった。
それだけで、小説家になっているような気がした。
文章を整え、短編作品として公開してみた。
それだけで、小説家になれたと思った。
私は、物語を書くことにハマった。
主人公の名前を決め、舞台を考え、突拍子もない出来事を起こし、サクッとまとめる。
たったそれだけで、いくつもの物語が動き出した。
夢中になって手を動かしていたら、ずいぶん時間がたっていた。
こたつのぬくもりが、容赦なく私を誘う。
まぶたが、どんどん…重くなっていく。
わたしは「少しだけ…」とつぶやいて、そのまま、眠りに…落ちた。
真っ暗になった部屋の中で目を覚ますと、ノートパソコンの画面だけが明るく光っていた。
開いている文書には…、見覚えのない長い文章が並んでいる。
書いた覚えは、ない。
けれども…文体はどこか自分らしい。
物語は妙に深く、意味ありげで、読み進めるほどに…胸がざわついた。
「これ、本当にわたしが書いたの…?」
思わず声に出してしまう。
こたつの中で眠っている間に…、夢遊病みたいになって、指が勝手に動いたのだろうか。
もしかしたら、自分以外の誰かが…書いた可能性だって……。
そんなはずはないと思いながら、完成した物語を読み返す。
読めば読むほどに…不思議と誇らしい気持ちが湧いてくる。
……ふしぎな感覚だった。
その日以来、わたしはこたつに入るたび、少しだけ期待してしまうようになった。
眠っている間に、また…新しい物語が生まれるのではないかと。
遠い、遠い昔の…、冬の、魔法みたいな出来事。
今でも、わたしの創作意欲を…、ずっと、そっと、くすぐっている。




