わたしと歌
22歳の大学生であるわたし。
最近は、お弁当作りと猫との挨拶が日課になっている。
そんな穏やかな日常を過ごしていた、とある日の、午後。
ふと耳に入ってきたのは…、隣の部屋から漏れる歌声だった。
澄んでいて、どこか切ない。
思わず足を止めて聞き入ってしまった。
翌日も、その次の日も…、同じ時間に歌声が聞こえた。
歌詞は聞き取れないのに、胸の奥がじんわり温かくなる。
心が自然と求めてしまうような、魅力のある歌声……。
気づけば、歌が始まる頃を狙って帰宅するようになっていた。
歌が聞こえる場所を探して…ベランダの前が一番よく聞こえることを発見し、常駐しているミニテーブルとクッションの位置を変えた。
わたしに不思議な習慣がまたひとつ増えたと、一人微笑んでいたある日。
歌が…突然、止んだ。
落ち着かない気持ちのまま、定位置に腰を下ろして…ノートパソコンを開く。
あたりには静けさが広がっており、どこか無機質で…味気なく、温度も少し下がったように感じた。
知らない誰かの歌なのに、聞けないだけでこんなにも寂しいなんて、自分でも驚いた。
翌日、廊下で買い物袋を抱えた女性を見かけた。
…お隣さんだった。
わたしが挨拶をすると、彼女は少し照れたように笑い、「いつも聞こえてましたよね、歌」と言った。
思わず、大げさに頷き、「好きでした、すごくファンだったのに…また聞きたいです!!」と伝えた。
「苦情が出てしまったので…ここではもう歌えないけれど」と言って、お隣さんはCDをくれた。
LIVEやイベントの情報をもらい、生歌を聞くために出かけるようになった。
歌声が、また日常に戻ってきた。
お弁当、猫、そして歌。
どれも小さな出来事だけれど、わたしの世界をそっと広げてくれる。
このままもっと、もっと…自分の世界が広がっていくといいな。
わたしは自然に、微笑んでしまうのだった。




