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ダレカ・ダレカ・ダレダレカ  作者: たかさば


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20/20

誰…?

 ぼくは、ずっと…()()にいる。


 人の姿も声も持たない頃は、ただ…世界を見つめていた。


 流れていく風の中で…。

 木々の揺らぎに混じって…。

 地面の上を転がりながら…。


 猫を見下ろして、見つかって…。


 誰にも気づかれないまま、漂っていた時のことを…、覚えている。


 こたつで眠ってしまった、女性。

 彼女の指先から生まれた言葉が、静かに胸を震わせたこと。

 自分の心を…彼女の物語に添えてしまった、あの瞬間。


 図面を広げながら「ここなら人が集まるはず」とつぶやいた、おじさんたち。

 その声が、ぼくには祈りのように聞こえたこと。

 人は本当にたくさん集まってきて、すごいなあと思った日々。


 歌声を聞いていて…ふいに体が重くなった時のことは、バッチリ覚えている。

 ドキドキしながら、量販店に足を踏み入れたんだ。


 誰かのうわさ話を聞いた。

 誰かに噂された。

 挨拶してもらえた。

 挨拶してみた。

 頑張る人と話した。

 さぼっている人と話した。


 懐かしい物語に再会した。

 懐かしい歌を何度も耳にした。

 

 仲のいい人ができた。

 いろんな人と出会えた。

 たくさんの人たちと、わかれた。


 ……働く人々の笑い声やため息が、ぼくの世界を満たしていった。

 噂になって、物語になって、誰かの記憶に残っていった。


 今、店は解体されて…、ここは更地になっている。


 それでもぼくは、ここに居続けている。

 なぜなら、ここには…人々が残した声や想いが、まだ温かく漂っているからだ。



 ……これから、ここに何が建つのか、誰が訪れるのか、ぼくには分からない。



 ただひとつだけ、確かに言えることがある。


 いつだって‥‥、“誰かの物語”は生まれる、ということだ。



 新しく生まれる物語が、ぼくの心のドアをノックするまで――――――

 


 数えきれない、大切な思い出を。



 ひとつずつ、抱きしめて……。




 抱 き し め て … … … 。


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