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ダレカ・ダレカ・ダレダレカ  作者: たかさば


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16/20

誰かの声

 ぼくは、名前のない…“何か”。


 姿も形もなく、人間の目には映らない。

 ただ、街の片隅や家の隙間、誰かの肩越しに流れる空気の中で、そっと人々の暮らしを眺めている。


 声を持たないぼくは、いつもなにかの声に耳を澄ませていた。

 動物であったり、虫であったり、人であったり…、ささやきを拾っては、なにかを得て過ごした。


 ある日、アパートの一室から、小さなため息が聞こえてきた。

 若い女性が、机に向かい…悩んでいる。


 ぼくはその肩に寄り添うように漂い、彼女の震える声を聞いてみた。


「うまく書けない…どうしたらいいんだろ」


 その言葉が、なぜか…ぼくの胸の奥に、静かに沈んでいった。


 別の日。

 商店街の裏で、男性がひとり、空を見上げていた。

 紙がいっぱいはさまったボードを持って、指先でトントン、トントン、トントントントン…リズムをとりながら。


「無事に建つといいな…。お客さんがいっぱい来たら、それだけで…御の字だ」


 その声は弱々しいのに、どこか温かかった。

 ぼくはその言葉をそっと拾い上げ、風に混ぜて遠くへ運んだ。

 誰かに届くようにと、願いながら。


 ぼくは声を持たない。

 けれど、人間たちの声は、ぼくの中で静かに響き続けている。


 喜びも、迷いも、祈りのようなつぶやきも。

 どれも小さくて…、どれも大切だ。


 今日もぼくは、誰かの声を探して漂っている。


 姿はなくても、そこにある想いだけは、確かに感じられるから。


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