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ダレカ・ダレカ・ダレダレカ  作者: たかさば


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11/20

あの人の噂

 とある、量販店。

 ここでは、年齢も性別も経歴もばらばらな従業員たちが多数働いている。


 朝、9時45分。

 従業員は全員開店前にバックヤードで集まり、朝礼をする。

 眠そうな顔をしている従業員もちらほらいるが、それぞれが気を引きしめ、一日を始める準備をするのだ。


 繁盛している、この店舗。

 ここで働く従業員は、200人を超えている。

 誰もが自分のことで精一杯で、互いのことを深く知る機会はあまりない。


 ある日、レジ担当の若い女性が、ふと、休憩室でつぶやいた。


「あの人、いつも静かに働いてるけど、何を考えてるんだろうね」


 視線の先には、黙々と棚を整理する中年の男性がいた。

 すると別の従業員が、笑っていった。


「あの人、すごくかわいいお弁当箱持って来てるんだよ」

「知ってる!佐伯さんとめっちゃ盛り上がっててさあ、意外って思った!」


 そこから、ぽつりぽつりと“知らなかった横顔”が語られ始めた。


 どう見てもちまちまとした作業が苦手そうに見える風貌だが、実は毎日弁当を作っていること。

 普段は無口だが、料理の話になると水を得た魚のようにイキイキと話し始めること。


 話は一人の従業員に関する事から、この場所で働く別の誰かの事へ。


 いつも明るいパートさんが、実は夜に資格の勉強をしていること。

 おっちょこちょいのパートさんが、大学院出のエリートだということ。

 新人の青年が、こっそりギターを練習していること。

 青果部の責任者の奥さんが、よく半額のお弁当を買いに来る太ったおばさんであること…。


 誰かの何気ない一言が、別の誰かの意外な一面を引き出していく。


 ……人気を集めている量販店は、毎日とても慌ただしい。


 仕事は相変わらず忙しいけれど、ふとした瞬間に「この人にも物語があるんだ」と思えるだけで、店の空気がほんの少しだけ…柔らかくなる。


 従業員たちは、互いの横顔をほんの少し意識しながら、今日も働いている。


 心がほんのりあたたかく感じられる瞬間を、無意識に…求めながら。


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