八話
こんにちは。
長くなりそうなので途中で切ります。
突然目の前に現れた美少年。
入学式のパーティーで見た通りの、お美しい姿。
それが……
(いきなり目の前に現れになるなんて~~~~~~!!!!!)
今日は色んなことが起きて頭が痛い。
授業で倒れて、セリウス様の研究室に入れていただいた上に、そこでレオン様にお会いするなんて…!
(それに、カイル様にも温室へ通していただいたし…)
新たに五大貴族の方とお会いするにはもういっぱいいっぱいだ。
というか、私
授業で倒れて、ベッドで起きて、走ってセリウス様を追いかけてきて…
とても五大貴族の方とお会いできるような容姿じゃなくない!?
慌てて髪を直して立ち上がる。
「れ、レオン・ヴァルストリア様っ!
お初にお目にかかります。サンベルジュ家の長女、ミレイユと申します。」
「あ、あぁ。
レオン・ヴァルストリアだ。よろしく。」
そう言ってレオン様が手を差し出してくれる。
きゃ、きゃ~~~~!!!
階級の見合わない私にもこんな風に優しくご挨拶してくれる。
お噂通りのスーパー紳士だわっ!!
「よ、よろしくお願いします!!
お会いできて光栄でっ、あの、同じ学び舎にいられることがっ!!」
何を言ったらよいか分からぬまま話し続ける私を、セリウス様が遮る。
「もういい?僕待ってるんだけど。」
…せ、セリウス様~……!!
情けない挨拶を途中で切ってくれたのは有難いかもしれないが、私はレオン様に初めてお会いするのに~…!!
私が心の中でセリウス様に異議を唱えていると、レオン様が咳払いをして話し出す。
「アルメルト子爵。私はとにかく、一存で君の実験に付き合うことはできない。
悪いが別を当たっていただけるだろうか」
あ…入学式のパーティーで見た通りのレオン様…
品があり、堂々とした言葉遣いなのに、どこか優しくて暖かい雰囲気…
「急に態度を変えてももう意味はない。もうさっきの押し問答はサンベルジュにも聞こえている。」
「…っ!セリウス~…!!」
先ほどまでの凛とした態度は一変、予想外にレオン様が赤面する
あ…私がいたから、ちょっとごまかそうとしたってこと…?
(どう考えても聞こえてるやり取りだったと思うけど…)
私のイメージを壊さないためにがんばってくれたの…?
(創造と違う…!かわいい…!!)
一人の世界に入ってしまった私はよそに、レオン様がセリウス様を叱る。
「君は!一般生徒への立ち居振る舞い方をわきまえなさすぎだ!
クラスでの立ち位置も聞いているぞ!他の生徒とろくに会話もしない、挨拶も無視、かと思えば突然あれこれと無関係の生徒に指図する!
そういうことは自分の従者にさせろ!」
「嫌だ。まず連れてきていない。」
「嫌…!!?そういうのは自分の身の回りのことを自分でできるようになってから言うんだ!
寮には自分の従者がいるだろ!その人たちに学園までついて来て貰え!」
「ずっと人間に見られているなんて嫌だね」
「ど、どうしようもないことを…!!」
…レオン様、幼馴染のセリウス様にはこんなお姿も見せられるんだ。
見てはいけなかったであろうお姿だと思えば思うほど、偶然居合わせられたことに嬉しくなってくる。
レオン様は幼馴染であるセリウス様のことを心配していらっしゃるのね。
学園での周りからの評価は、そのまま社交界からの評価に繋がるようなもの。
五大貴族といえあまりに一般生徒への態度が悪いようだと、悪評を立てられてもおかしくない。
そうなる前に何とかしようと叱ってあげるなんて、お優しい…。
対してセリウス様はレオン様の言葉が耳に入っていないようにつーんとされている。
もはやお話を聞かずに、棚の中から何かしらの器具の準備を始めてしまった。
「君は昔から甘え上手なのは知っているが、もう成人なんだ。
社交界の付き合いも我慢しないと…」
「よし。サンベルジュ。そこに座れ。レオンはこれを持ってくれ。」
「えっ。私?」
「話を~…!」
そう言いかけたレオン様の手に何やら大きなよく分からない箱状の物を渡し、私が座るよう目で指示する。
レオン様が受け取られた箱からは謎の太い紐状のものが伸びており、それがセリウス様の持つ二つの輪っかに繋がっている。
「な、なんだこれ」
「魔力の変換を行う機械だ。対象者の魔力を変換して大気中のマナなどに近い成分へと変える。
その反対でこちらの器具が読み取った受給者の魔力の型をこの器具に伝え……」
………あぁ…難しい話…
「というわけだ。理解できたか?」
一通り話し終えたセリウス様が、契約書へサインを求めるかのように確認してくる。
「理解できたか?って…」
レオン様が呆れたように言う
(ほんとに分からないから私は黙っとこう……)
黙っている私の様子も確認して、私の代わりに話を続けてくれる。
「……その理論があっているかなんかすぐに判断できないよ。きちんと今言ってくれた文献を読み直して、今セリウスが言ってくれた内容と照らし合わせたり、」
「きちんと逆説が思い浮かばないということは今一番正しいのは僕だろう。さあ、始めよう。」
真摯に返事をしてくれているレオン様の言葉をセリウス様が遮って、持っていた輪の一つを手渡す。
「(お、横暴な…!)」
…心の中の声がレオン様と被ってしまった…。
「これはサンベルジュがつけろ」
そう言って、先ほどよりも大きな輪を渡される。
「頭に被れ。」
「あ、頭…!?」
てきぱきと準備を進めるセリウス様に、私もレオン様も何も言えなかった。




