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一話

初投稿です。完結目指して頑張ります。

 ――王立フェリシア学園。

 王家直属の、エリート学園。魔術、剣技、礼儀作法、政治学……未来の国を支える若き貴族たちが集う場所。

 地方の伯爵家の子息からこの国の中心をまとめる貴族のご子息たちまで、幅広い人間を育ててくれるのがこの学園だ。

 「これから六年間、ここで過ごすことになるんだ…」


 胸元に下げた推薦状をぎゅっと握りしめる。

 「大丈夫!父や母も通っていたところだし、何事も気合を入れすぎるのが悪いところよミレイユ!」

 そう自分に言い聞かせるように呟く。

 幼い頃から憧れていた両親が出会った場所。そうしていつしか、この場所自体が私の憧れとなっていた。


 やがて見えてきたのは、金の紋章が刻まれた重厚な門。

 守衛がちらりとこちらを見て、丁寧に会釈をする。


 ついに私もこの学園の一員になれるんだ。


 その大きな門構えに圧倒されながらも、新しい一歩を踏み出した。


  


 門をくぐるとそこにあったのは、大きな庭園と豪奢な作りの建物。

 庭園には薔薇が咲き誇っており、手入れの行き届いたこの庭園を維持するだけでどれほどの労力がかかっているのだろうと思わず息を呑む。

 校舎は見事な装飾によって、もはや一つの城と言って差し支えない。

 『王宮魔導院』

 フェリシア学園がそう呼ばれているのも納得だ。

 国の息が直接かかった学園なのだからさぞかし美しいとは分かっていたはずだが、それでも実物を目の前にするとその迫力に圧倒されてしまう。


 「美しいわね…」

 「私本当にここ入学できてよかった!」


 そう話すどこかの貴族の令嬢たちを盗み見る。

 見目美しい彼女たちでも憧れるこの学園だ。全ての乙女の夢と言っても過言ではないだろう。

 いつかここで私も、素敵な旦那様とー…なんて、


 「ミレイユ?」


 「え?」


 突然誰かに話しかけられて戸惑う。

 振り返ると太陽に照らされた薔薇のように美しい赤髪の青年が立っていた。

 瞳は光を吸い込んだような琥珀色で、見つめると惹き寄せられてしまいそうになる。

 その表情は何年も会っていない親しい人を見つけた時のようで、思わず焦りの感情が芽生える。

 「えっと…」

 どこかでお会いしたことのある方だろうか。

 幼い頃からどこかの貴族様と交流することは少なかったし、なによりこんなに美しいお人を忘れてしまうなんて、私ってばそんなことある!?


 戸惑っている私と対象に、周囲がザワつき始める。


 「えっ…?あれって五大貴族のロザリア家のカイル様じゃない!?」


 ロザリア家!?ロザリア家って、あの、五大貴族第三席の、あの有名な!?


 「し、失礼いたしました!カイル様、お初にお目にかかります、サンベルジュ家長女のミレイユと申します。」

 慌てて頭を下げ、礼をする。学園に入っていきなりこんな有名な方とお会いするなんて想像もしていなかったから、心臓が痛い…

 私、合ってる?何か無礼なことしてないかしら。呼びかけられて、挨拶をして…


 「…え?私の…」


 「サンベルジュ嬢、だね。お目にかかれて嬉しいよ。

 …後姿が綺麗でつい声をかけてしまったんだ。名前で呼んでもいいかな?」


 「も、もちろんです!」


 聞いたことがある。ロザリア家のご子息であるカイル様は、女性との交流が多く、悪く言えば女遊びの激しい社交界のプレイボーイだって…

 いい意味でも悪い意味でも目立つカイル様の目に留まるなんて…どうしよう、心の準備ができてない。

 それに…


 聞き間違いでなければ、自己紹介をする前に私の名を呼ばれた気がする。


 「あ…あの…なぜ私の名をご存じだったのですか?」


 「…え?」


 「……何?知り合い?あの方も有名な方とか?」


 そこで周囲のギャラリーが異常に集まっていることに気付く。

 社交界に慣れた都会の貴族達が、見たこともない小娘をあれだこれだと審査している。

 ここで目に留まるのはまずい。ただの地方伯爵の娘が、勘違いして五大貴族のご子息に馴れ馴れしくしていた、なんて噂が立つと家にまで迷惑がかかる。

 

 「すみません!私の勘違いでございます。お声がけいただき光栄です。カイル様と同じ学園で学びを得られることを楽しみにしております。」


 つかの間の沈黙が流れる。

 

 「失礼いたします!」


 そう言って足早にギャラリーの間をすり抜けた。

 優雅に歩く生徒たちを置き去るように、この豪奢な玄関を走り抜ける。

 どうしよう、五大貴族のお方を相手に逃げ出すように去るなんて、無礼にもほどがある。


 ……決して、かっこよかった、なんて余韻に浸っている場合ではないのだ。


 早く、私の鼓動収まって。

 ___波乱万丈の学園生活が、幕を開けた。

 

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