エピソード1 僕と君の形 ①
ふと、仕事終わりにスマホの画面を見たら妻からメッセージが入ってた。
< お仕事お疲れ様。
ティーはケンケンの帰りを待ってます
なんだか肩凝ってて痛いから、
帰ったらマッサージして欲しいな。>
[大丈夫?
後でマッサージしてあげるから良い子に待っててね。]
って、返事を返した。
このやり取りで感じたとは思うが、俺、山石 健吾42歳と妻、山石 真理36歳は他者共に認める仲良し夫婦である。
2005年に交際スタートして、約13年の時を得て結婚し、現在2024年、結婚6年目になる夫婦だ。
妻の真理は結構わがままだったり、凄い頑固な部分もあるんだけど、凄い優しくて、声も可愛く、いつも明るい。
そして、基本的には決して弱音を吐かない強さを持っている割には物腰も柔らかく、僕には勿体ないくらい美人で、性別問わず人から慕われるタイプだった。
控え目に言って大好きだ。
そして当の自分はと言うと、人生何やっても中途半端で、10代の頃は俗に言うヤンキー。
その後、兄の影響でバンドと出会い、高校生の頃からオリジナル楽曲を作り、ライブハウスで夢を抱いて演奏を披露してきた。
二十歳そこそこの頃に、憧れのアーティストの影響等から左の肩から腕に掛けて、赤と青の2匹のバタフライのタトゥーと、右足首にツタを巻き付けた様なタトゥーを入れた。
そんな感じで後先なんて基本深く考えず生きて来た。
でも、タトゥーって一生物だし、後悔したくないがモットーな俺は、相場よりも高かろうが何だろうが妥協せずに彫師を探し、自分の理想のタトゥーを入れて貰った。
そういう時だけは無駄に慎重で几帳面な一面もある。
だからタトゥーを入れて正直不便な部分も確かにあったけど、一度だって後悔した事はなかった。
そんな俺が23歳の時、夜に働いてたバイト先のお好み焼き屋で真理とは出会ったんだ。
真理は本当は当時17歳の高校2年生のjkってやつだったんだけど、お金稼ぎたかったらしく、個人店で小じんまりした店なのをいい事に、履歴書を偽り19歳と言う設定で入って来た。
真理は女性にしては身長も162センチと割と背が高く、大人っぽい雰囲気があったので店長が見抜けなかったのも頷ける。
実際、俺も仲良くなって本当の年齢を聞くまでは疑いもせず接していた。
そんな僕等が交際を始める事になるきっかけは、よく仕事を真理に教える機会が多く、気が合った真理とはとても話しやすくて、仕事を教えながら、店長の目を盗み、無駄話をするのがお互い楽しくて惹かれ合ったんだと思う。
時期も夏で花火大会のシーズンと言うのもあり、真理は車出せる僕に
「花火見に行きたいです!」
と、言ってきた。
だから、俺が
「じゃー、連れてってやろうか?」
と、言うと、嬉しそうに
「はいっ!」
と、頷いた。
でも、さすがにいきなり2人で行くのとか抵抗があった俺は、
「俺、友達誘うから、山石さんも誰か友達連れて来なよ。」
って、言った。
それで結局、その花火大会には男女2対2で行った。
真理は後輩を名乗る純子ちゃんと言う子を連れてきた。
実はこの純子ちゃん、真理の同級生だったんだけど、普通に先輩のはずの真理に対して遠慮のないタメ語だし、少し二人の関係が気にはなったけど、そん時は疑う事もしなかった。
何より純子ちゃんもびっくりするくらい俺のタイプの顔で、こんは可愛い子達2人と花火見に行くとか、誘った友達にもドヤ顔できるし、テンション爆上がりだった。
心の中で
"山石さんナイス!"
と、ガッツポーズして浮かれていたくらいだ。
花火大会が始まると俺は純子ちゃんと仲良くなりたくて、純子ちゃん狙いでマシンガントークを開始した。
直ぐに会話が弾むくらいには純子ちゃんとは話せるようになったのだが、何やら純子ちゃんには彼氏がいるらしく、下手な揉め事を嫌う俺は、連絡先を交換する事もなくその場の空気だけを楽しむ事にした。
そいで真理は俺の親友のノブ(加藤 伸明)と楽しそうに話してはいたが、一瞬俺と目が合った時、不満そうに睨まれたのを今でも覚えてる。
そん時は意味が解らず、"何だコイツ?"と思ってはいたが、謙虚な俺でも"これは俺に気があるのか?"と気づき始めた出来事があった。
俺が前に熊が好きだと言う話をしたのと、ガンダムが好きだと言う話をしたのを覚えていたらしく、熊とガンダムを合体させた手の平にちょうど乗るくらいのサイズのフィギュアを
「これどうぞ!!」
って、言いながら渡してきたんだ。
俺は
「なんだコレ!?すげぇ可愛いじゃん!」
とか言って素直に喜んで受け取った。
真理はバイクに興味があると話してたのを覚えてた俺は、メインの足に使ってた愛車、あの木村拓哉様が有名なドラマで乗っていたのに憧れて買ったTW225を乗っていたので、
「お礼にこの後バイト終わったら、バイクでドライブ連れてってやろうか?」
って、誘ったんだ。
そしたら二つ返事で真理は
「はいっ!」
って、嬉しそうに頷いた。
俺は正直この時に確信したんだ。
真理は後にすっとボケてはいたが、俺に惚れていると⋯。
その後、予定通りバイトが深夜に終わった後、真理と俺は埼玉を流れる荒川沿いの土手まで風を切って走った後に、近くの公園でベンチに腰を下ろし話をした。
その時、真理に相談されたのが
「同い年の男に付き纏われてて怖い。」
って、言ってきた。
何やら、呼び出されて告白された際に、その場で丁重にお断りをしたら襲われそうになったらしく、何とか振り払って逃げたけどとても怖かったと言っていた。
その後も電話やメールがしつこく、無視をしているらしいが、いい加減うんざりしていると真理はだいぶ悩んでるみたいだった。
それを聞いた俺は、そんなクソ野郎から素直に何とかしてやりたいと思い、こんな提案をした。
「俺が彼氏のフリして、そいつに直接文句言ってやるよ。」
と。
そしたら真理は目を輝かせながら
「ホントですか!?良いんですか!?」
って、言ってきたから、
「全然いいよ!2度とそのガキが山石さんに近付きたくなくなるくらいにはビビらせてやるからさ。」
って、言ってやった。
そしたら、真理が俯きながら嬉しそうに笑ったのが見えて、それが何だかとても可愛く、愛おしく思えちゃった俺は、なんだか雰囲気も相まって、とてつもなく真理とキスをしてみたくなってしまったのだ。
そこで、いきなり雰囲気に任せ、くさいキスをしてしまう度胸がなかった俺は、バカな提案をした。
「よし!!彼氏を演じるにはその気になる気持ちが大事だから、1回キスして気持ちを高めよう!!」
と。
我ながら今思うと見事に頭のおかしい、下心丸出しの提案だったと思う。
だけど真理は一瞬とまどってたけど、
「はいっ!」
って言って、俺の目を見つめてきたもんだから、俺は欲望に逆らえずそのままキスしてやった。
言うまでもなく、一度と言わず何度もそこで真理とキスを繰り返した。
その直後、今まで歳も6つも離れてるし、恋愛対象として見てなかったんだけど、急になんだか無性に真里に対する気持ちが溢れてきてしまい、思わず俺は
「やっぱり、本当に付き合っちゃおっか?」
って、言葉が自然と零れてた。
真理は
「うんっ!」
って、頷いて笑ってた。
そして、そのまま俺の自宅に連れ帰り、熱い夜を過ごした事は言うまでもないだろう。
そして、俺と真理の交際がスタートしたんだ。




