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プロローグ

辺りの暗さをかき消す様な豪風の中、禍々しい存在感を放つ魔王城と呼ばれる城、それを背に立ち塞がるのは真っ黒のマントを着た男、彼は深くまで被ったフードを外し佇んでいた。

あまりの風の強さに上手く目が開けられず両腕で風を防ぎ何とか隙間から彼の姿を薄目で見つめる。マントの男は腰にあった剣を抜き今、まさにこちらに切りかかろうとしている。ふらりと彼の身体が動いた次の瞬間、彼は僕のすぐ目の前に来ていた慌てて防御壁を張り彼の顔を見た瞬間、酷く動揺した。


「そんな、君は!」


こちらの動揺などお構いなしに力を緩めることなくギリギリと音を立てながら彼との間にある壁を壊そうとしている。


「くっ!…ねぇ、僕の事が分からないの!?」


必死に彼の名を呼ぶ、けれど彼は止まらない。かつて僕に向けられていた唯一の瞳は、今は僕を見てすらいない。君まで僕をそんな風に見ないで、居ないみたいに扱わないで。彼の黒く光の無い瞳と視線を合わせるように彼の顔を見上げたけれどそれに彼は気が付かない。それでも彼の名を呼び僕に意識を向けさせようとした


その時、僕を支えてくれる人が彼を思いきり蹴り飛ばした。吹っ飛んで行った彼の方を見たが、瓦礫が崩れ落ちる中彼は何でもないように立ち上がり口に溜まったのか血を吐き出し眉を寄せながらこちらを睨んでいた。


その瞳はあの頃のようで少しだけ冷静さを取り戻した僕は今度は拘束魔術で地面から伸ばした鎖で彼を絡め止めた。抵抗をして力ずくで鎖から逃れようとする彼を更に強く縛ったけれど彼はそれでも動きを止めない。こちらを睨みながら魔術攻撃を打ってくるので僕はそれを防御壁で防ぎ、いくつもの攻撃を僕の仲間達が防いでくれる。警戒しながら彼に近づいていく、更に激しくなる抵抗は彼のすぐ前まで行ったその時、ついに鎖を断たれ彼は僕の首を片手で掴みあげもう片方の手で僕に剣を向けた。


「主がお呼びだ、お前には俺と共に来てもらう」


先程まで口を聞かなかった彼がやっと口を開いた、会話ができるのだと何とか声を出そうとしたその時、彼の左耳に光る黒いオニキスのピアスが目に入り藻掻く力が僅かに抜けてしまった。

あぁ、懐かしい彼の声だ声変りして少し低くなったあの頃の彼の声。


ずっと、ずっと探してた。あの頃の僕の全て…


「キョ…ウヤ…」


彼の腕がピクリと動く動揺したように僅かに弛んだ隙に彼の腕から逃れた。彼から少し距離をとり僕達は見詰めあった。彼は突然、頭を抑えだしまるで苦しむ様に呻き声を上げ僕の名を呼んだ。


「…つっ、レ、オナ?」


再び上げた顔には困惑と忌まわしいとでも言うような表情、そしてあの冷たい目。あぁ、間違いない。彼だ

戸惑うように伸ばされた手に応えるように僕も彼に手を伸ばす。離れていてその手が届く事は無いけれど、それでも彼に応えたかった。


「おい、敵の前だぞ…知り合いだろうと今のお前がやるべき事はそれじゃないだろう」


伸ばした手をとり抱き込むように後ろへと引かれる

後ろを振り返るとそこには僕を支えてくれる人が立っていた。意思が強く凛々しいその赤い瞳は僕を見下ろしその背に隠すように僕を下がらせた。


「そこを退いてもらおうか」


彼の身から出る黒いモヤの様なものは彼の闇魔術だ。

彼は国で一番の魔力量を有していて魔族に劣らないその闇魔術は強力なもので彼にはこちらに来てからも、旅の中でも沢山、助けられた。彼は今の僕の支え、この世界の僕の居場所をくれた人。目の前の頼もしく何度も見た広い背中と、美しく神々しい金の髪はいつだって僕を安心させてくれる。


あちらの世界での僕の支えだった人と、今の僕を支えてくれる人が戦っている。複雑な感情のままにキョウヤへと向かい光の矢を放ち攻撃する。



世界は残酷だ、いつの時代も、どの世界でも必ず争いは生まれる。本来であれば僕は、僕達はこんな戦いなど無縁の所で生活していたというのに。


そう、あの日。僕が間違いで召喚などされなければこんな事にはなら無かったと言うのに……








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