表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

クソゲーで気まずい

所詮他人だよりのクソゲー。もはや自分達でバグの早期発見すらしないのか。

今の俺にとって割と有り難いバグだが、ランダムスポーンの選択がリスポーン地点の設定にもなるとは誰も思わないだろう。


「さっきの場所まで行くのだるすぎね?」


コボルトを狩りながら移動したので正確な移動時間は分からないが、チョッパーコボルトの居場所まで2時間程かかる。

やることは他にない。

一本道の坑道に、俺は水に流されるように歩き出した。

移動速度が遅いのはステータスのせいじゃない。たぶん、面倒くさいからだ。


歩き続けて、チョッパーコボルトの居場所の前まで来れた。

2時間近くかかると思っていたのだが、30分もかからなかった。

戦闘に時間をかけたつもりはないが、それだけ戦闘は楽しんでできているということだろう。


「オラァ!貴様!絶対ぶっ殺してやる!」


可愛い声で発せられる言葉は、スケバンそのもの。








チョッパーコボルトは想像以上の強敵で、16回目の挑戦となる。


「そろそろ死んでくれ!トリガーハッピー!」


今回は今までにない手応えを感じていて、今までで1番長く生き残れている。

実際HPバーも残り2割程で、数十発で倒せるだろう。


「ぐぁぁああ!」


モーセの海割りのような一撃で、地面が割られる。

この瞬間足を地面に着けていると、揺れでバランスを崩しそうになるので、空中にいるようにしている。


「もうその攻撃見切れるぞ!オラァ!」


回転しながら振り払うように斧を振る攻撃は、距離を取らずとも、柵を越えるくらいの気持ちで避けれるようになった。


「スタンバレット!」


痺れるようなエフェクトと共に動きを止めたチョッパーコボルトを、鬼の連射で射撃する。

当然、胴体よりも頭の方がクリティカル率も高く、クリティカル表示が重なって見える。


「ぐがぁぁああ!!」


やがてHPは尽きて、赤いポリゴンとなって消滅した。


「よっほっほほ!しゃー!倒したぞ!戦利品はと……」


『ラピスアックス』と『チョッパーの仮面』のドロップアイテムを残していった。

ラピスアックスの性能は、敵にダメージを与える度にSPを回復するというもの。チョッパーの仮面は被ダメージ10%減以外に特殊効果はないらしい。


「この仮面ネタ要素なんか?」


戦利品の性能を確認していると、『CONGRATULATIONS』の文字が浮かび上がり、金の模様が施された扉が現れた。

帰り道が見当たらなかったので、ボス攻略後に脱出扉が出現するという仕様なのだろう。


扉を抜けると、光が視界を奪い、気付くと目の前には町の入口に立っていた。町の名前はNORCITY。


「うひょー!すげー!こんなん異世界ファンタジーものの漫画やアニメでしか見たことないぞ!」


まるでおとぎの国のような、中世ヨーロッパ風の町並が広がっていた。

これを見て興奮を抑えられる者がいるのだろうか……いや、いないだろう。


町の観光を堪能しながら、道に沿って歩くと、開拓者ギルドという建物を発見した。

一般的なファンタジー知識から察するに、この中ではクエストの受注ができるのだろう。


「こんにちは〜!」


ギルドの受付は綺麗なお姉さんが対応してくれた。


「えーと……クエストは何がありますか?」


「はい、少々お待ちください!」


相手がNPCだと分かっているので、コミュ障は人間と話すよりかは軽減できそうだ。


「はい、こちらが現在受注可能なクエストとなっています!ちなみにあちらの掲示板でもいつでも確認できます!」


「あ、ありがとうございます!ちなみにアイテム買取はこちらでできますか?」


「大変申し訳ありません、こちらではそういうサービスはございませんので、武器屋などに行ってみるのがよいかと」


「はい!分かりました!」


武器屋を探し回ったが見当たらず、迷子になった。


「俺ってこんなに方向音痴だったのかよ……」


めっちゃ可愛い、3人組の女の子を発見した。髪色は順に、ピンク、水色、金髪。

俺が今日学校で見かけた3人組と激似。初期設定で顔は変えられるので、たぶん本人ではないと思うのだが、それでも好きな子の顔で歩き回られると気になって仕方ない。


「あー!めっちゃ可愛い子いる!」


ピンク髪の少女がこちらに指を差してくる。

俺ではないと信じたくて、後ろを振り向いてみたが、誰もいない。

容赦なくこちらに近づいてくる3人は俺を女の子と勘違いしているようだ。


「ねえねえ君君!名前は……セリオナちゃん!」


「ひゃい!」


「可愛い〜!」


好きな子の顔面が目の前にあり、本人ではないと分かっていても緊張してしまう。

プレイヤーネームはモモ。


「モモ、その人困っていますよ?」


青髪の女の子が言った。プレイヤーネームミク。


「あ〜確かに。でも迷子そうだったし!」


「迷子?コイツが?なんか可愛いアバター使ってるだけのオッサンかもしれないぞ?」


金髪女子が言った。プレイヤーネームカルマ。


俺はこの3人の口調で学校の3人組だと確信した。モモちゃん、ミクさん、あと……誰だっけ。


オッサンではないが、中身は男であることは合っている。当然の思考回路である。

さて、問題となるのが、『俺』が女性アバターを使っているということ。

そのまま自己申告した方がいいのだが、「え、男なのに女アバター使ってるとかキモくね……」と思われるかもしれないという懸念がある。

そして、学校ではみんなから罵倒される未来が待っているかもしれない。

ここは女になり切るしかない!


「え、えーと……俺は……」


「俺?」


あ、詰んだ。

読んで頂きありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ