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アバウト・ザ・大富豪 ~貧乏男、金が全ての世界に転移しました~  作者: 生姜十兵衛
第1章 大富豪の屋敷
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6.ビスケットよりも頼れるケモミミが欲しい

今回も未熟な文章ですが、読んでいただけると嬉しいです。

 数分前と比べて多少明るくなった檻の中で、サチは無心でビスケットをかじっていた。


(土に還るか、乗っ取られるかなんて…どっちみち俺死ぬじゃねえか)


そこに予想外の来客が訪れる。


「ああ、良かった。ちゃんと檻に入れられているみたいだね! ところで、さっき庭で死んでたホトトギスみたいな顔してるけど、大丈夫かにゃ?」


「お前は確か…」


そこには今朝、馬車を襲っていたところを腹パンしてきた猫耳の女警察もどきがいた。鍵は持っていないらしいので、会話は鉄格子越しである。


「君まで忘れちゃったの? ぼくはアデラ。この町のー」

「性癖隊隊長だろ」

「けっ、警笛隊隊長だよ! なんて言い間違いしてるのさ!」


現実逃避中のサチが口にしたたちの悪い冗談に、アデラは顔を真っ赤にして尻尾を逆立たせた。


「悪い悪い。で、何の用だよ? 今、ラブカ様とやらに驚愕の事実を聞かされて気分が悪いんだ」

「…どんな事実かは知らにゃいけど、君の気分なんてどうでも良いね」


アデラはつっけんどんにそう言うと、一息置いてから神妙な面持ちで口を開いた。


「そんにゃことはさておき、今ぼくは君に良い知らせと悪い知らせを持ってきたんだ」


「じゃあ良い知らせから」

「それは今朝君が起こした問題について」

「問題? 馬車に積んであった麻袋に穴開けたことか」

「重要なのはそこじゃにゃい。君は御者のおじさんに怪我を負わせたでしょ?」

「そうだったな。ちゃんと反省してるよ」

「信用ならにゃいなあ…でも、残念なことに君は犯罪者じゃなくにゃったんだ」

「え、なんで?」

「条例で決まっているんだ。犯罪者に対して犯罪行為をした場合、そのバカタレは罪を逃れられるってね」

「てことは、あの爺さんは犯罪者だったんだな」

「そういうこと。彼は町で指名手配になっていた強盗犯だったんだ。結局、あの後ぼくの仲間たちが逮捕したけどね」


「じゃあ次に悪い知らせは?」

「悪い知らせは、多分()()()()()()()()()()()()()()()ってこと」

「は?」


サチは(つま)んでいたビスケットを床に落とした。


「ごめん、なんて?」

「デライラ伯爵夫人が戻ってくるのは、早くても2週間後。昨日の新聞で東国に行ったとあったからね。恐らくだけど、彼女はその間に君を消す」

「お前ただの自警団だろ? なんでそんなことが分かるんだよ。野生の感か」

「感にゃんか無くてたって誰だって分かるさ。この檻はいつも、ラブカ様が邪神の疫に侵された動物を殺している場所だもん」


数秒の沈黙が流れる。サチは頭の整理が追いつかなかった。


「驚いた。君はあの人のことを何も知らにゃいんだね。ラブカ=エヴァレット、彼女の一族は邪神の手によって一度滅びかけてる」

「まじかよ…」


青ざめるサチとは裏腹に、アデラは得意げに笑って見せた。


「とーころがどっこい!!」


「今からぼくの言うことを忠実に聞けば、君はこの絶望的状況から抜け出すことが出来るのだ〜!」

「マジで⁈」

「マジも大マジ。大マグロだよ!」

「うおおおお! やっぱり持つべきものは頼りになる猫耳だなあ」

「にゃはははは、褒めてもマタタビ(しゅ)ぐらいしか出ないにゃあ!」


   ◇


「それで、俺は何をすれば良い?」

「切り替えが早くてとっても助かるよ。鍵をとってきて欲しいんだ。ある物を開けるためのね。この地図が見えるかい?」


アデラはサチに古びた間取り図のようなものを取り出して見せた。そして左下の小さな空間に指をさす。


「この部屋は別館の地下3階にあるところでね、今いるここからそんにゃに遠くにゃいよ。でも少し道が複雑でさ。ぼくが君を別館の1階まで送るから、そこから昇降装置で下に降りて鍵を取ってくるんだ」

「分かった。けど、まずはこの檻から出なくちゃな。あんた、開けられるか」

「ぼくにはできにゃい。でも、君ならどうだろうね」

「は?」


そう言うとアデラは手品のように数枚の金貨を片手に乗せた。


「うっ」


サチは咄嗟に自分の口を抑える。視界がぼやけ、脳に地響きのような振動が走る。


『欲せよ欲せよ欲せよ欲せよ...』


(まずい、またあの声だ)


「ほし、い、その金貨、欲しい」

「取れたらあげるよ。そのためには檻をぶち破らにゃいとね」

「あああああああクソッ」


サチは覚悟を決めて目を瞑った。彼ががなり声にも似た叫びを上げるとほぼ同時の瞬間に、鼓膜を破らんばかりの衝撃音が響き渡った。


「わーお」

「嘘だろ...」


サチが恐る恐る目を開けると、檻にはあっけなく大穴が開いていた。


「君、凄いじゃにゃいか! てっきり全然動けない運動音痴だと思ってたのに」

「まあ、工事現場で週6で働いてたしな。うん」

「感激したよ、これならこのあともきっと楽勝だね。さあ、行こう」


嬉しそうに手を差し伸べるアデラの表情は、どこか金貨のようにギラギラとした輝きを宿していた。


今回もここまで読んでくださり本当にありがとうございます。次回も明日の20時40分頃に投稿予定なので、また6文字だけでも読んでいただけると幸いです。

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