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ーーどうなっているの…
あれから2週間たったが、誰に聞いても幼馴染2人の存在は無いものとして日常が流れていた。学校のクラスメートも先生も、私の親も知らないと言う。
試しに2人が通っていた塾にも問い合わせてみたが、そんな生徒は居ないとの返答だった。
家にも行ってみた。表札はちゃんと2人の苗字が掛かっていた。だがインターホンを押す前に怖くなって結局確認できなかった。だって前はあった自転車が無くなっていたから…。
さくらは自分の部屋で勉強していたが、最近はそれどころじゃなく全く手につかなかった。
「ピィ!」
鳥籠の中のピイちゃんが元気づけるように鳴いた。
「ピイちゃん…あの2人どこいったか知ってる?それとも私が1人で妄想してただけなのかな。こんな幼馴染がいればいいなって…私の頭が勝手に作り出した空想の人物だった…?」
ーーダメだ。頭がおかしくなりそう。いや本当は以前までがおかしくて、今やっと正常になったのだろうか。
ぐるぐると考えても答えは出ずにさくらは勉強机に突っ伏した。
その日は早めに寝ることにした。明日は土曜日で休みだ。一旦しっかり休めば身体も心も回復する。それからもう一度考えよう。そう思って眠りについた。
❄︎❄︎❄︎
その日見た夢に、君華と拓也が出てきた。小学生の頃の2人だ。自分も幼い姿に戻っている。
「さくら!」
「大丈夫か?」
2人が心配そうに私に近づく。どうやら遊んでいる時に私が転けたようだ。
ーーそういえば本当にこういうことあったな。これは夢…記憶?
ボヤッとした夢ならではの思考力で今の自分の状況を把握しようとしてみる。
「血が出てるね、あっちで洗おう!」
「意外と鈍臭いよな、お前って。」
ーー何よ、どうせ運動神経いい人には鈍い人の気持ちなんて分からないわよ
「もー怪我した人にそんな風に言わないの!」
ーー君華…優しい。ずっと優しかったな。そんなとこが大好きだった。拓也もなんやかんや心配してくれてさ。イケメンなんだからそんか顔近づけないでよ。だから好きになっちゃったんだから。距離感気をつけてよね。アンタはもう君華という彼女がいるんだから、思わせぶりしないで…
❄︎❄︎❄︎
よく分からないグダグダのまま夢から覚めた。
まったくスッキリしない。
さくらはむくりとベッドから起き上がると、自分の頬に涙が伝うのを感じた。
ーー2人ともちゃんと存在してた。存在してたのよっ!!
「ピィ!」
「え!」
まるで私の心の呟きに、そうだよ!と返すようにピイちゃんが返事してくれた。
「ピイちゃん…そうよ…桜の木…
桜の木にもう一度願えば…でもダメだったら…」
「ピィピィ!!」
「…一緒に来てくれるの?」
なんだか連れて行けと言っているような気がして、さくらはピイちゃんを連れて学校の裏庭に向かうことにした。