表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/150

第61話 魔導王を探して

 アランシア王国の城下町に入った瞬間(しゅんかん)(わたし)たちを歓迎(かんげい)する人々の歓声(かんせい)が耳を(つらぬ)いた。

 石畳(いしだたみ)()む足音も、その歓声(かんせい)にかき消されてしまいそうだ。


「聖女様、お帰りなさい!」

「シャルさん、ありがとう!」

「戦争を終わらせたって聞いたぞ! 本当にありがとう!」


 人々の熱気と興奮が、空気を(ふる)わせているようだった。


 シャルは満面の()みで手を()り、(わたし)はというと……ただひたすら顔を()せて歩くだけだった。

 注目を浴びるのはやっぱり苦手だ。周囲から(ただよ)う興奮の気配が鼻をつく。


「ミュウちゃん、もっと胸を張って歩こうよ! みんな喜んでくれてるんだから!」


 そう言いながら、シャルが(わたし)の背中をポンポンと(たた)く。

 その衝撃(しょうげき)で、思わずよろめいてしまった。彼女(かのじょ)の手の(ぬく)もりが、(うす)い服地を通して伝わってくる。


(そんなの無理だよ~……こんなに人がいたらMPがみるみる減ってく……)


 脱力感(だつりょくかん)(さいな)まれつつ何とか城にたどり着くと、ルシアン王が(わたし)たちを出迎(でむか)えてくれた。

 城の石壁(いしかべ)から(ただよ)(すず)しげな空気がほっとする。


「やあミュウ、シャル。予だけ先に帰っててすまないな。先にいろいろとやっておくことがあったものでね」


 王は(やさ)しく微笑(ほほえ)みながら、(わたし)たちに近づいてきた。

 (かれ)(まと)う高級そうなな香水(こうすい)(かお)りが、かすかに鼻をくすぐる。


「別にいいよ! あたし(たち)もゆっくり帰ってこれて楽だったし。えーっと、一応報告とかしとく?」


 シャルが元気よくこれまでの戦いの報告を始める。

 (わたし)はただ(だま)って(うなず)くだけだ。シャルの声が広間に(ひび)(わた)り、その反響(はんきょう)音が耳に心地(ここち)よい。


 シャルの説明を聞いていたルシアン王は、深く(うなず)いた。

 (かれ)の表情には、疲労(ひろう)安堵(あんど)が混じっているように見える。


「本当によくやってくれた。おかげで、()(くに)とグレイシャル帝国(ていこく)の関係も改善されつつある。戦争の不景気も()()ばせるだろう」


 王はそう言うと、にやりと笑顔(えがお)を見せた。その笑顔(えがお)に、少し緊張(きんちょう)(やわ)らぐのを感じる。


「さて、二人(ふたり)とも相当(つか)れているだろう? 休暇(きゅうか)を取ってゆっくりしてくれ。

 王城近くの高級宿『銀の月』を2週間分予約しておいた」

「えっ、マジで!? ありがと~!」


 シャルが飛び上がって喜ぶ。その声が天井(てんじょう)まで届きそうなほど大きい。

 (わたし)も内心(うれ)しかったが、表情には出さない。というか、出すのが苦手なだけだけど……。


「ミュウちゃん、聞いた!? 高級宿だって!」


 シャルが(わたし)(うで)(つか)んで()さぶる。

 その勢いで、(わたし)の体が左右に()れる。シャルの興奮が伝染(でんせん)してくるようだ。


「……う、うん」


 小さく(うなず)くと、シャルはますます興奮した様子で(わたし)(うで)を引っ張り始めた。


「ルシアン王、じゃあね! さっそく行ってくるー!」


 王に軽く会釈(えしゃく)をすると、シャルは(わたし)を引っ張るようにして城を後にした。

 城を出る時、冷たい石の感触(かんしょく)靴底(くつぞこ)を通して伝わってくるようだった。


 『銀の月』は、その名の通り銀色に(かがや)く外観が特徴的(とくちょうてき)な宿だった。

 夕暮れの光を受けて、建物全体が(あわ)(かがや)いているように見える。


 部屋(へや)の中に入ると、高級な調度品が並び、空気まで上品に感じる。

 ラベンダーの(かお)りが、どこからともなく(ただよ)ってくる。


「わぁ~、すっごい豪華(ごうか)!」


 シャルは目を(かがや)かせながら、あちこち走り回っている。

 その足音も、絨毯(じゅうたん)()()まれて静かだ。その姿を見ていると、人前を歩いた(つか)れが少し(やわ)らぐ気がした。


 部屋(へや)に案内されると、そこにはキングサイズのベッドが一つ。

 広々としたリビングルームと、バルコニーまであった。

 窓から()()む夕日の光が、部屋(へや)全体を(やわ)らかなオレンジ色に染めている。


「ねぇねぇミュウちゃん、お風呂(ふろ)入ろうよ!」


 シャルが突然(とつぜん)言い出した。確かに、長旅の(つか)れを(いや)すにはお風呂(ふろ)が一番かも。

 グレイシャルは寒かったし、しばらく体を温めたい気分だ。


 小さく(うなず)くと、シャルは(うれ)しそうに浴室へ向かった。


 各部屋(へや)に配置されたと思われる浴室は予想以上に広く、十人は入れそうな大きな湯船に、(すで)にお湯が張られていた。

 湯気が()()め、よくわからないけど薔薇(ばら)っぽいハーブの良い(かお)りが(ただよ)う。水面には温かな水が注がれ、水の音が静かに(ひび)いている。


「わぁ~、気持ち良さそう!」


 それを見たシャルは躊躇(ためら)いなく服を()(はじ)めた。

 その豊満な体が徐々(じょじょ)(あら)わになっていき、思わず目をそらしてしまう。

 服が(ゆか)に落ちる音が、(みょう)に大きく聞こえる。


「ほら、ミュウちゃんも早く()いで!」


 言われるがまま、おずおずと服を()ぐ。

 シャルの体と比べると、(わたし)の体はまだまだ子供っぽく感じる。(はだ)()れる空気が少し冷たく湿(しめ)っていた。


 足先からゆっくりと湯船に()かると、温かいお湯が体を(つつ)()んだ。

 (つか)れが()けていくようだ。お湯の熱さで、(はだ)が少しピリピリする。


「あ~、気持ちいい~」


 シャルが大きな声で言う。その声が天井(てんじょう)の高い浴室に(ひび)(わた)る。水面に小さな波紋(はもん)が広がっていく。


「ね、ミュウちゃんも気持ちいいでしょ?」


 波を起こしながらシャルが(わたし)(となり)に寄ってきた。

 その距離(きょり)の近さに、思わずビクッと体が()ねてしまう。彼女(かのじょ)の体温が、お湯を通して伝わってくる。


「……うん」


 小さく(うなず)くと、シャルはニコッと笑った。その笑顔(えがお)が、湯気()しに(やわ)らかく見える。


「ミュウちゃん、背中流してあげようか?」

「えっ、アッ」


 断る間もなく、シャルは(わたし)の背後に回り、(やさ)しく背中を洗い始めた。

 シャルの指が背中を(すべ)感触(かんしょく)に、くすぐったさを覚える。


(う、うぅ……()ずかしい……)


 顔が()()になるのを感じる。

 でも、シャルの(やさ)しい手つきに、少しずつ緊張(きんちょう)が解けていった。

 湯船から()(のぼ)る湯気で、視界がほんのり(くも)る。


「ね、ミュウちゃん。これからどうする?」


 突然(とつぜん)、シャルが真剣(しんけん)な口調で聞いてきた。その声音(こわね)の変化に、はっとする。


「戦争も終わったし、もう一度二人(ふたり)で旅に出る?

 それとも、ノルディアスあたりに冒険者(ぼうけんしゃ)として落ち着く?」


 その質問に、(わたし)は少し(かんが)()んだ。確かに、これからのことを決めなければいけない。

 お湯の中で、つま先がふわふわと()かんでいる。


(そうだ……! マーリンのこと……)


 そのことを思い出し、(わたし)はゆっくりと口を開いた。


「……マーリンを、探したい」


 その言葉に、シャルは少し(おどろ)いた様子を見せた。彼女(かのじょ)の目が見開かれる。


「マーリン? それって……たしかミュウちゃんの師匠(ししょう)のことだよね?」


 (わたし)は小さく(うなず)いた。(うなず)いた拍子(ひょうし)に、(かみ)()から水滴(すいてき)が落ちる。


「そっか。でも、たしかその師匠(ししょう)が『魔導(まどう)王』……って人なんだっけ? ゴルドーが言ってたよね」


 そうと決まったわけじゃないけど、ほとんどそうだと見ていいだろう。

 (わたし)が使っているのは、マーリンから教わった「古代魔法(まほう)」。魔導(まどう)王が(あつか)い、失伝したという魔法(まほう)だ。


「で、その魔導(まどう)王さんは千年以上前の人間なんだったよね。それってどういうことなんだろう?」

「……」


 シャルは興味深そうに言った。(わたし)も首を(かし)げるしかない。

 千年前の人間と言われても、(わたし)は確かに(かれ)を見たし、(かれ)魔法(まほう)を教わったのだから。


「……うん! それいいね! 千年前の師匠(ししょう)を探す旅、楽しそう!」


 シャルの目が(かがや)いている。その反応に、少し安心した。湯船の中で、彼女(かのじょ)の体が小刻みに()れている。


「よーし、決まりだね! マーリンを探す旅に出よう!」


 シャルが立ち上がり、湯船から水しぶきを上げた。

 その姿を見て、思わず小さく()みがこぼれた。水滴(すいてき)が飛び散り、(わたし)の顔にもかかる。



 お風呂(ふろ)から上がり、部屋(へや)(もど)る。(やわ)らかなバスローブの感触(かんしょく)心地(ここち)よい。このまま(ねむ)れそうだった……。


「ね、せっかくだし、明日(あした)は図書館に行ってみない?

 マーリンのことも、何か情報があるかもしれないし」


 その提案に、(わたし)(うなず)いた。確かに、手がかりを探すにはいい場所だろう。

 それに図書館の本の(にお)いを想像すると、少しわくわくする。(わたし)は本が結構好きだ。


 ベッドに横たわりながら、(わたし)は考えていた。マーリンのこと、これからの旅のこと。

 不安もあるけれど、シャルと一緒(いっしょ)なら何とかなる気がする。(やわ)らかなシーツの感触(かんしょく)が体を(つつ)()む。


 そんなことを考えているうちに、(つか)れからか、(わたし)はいつの間にか(ねむ)りに落ちていった。

 かすかに聞こえるシャルの寝息(ねいき)が、子守唄(こもりうた)のように心地(ここち)よかった。



 翌朝、(わたし)たちは早々に王立図書館へと向かった。

 朝の()んだ空気が(はだ)()で、街路樹の葉が風にそよいでいる。

 鳥のさえずりが耳に心地(ここち)よく、朝露(あさつゆ)(かお)りが鼻をくすぐる。


 図書館は巨大(きょだい)な石造りの建物で、その威厳(いげん)ある姿に圧倒(あっとう)される。

 入り口の大きな(とびら)を開けると、重厚(じゅうこう)な木の(とびら)がきしむ音と共に、古書の(かお)りが鼻をくすぐった。

 古い羊皮紙と(ほこり)の混ざった独特の(にお)いだ。


「うわぁ、すごい本の量!」


 シャルの声が図書館内に(ひび)き、周囲の人々が一斉(いっせい)にこちらを()(かえ)る。その視線が()さるように感じる。

 (あわ)てて彼女(かのじょ)の口を手で(ふさ)ぐ。シャルの(くちびる)(やわ)らかさと温かさが手のひらに伝わる。


(図書館では静かにしなきゃ……)


 シャルは申し訳なさそうに笑い、小声で「ごめんごめん」と言った。その(ささや)きが、静寂(せいじゃく)の中でも十分聞こえる。


 それから(わたし)たちは、マーリンや魔導(まどう)王に関する資料を探し始めた。

 膨大(ぼうだい)な量の本棚(ほんだな)を前に、途方(とほう)に暮れる。

 本の背表紙が整然と並ぶ様子は圧巻で、木と(かわ)(にお)いが混ざり合っている。


「ねぇミュウちゃん、どこから探せばいいと思う?」


 シャルが小声で(たず)ねる。彼女(かのじょ)の息が耳元をくすぐる。

 確かに、手当たり次第(しだい)に探すのは効率が悪い。二週間どころか一年以上かかりそうだ。


 そういえばアランシアは色んな国から魔法(まほう)を学びに来る人がいるって言ってたよね……。この本の量も(うなず)けるか。

 図書館内を見渡(みわた)すと、様々な国の衣装(いしょう)を着た人々、それにエルフや獣人(じゅうじん)が静かに本を読んでいる。


「……歴史書……かな」


 (わたし)はそう提案する。

 以前、ルシアン王は言っていた。アランシア王国の初代王は魔導(まどう)王の弟子(でし)だと言われている、と。

 であれば、アランシア王国の歴史を紐解(ひもと)けば、少しくらい魔導(まどう)王の情報も手に入るかもしれない。


 シャルとともに歴史書のコーナーに向かうと、古い革表紙(かわびょうし)の本が整然と並んでいる。

 その一つ一つに、長い年月の重みを感じる。指で本の背表紙をなぞると、ざらついた感触(かんしょく)が伝わってくる。


 しばらく探していると、シャルが一冊の本を見つけた。


「ねぇ、これ見て! 『アランシア王国建国史』だって」


 (わたし)たちはその本を手に取り、近くの閲覧(えつらん)席に(すわ)った。椅子(いす)がきしむ音が静寂(せいじゃく)を破る。

 ページをめくると、黄ばんだ紙から古い(にお)いが(ただよ)う。指先に紙の質感が伝わる。


 本の内容を読み進めていくと、興味深い記述を見つけた。目を()らして、かすれた文字を追う。


『アランシア王国の初代王、アーサー・ソレイユは、かの伝説の魔導(まどう)王の弟子(でし)であったとも伝えられている。

 初代王は魔導(まどう)王から多くを学び、その教えを(もと)に平和で繁栄(はんえい)する国を築いたという』

「アランシアの初代王が……!? あっ、そういえばルシアンもそんなこと言ってたような!」


 シャルが興奮気味に言う。その声に、近くにいた(ほか)の利用者が顔を上げる。

 さらに読み進めると、もう一つ気になる記述があった。

 ページをめくる音が、静寂(せいじゃく)の中で(みょう)に大きく(ひび)く。


魔導(まどう)王は、アーサーと別れる際に「(きり)の谷」と呼ばれる場所に向かったという』

(きり)の谷……」


 (わたし)はその言葉を小さくつぶやいた。その(ひび)きが、何か神秘的な雰囲気(ふんいき)(かも)()す。

 シャルも真剣(しんけん)な表情でページを見つめている。彼女(かのじょ)の呼吸が、わずかに速くなったのがわかる。


「ミュウちゃん、これが手がかりになるかも。(きり)の谷を探せば、マーリンに会えるかもしれない!」


 確かにそうかもしれない。でも、その(きり)の谷っていうのがどこにあるのかもわからない。期待と不安が入り混じる。


 (わたし)たちはさらに資料を探し、(きり)の谷に関する情報を集めた。

 本を開く音、ページをめくる音が、静かに重なり合う。

 しかし、(きり)の谷の具体的な場所を示す記述は見つからなかった。


 ただ、いくつかの資料から、(きり)の谷は「東方の果て」にあるという曖昧(あいまい)な情報だけは得られた。

 少なくとも、(わたし)(たち)のいる大陸にはないみたいだ。

 地図を広げると、東方には広大な海が広がっている。


「東かー……結構遠いね」


 シャルが(つぶや)く。その声には少し落胆(らくたん)が混じっている。

 確かに、アランシア王国からはかなりの距離(きょり)がある。


 図書館で得られる情報はこれくらいだった。(わたし)たちは本を元の場所に(もど)し、外に出る。


 まぶしい陽光が目に入り、(まばた)きする。

 図書館内の静寂(せいじゃく)から一転、街の喧噪(けんそう)が耳に()()んでくる。

 人々の話し声、馬車の音、商人の()()みの声が混ざり合う。


「さて、どうする? 東に向かって旅立つ?」


 シャルの問いかけに、(わたし)は少し(かんが)()んだ。

 確かに目的地は決まったけれど、まだ準備が必要だ。風が()き、(かみ)が顔にかかる。


「……準備が、いるかも」

「そうだね。お金も必要だし、装備も整えないと」


 シャルの言葉に(うなず)く。長旅になりそうだから、しっかり準備しないと。

 彼女(かのじょ)の目には冒険(ぼうけん)への期待が(かがや)いている。


「じゃあさ、まずは近場で依頼(いらい)をこなして資金(かせ)ぎ、かつ情報収集ってのはどう?」

「……!」


 その提案はいいアイデアだと思った。(うなず)いて同意を示す。


「よし、決まりだね! でも、どの街に行く?」


 確かに、どの街に向かうかは重要だ。東への道筋にある街がいいだろう。

 街の喧噪(けんそう)を背景に、(わたし)たちは地図を広げる。風が()き、地図がはためく音がする。


 とはいえ、(わたし)はそういう地理には(うと)い。

 「東に向かって歩く」……じゃだめだよね、やっぱり。


「そうだな……ここのサンクロスとかどう?」

「サンクロス……?」

「東への交易路(こうえきろ)の起点なんだって。結構(にぎ)やかな街らしいよ!」


 シャルの説明に(わたし)(うなず)いた。たしかにそこなら、馬車とかも確保できそうだ。

 地図上でサンクロスを指差すと、そこは大きな川と交易路(こうえきろ)が交差する場所にあった。


「よーし、じゃあサンクロスに向かおう! 準備して、明日(あした)出発ってことでどう?」


 (わたし)(うなず)いた。これで当面の目標が決まった。


 マーリンを探す大きな目標と、そのための小さな目標。

 少しずつだけど、前に進んでいる気がする。胸の中に、小さな期待が芽生える。


 (わたし)たちは市場に向かい、旅の準備を始めた。

 (かん)パンや()(にく)水筒(すいとう)など、必要なものを次々と買い(そろ)えていく。


 市場は活気に(あふ)れ、様々な(にお)いが鼻をくすぐる。

 新鮮(しんせん)果物(くだもの)(あま)(かお)り、焼き立てのパンの(こう)ばしい(にお)い、香辛料(こうしんりょう)のスパイシーな(かお)りが混ざり合う。

 戦争中の(しず)んだ空気が(うそ)のようだった。明るさを()(もど)した市場に心が暖かくなる。


 準備を終え、宿に(もど)(ころ)には夕暮れだった。

 空が赤く染まり、魔法(まほう)の街灯が次々と(とも)されていく。

 街灯の様々な色の光が、石畳(いしだたみ)の上に温かな(かげ)を落とす。


「ねぇミュウちゃん、明日(あした)から新しい冒険(ぼうけん)が始まるね! 楽しみだなぁ」


 部屋(へや)(もど)ったシャルが放つその言葉に、(わたし)も少しだけ胸が高鳴るのを感じた。ゆっくりと(うなず)く。

 窓の外では、満月が(やさ)しく(かがや)いていた――。

面白い、続きが気になると思ったら、ぜひブックマーク登録、評価をお願いします!

評価は下部の星マークで行えます! ☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ