表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/150

第50話 宣戦布告

 アーケイディアの王宮。その姿を見るのは二度目だが、その美しさは変わらない。


 夜空に()かぶ光の結晶(けっしょう)のような照明が、街を(やわ)らかく照らしていた。

 時計塔(とけいとう)が空高くそびえ立ち、その先端(せんたん)には魔法(まほう)の光でできた星座が(またた)いている。


 宮殿(きゅうでん)壁面(へきめん)には複雑な魔法陣(まほうじん)が刻まれ、かすかに青白い光を放っていた。

 その光が、夜風に()れる木々の葉を(やさ)しく照らす。


「うわぁ……やっぱりすごいよね、この宮殿(きゅうでん)


 シャルが感嘆(かんたん)の声を上げる。その横で、(わたし)も小さく(うなず)いた。

 何度見ても圧巻の光景だ。風に乗って花の(かお)りが(ただよ)ってくる。


 門番たちは(わたし)たちを見るなり、目を丸くした。

 (かれ)らの甲冑(かっちゅう)が、魔法(まほう)の光に照らされてきらりと光る。


「お、お二人(ふたり)は……! 英雄(えいゆう)様ではありませんか!」

「どもー! こんな格好で悪いんだけど、ルシアン王に会えないかな?」


 シャルは(わたし)や自分の服装を見る。さすがに水は(かわ)いたが、色々とボロい服なことは確かだ。

 門番たちは(あわ)てて頭を下げた。(かれ)らの動きに合わせて、甲冑(かっちゅう)がかすかに(きし)む音がする。


「ええ、お二人(ふたり)であれば問題ありません。後ろの方々は……」

「あたし(たち)の知り合い! 一緒(いっしょ)に入れてもらえるかな?」

「ええ、構いません。どうぞ」


 (かれ)らは大きな門扉(もんぴ)を開け放った。

 重厚(じゅうこう)(とびら)(きし)む音が(ひび)き、中から温かな空気が()れ出てくる。


「いやー、あたし(たち)のこと覚えててくれてるんだ。(うれ)しいね!」


 シャルが明るく笑う。

 (わたし)が受け取った勲章(くんしょう)は、グレイシャル帝国(ていこく)没収(ぼっしゅう)されてしまったけれど、つくづく勿体(もったい)ない……。

 なんとかして取り返せないだろうか。


 そんなことを考えながら宮殿(きゅうでん)の中に入ると、(あま)(かお)りが鼻をくすぐった。

 (かべ)には美しい花々が(かざ)られ、廊下(ろうか)を歩くたびに(かお)る。百合(ゆり)の花の(かお)りだ。

 足元の絨毯(じゅうたん)が、歩くたびにふわりと(しず)む。


「おや? これはこれは! ミュウとシャルではないか!」


 若々しい声が(ひび)(わた)る。

 ()()くと、そこには金色の短髪(たんぱつ)を風になびかせた若い男性が立っていた。


 アランシア王国の王、ルシアンだ。

 (かれ)(はな)やかな衣装(いしょう)が、宮殿(きゅうでん)内の光を反射して(かがや)いている。


「ルシアン王! 久しぶり! ってほどでもないかな?」


 シャルが元気よく手を()る。

 ルシアン王は両手を広げ、(うれ)しそうに近づいてきた。(かれ)の足音が、廊下(ろうか)(かろ)やかに(ひび)く。


「おお! 予の最愛なる百合(ゆり)カップルの英雄(えいゆう)たちよ! 無事だったか!」

「カップルではないんだけど……」


 シャルが苦笑いしながら、半歩後ずさる。(わたし)も思わず身を引いた。

 相変わらずテンションが高い……。ルシアン王の香水(こうすい)(あま)(かお)りが、鼻をくすぐる。


「ふむ、まだ自覚がないと言うのか……。まぁいずれその自覚が芽生えていくさまも美しいものだからな。

 ところで、その後ろにいるのは……?」


 ルシアン王の視線が、リンダとロイドに向けられる。


「あ、紹介(しょうかい)するね。こっちがリンダで、そっちがロイドっていうの。グレイシャル帝国(ていこく)で色々あって……」


 シャルが簡単に説明すると、ルシアン王は深刻な表情になった。(かれ)眉間(みけん)にしわが寄る。


「なるほど……。(くわ)しい話は執務(しつむ)室で聞こう。(みな)、付いてきてくれ」


 王は長いマントをはためかせ、颯爽(さっそう)と歩き出した。

 (わたし)たちは(あわ)ててその後を追う。マントが風を切る音が廊下(ろうか)(ひび)く。


 執務(しつむ)室に入ると、ルシアン王は豪華(ごうか)椅子(いす)腰掛(こしか)け、(わたし)たちを(うなが)した。椅子(いす)(かわ)(きし)む音が聞こえる。


「さて、話を聞こう。グレイシャル帝国(ていこく)とやらで、一体何があった?

 実のところ予も、二人(ふたり)がグレイシャルに向かったことは知っていたのだが……」


 シャルが経緯(けいい)を説明する。(わたし)は時折(うなず)きながら、補足を入れた。

 リンダとロイドも、自分たちの知る情報を加えていく。

 暖炉(だんろ)の火が、かすかにパチパチと音を立てている。


 話を聞きながら、ルシアン王の表情が徐々(じょじょ)(くも)っていった。

 (かれ)の指が、椅子(いす)肘掛(ひじか)けを強く(にぎ)りしめる。


「……なんと(ひど)い仕打ちだ。百合(ゆり)()()くなどと……許せん!」

「そこじゃないって」

「何なのこの男?」

(リ、リンダ……! 一応王様だから……!)


 王の(いか)りの声が部屋(へや)中に(ひび)(わた)る。(かべ)(かざ)られた花々が、その声に反応して()れた。

 そのリアクションは(みな)まちまちだった。リンダは(あき)れている様子だ……。


「それはそうと、あの国おかしいんだよ。なんか聖女がどうとか言って、皇帝(こうてい)が乱心したとかで……」

「聖女、だと? ミュウのことではないのか?」


 ルシアン王が身を乗り出す。その目が真剣(しんけん)な光を帯びる。


「うん。なんか、聖女アリアっていう人が出てきて、それ以来国の様子が変わったみたいで」

「聖女アリア……。その名前には聞き覚えがあるな。だが――」


 ルシアン王は(いぶか)しげに続ける。(かれ)の声に、緊張感(きんちょうかん)(ただよ)う。


「――アリアは確か100年以上前の英雄(えいゆう)のはずだ」


 王が(まゆ)をひそめる。室内に重苦しい空気が流れる。

 (わたし)は耳を疑った。心臓の鼓動(こどう)が、一瞬(いっしゅん)速くなる。


「え……どういうこと? 100年前の人って、もう死んでるよね?」

「そうだ。聖女アリアは『(よみがえ)った聖女』なのだ」


 それらの言葉を聞いていたロイドが補足する。

 帝国(ていこく)の内部にいた(かれ)は、アリアについて一番知っているはずだ。(かれ)の声には、緊張感(きんちょうかん)(にじ)む。


「歴史上、アリアは確かに死んでいる。

 だが今のアリアは当時の記録と何も変わらぬ姿で現れ、当時の歴史を事細かに語り、そして……奇跡(きせき)を起こすのだ」

奇跡(きせき)、だと?」

「ああ。水を酒に変えたり、(あらし)を消したり……といったところだな」


 ロイドの声色(こわいろ)には懐疑(かいぎ)畏怖(いふ)が混ざっているようだった。

 自分の目で見てもなお信じきれない、といった様子だ。


「そのアリアが皇帝(こうてい)に取り入って、国をおかしくしているということか」

「ああ……。あの聖女を止めない限り、帝国(ていこく)は元に(もど)ることはあるまい」


 再び重い沈黙(ちんもく)執務(しつむ)室を支配する。

 (わたし)(つば)を飲む音がうるさく聞こえた。暖炉(だんろ)の火が、かすかにはぜる音だけが(ひび)く。


「とにかく! 予が愛する百合(ゆり)を傷つけた罪は重い。グレイシャル帝国(ていこく)め、覚えているがいい」


 ルシアン王が立ち上がり、窓の外を見つめる。

 その背中には、(いか)りと決意が(にじ)んでいた。窓から夜風が入り、カーテンがそよぐ。


「ねえ、ルシアン王」


 シャルが少し躊躇(ためら)いながら声をかける。


「なんだ?」

「あたしたち、しばらくこの国に滞在(たいざい)しててもいい? 一応、ちょっと体力を回復させたくてさ」


 ルシアン王は()(かえ)り、にっこりと笑った。その表情に、部屋(へや)の空気が少し(やわ)らぐ。


「無論だ! 二人(ふたり)はこの国の英雄(えいゆう)だからな、ここアーケイディアで存分に(いこ)うといい。予がお前たちの安全を保証しよう」


 その言葉に、(わたし)安堵(あんど)した。

 ようやく、安全な場所にたどり着いたのだと実感する。(かた)の力が()けていくのを感じる。


「ありがとう! 本当に助かるよ」


 シャルが頭を下げる。(わたし)も、小さく頭を下げた。


「気にするな。さて、予はお前たちのために最高の部屋(へや)を用意させよう。休息を取るがよい。そして……」


 ルシアン王はにやりと笑った。その笑顔(えがお)に、少し不安を覚える。


明日(あした)は、予とそなたらで楽しいお茶会をしよう! 二人(ふたり)の仲にどんな進展があったか聞かせてくれ!」

「あー……まぁ気が向いたらね」


 シャルが遠回しに断る。(わたし)も小さく首を()った。


 その後、(わたし)たちは用意された部屋(へや)へと案内された。

 豪華(ごうか)な調度品に囲まれた広い部屋(へや)(やわ)らかなベッド。温かな食事。

 部屋(へや)に入ると、(あま)い花の(かお)りが(ただよ)っていた。


 食事は、アランシア名物の魔法(まほう)香草(こうそう)を使ったシチューだった。

 (かお)(たか)い蒸気が()(のぼ)り、胃が鳴るのを感じる。

 シャルは美味(おい)しそうに頬張(ほおば)り、リンダは優雅(ゆうが)にスプーンを運ぶ。

 ロイドも少し戸惑(とまど)いながらも、食事を楽しんでいるようだった。


 久しぶりの安らぎに、(わたし)たちの体と心が(ゆる)んでいく。

 しかし、グレイシャル帝国(ていこく)での出来事が、いつも頭の片隅(かたすみ)にあった。


 あの国の人々は、今どうしているのだろう……。食事の美味(おい)しさと、心の重さが入り混じる。


 そんな思いを(かか)えながら、(わたし)たちは休息の時を過ごし始めた。

 明日(あす)への英気を養いつつ、次の行動を考えながら――。

 窓の外では、アーケイディアの夜景が静かに(かがや)いていた。



 翌朝、リンダとロイドを置いて(わたし)たちは約束通りルシアン王とのお茶会に(のぞ)んでいた。断ったはずなのに……。


 宮殿(きゅうでん)の庭園で開かれたそれは、花々の(かお)りに包まれた(おだ)やかなものだった。

 テーブルには色とりどりの菓子(かし)が並び、魔法(まほう)で温められた紅茶が湯気を立てている。

 朝の(やわ)らかな日差しが、銀のティーポットに反射して(かがや)いていた。


「さて、二人(ふたり)の仲はどうなのかね? 困難を経て通じ合ったりしたかな?」


 ルシアン王の質問に、シャルが苦笑いを()かべる。

 彼女(かのじょ)の赤い(かみ)が、朝日に照らされて燃えるように(かがや)いている。


「だから、そういう関係じゃないってば……」


 (わたし)(だま)ってティーカップを手に取る。温かな茶の(かお)りが鼻をくすぐる。

 ほんのりとしたベルガモットの(かお)りが、心を落ち着かせてくれる。


 そのとき、突然(とつぜん)(さわ)がしさが庭園に(ひび)いた。鳥たちが(おどろ)いて飛び立つ音が聞こえる。


「陛下! 緊急事態(きんきゅうじたい)です!」


 侍従長(じじゅうちょう)(あわ)てた様子で()()ってくる。

 (かれ)の足音が、石畳(いしだたみ)(たた)く。息を切らしている様子で、額には(あせ)()かんでいた。


「なんだこんな時に? 落ち着いて話せ」

「グレイシャル帝国(ていこく)からの使者が()ております。しかも、その使者が……」


 侍従長(じじゅうちょう)の言葉が途切(とぎ)れる。(かれ)の顔には、(おそ)れの色が()かんでいた。

 その表情に、周囲の空気が一気に緊張感(きんちょうかん)に包まれる。


「その使者がどうした?」

「聖女アリアと名乗る者です!」


 その言葉に、場が(こお)りついた。風が()み、鳥のさえずりも聞こえなくなったかのようだ。

 テーブルの上の紅茶の湯気さえ、一瞬(いっしゅん)止まったように見えた。


「なに!?」


 ルシアン王が立ち上がる。

 椅子(いす)(きし)む音が(ひび)く。その音が、(こお)りついた空気を切り()く。


「すぐに執務(しつむ)室に案内しろ。(みな)、付いてきてくれ」


 (わたし)たちは急いでルシアン王の後を追った。


 廊下(ろうか)()()ける足音が、宮殿(きゅうでん)中に(ひび)(わた)る。

 心臓の鼓動(こどう)が、耳の中で大きく鳴っているのを感じる。


 執務(しつむ)室に入ると、そこには一人(ひとり)の女性が(たたず)んでいた。

 長い黒髪(くろかみ)に赤い(ひとみ)を持ち、その体は宝石を()()んだドレスで包まれている。


 そんなドレスにも負けない神々しいまでの肉体と美貌(びぼう)

 そして――人間(ばな)れした雰囲気(ふんいき)部屋(へや)の空気が、彼女(かのじょ)の存在感で満たされている。


 その瞬間(しゅんかん)(わたし)の中で警報が()(ひび)いた。

 背筋が(こお)るような感覚。全身の毛が逆立つのを感じる。


(この、人……。いや……人間じゃない)


 同時に直感した。彼女(かのじょ)は人間ではない。人間という種ではない「なにか」だと。


「アランシア王国の皆様(みなさま)、お初にお目にかかります。わたくしは聖女アリア」


 彼女(かのじょ)の声は、まるで泉のように()んでいた。

 しかし、その底に(ひそ)む何かが、(わたし)の心を不安にさせる。


「聖女アリア……。100年前の英雄(えいゆう)が、なぜここに」


 ルシアン王の声が、緊張(きんちょう)(はら)んで(ひび)く。

 (かれ)の額に、()(あせ)()かんでいるのが見えた。


「時を()え、再びこの世に降り立ちました。そして今日(きょう)は、重要な伝言を(たずさ)えて参りました」


 アリアの目が、一瞬(いっしゅん)(わたし)たちに向けられる。

 その瞬間(しゅんかん)、背筋に冷たいものが走った。まるで(たましい)(のぞ)()まれているような感覚に(おそ)われる。


「グレイシャル帝国(ていこく)は、ここにアランシア王国に宣戦布告いたします」


 その言葉に、執務(しつむ)室が騒然(そうぜん)となる。侍従(じじゅう)たちのざわめきが、部屋(へや)中に広がる。

 紙の音、椅子(いす)(きし)む音、息を飲む音が入り混じる。


何故(なぜ)だ! ()(くに)は貴国に敵対する行為(こうい)など……」

「理由は明白(めいはく)です。貴国が、()(くに)逃亡者(とうぼうしゃ)(かくま)っているからです」


 アリアの視線が、()()ぐに(わたし)たちに向けられた。その視線の重みに、息苦しさを覚える。


「あの……聖女さん?」


 シャルが一歩前に出る。

 彼女(かのじょ)の声には、(いか)りが(にじ)んでいた。その声が、()()めた空気を切り()く。


「グレイシャル帝国(ていこく)で何が起きているのか、あなたは知ってるの? 人々が苦しんでるんだよ!」

「そうですね。確かに変革の過程で、一時的な混乱は()けられません。しかし、それは聖なる国へ至る道程なのです」


 アリアの口調は変わらず(おだ)やかだ。

 しかし、その言葉の中に(ひそ)む冷たさに、(わたし)身震(みぶる)いする。

 まるで氷の()が、皮膚(ひふ)()うかのような感覚だ。


「聖なる国って? (ほか)の国から人をさらって、自分たちの国をめちゃくちゃにしといて……!」

「シャル」


 ルシアン王が、シャルを制する。

 (かれ)の表情は厳しく、国王としての威厳(いげん)に満ちていた。その声に、シャルは一瞬(いっしゅん)たじろぐ。


「聖女アリア。()(くに)は、困難に直面した者たちを助ける。それがアランシアの理念だ。

 宣戦布告を受け入れよう。だが――」


 ルシアン王の声が強く(ひび)く。その声に、部屋(へや)の空気が(ふる)える。


「――我々は、正義のために戦う。グレイシャル帝国(ていこく)暴虐(ぼうぎゃく)から、人々を守るために」


 アリアは、微笑(びしょう)()かべた。その()みに、(わたし)は言いようのない不安を覚える。


「そうですか。では、戦場でお会いしましょう」


 そう言うと、アリアの姿が光に包まれ、消えていった。

 残されたのは、薔薇(ばら)の花びらが一枚。それが(ゆか)()()ちる。


 静寂(せいじゃく)(おとず)れる。(だれ)もが言葉を失っていた。

 ただ心臓の鼓動(こどう)だけが、大きく(ひび)いているように感じる。


「さて」


 ルシアン王が深いため息をつく。その息が、重苦しい空気を()らす。


「これより、()(くに)は戦時体制に入る。すぐに会議を開こう」


 侍従(じじゅう)たちが(あわ)ただしく動き始める。準備を整える音が部屋(へや)中に(ひび)く。

 書類をめくる音、急ぐ足音、小声で()わされる指示。


「ミュウ、シャル」


 ルシアン王が(わたし)たちに向き直る。(かれ)の目には決意の色が宿っていた。


二人(ふたり)にも力を貸してほしい。この戦いは、グレイシャル帝国(ていこく)の人々を救うためでもある」

「おっけー、任せて! 今のやつを見て、あたしも俄然(がぜん)やる気()いてきたよ!」


 シャルは強く(うなず)いた。(わたし)も小さく(うなず)く。胸の中に決意が芽生えるのを感じる。


「ありがとう。二人(ふたり)の力が、きっと必要になる」


 その言葉が、(わたし)たちの背中を()す。

 窓の外では、アーケイディアの街に緊張(きんちょう)が走っていた。


 警鐘(けいしょう)()(ひび)き、人々が(あわ)ただしく動き回るなか号外のチラシが()()う。

 「戦争勃発(ぼっぱつ)」の文字が風に()う。

 平和だった街が、一瞬(いっしゅん)にして戦時下の雰囲気(ふんいき)に包まれる。


 (わたし)は窓の外を見つめながら、考えを(めぐ)らせていた。

 アリアの正体、グレイシャル帝国(ていこく)の真の姿、そして――これから始まる戦いのこと。

 胸の中で、不安と決意が交錯(こうさく)する。


 風が()き、カーテンがゆらめく。

 その向こうに広がる青い空が、まるで(うそ)のように(おだ)やかだった。


 戦争の幕が、今、切って落とされたのだ。

 その重みが、(わたし)(かた)に乗しかかった。

面白い、続きが気になると思ったら、ぜひブックマーク登録、評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ