プロローグ
魔法王国、ヨハン。
この国では人だけでなく、様々な種族が暮らしている。
南の暖かな森には、この世界の創世記から存在すると云われる『神の遺産』こと、妖精族。
小さすぎる体躯のため、見つける事が困難だと言われている小人族や、逆に大きな体躯をもつ巨人族。
ヨハン王国東側に広がる森には、別種族の侵入を全て阻む魔族が存在する。
しかし、この王国にて尤も注目を集めている》のは三大傭兵部族と人々に呼ばれる者達だろう。
一つ、崖の覇者『岩鳥族』
一つ、来訪者『ツキビト族』
一つ、妖精王の剣『獣人族』
彼らは他種族を圧倒する力を有しており、それ故に傭兵部族と呼ばれ恐れられている。
岩鳥族は崖に住まうことで、鋼のような肉体を手に入れ、空と同じように澄んだ青い髪をもつ、強さと共に美しさもかねそなえた一族。
忠に厚く、与えられた恩は生涯を以て返すことで知られている。
ツキビト族は他種族との交流を拒む、謎多き一族。
ヒトと変わらぬ姿をしているが、厳しい掟で己を律する事で強固な精神と肉体を得られると信じており、特徴的な深い緑の髪を横髪だけ縛ったツキビト族独自の髪型は、その厚い信仰によるものだと知られている。
獣人族はヒトの身に近い造りをしていながら、獣の特徴も併せ持った者達。
全員が変身の魔法を身につけており、獣の本能を容易に呼び覚ます事ができ、その力で妖精王の森を守っている。
このように、他種族には無い環境や掟、魔法により珍しい力をもつ彼らは、王国内でも希少な存在として扱われる。
その希少さから、彼らを捕え、売り捌き、巨額の富を得る輩も居る。
この物語は、その三大傭兵部族が一つ、ツキビト族の血が半分入った少女、"おねえさん"と呼ばれる『カンナヅキ 』
記憶を失った"ぼーや"と呼ばれる『 』
二人が出会い、探し人と記憶を辿る物語───。