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私、ダンジョンの匂いしゅきしゅき侍!  作者: 地空乃いいちこ


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戦闘訓練

 暴れる猫を連れて帰った次の日。

 ライゼルさんにギルドの裏の広場に呼び出された。


「昨日はダンジョンだったからな。今日はクタクタになるまで剣を振る訓練だ。そして明日と明後日の二日間身体を休めて、その後にまたダンジョン。そういうローテーションで行くぞ」

「訓練なんているんですか? そういうのは学校でやってましたよ、後は実戦で」

「馬鹿。学校で習うのは体操みたいなもんだ」


 ぺしんと頭を叩かれる。おのれ後衛職め、いまにみてろ。


「お前は前衛だろ、前衛としての鍛え方をしろ。ダンジョン・訓練・休憩・休憩・そしてまたダンジョンだ。訓練と休憩を逆にして、ダンジョン・休憩・訓練・ダンジョンにした方がいいとかやり方はあるが、何にしろリズムは作った方が良い」

「二日も休憩するんですか?」

「今回は無傷だからそう思うかもしれないが、けがの治療も含むんだ。薬を飲んだりヒーラーを雇ったりして、魔力も回復させてって考えると二日はあっという間だぞ」


 魔力を回復させるだけなら寝ていればいいが、傷を塞ごうと思ったら治癒魔法陣などを使わないといけない。これは大抵の冒険者向けの宿屋に設置されているもので、自然治癒力を数倍に高めるものだ。高額な費用を払えばかなりの重傷でも一晩で治療できる。


「迷宮から帰った次の日に休みたいって気持ちもあるが、ルーチンに沿った訓練で身体の感覚を戻すってのが感覚を研ぎ澄ませる役に立つ」

「猫ちゃん構いたかったのにぃ」

「それは怪我が無かったら休憩の日になるんだな」


 昨日連れ帰った白猫は、脇の下に手を入れてぶら下げている間、ずっと脚をぶんぶん振ってイヤイヤしていた。なのに私の部屋に入れて干し肉をあげたら、もう部屋の主でもあるかのように堂々と寝てしまった。ややがっしりした体格とくっきりした目つきからメイリオと名付けてみた。


 メイリオを構いたい気持ちを抑え、しぶしぶ父の形見の大きな剣を肩に担ぐと、全力での素振りを始める。

 身体を捻って力を溜め、全力で剣を振る。

 そんな姿を困ったような目で見降ろすと、ライゼルさんが剣の振り方に注文を付けてくる。


「あー、武器は大きく分けて2つあるってわかるか?」

「えーと、遠距離武器と近距離武器ですか?」

「それもあるけど、今言いたいのは軽い武器と重い武器だ」

「当たり前じゃない?」

「当たり前じゃないんだよ、ちゃんと使い方わかってないと死ぬぞ」


 ライゼルさんが言うには、私は体格が小さいこともあって軽い武器の使い方を勧めたいらしい。しかし、持っているのは父の形見の剣だ。身長ほどある結構大きな刀身をしている。


「バルトの形見だろう? あいつはデカかったからな、その剣を力ずくでぶん回せた。お前みたいにチミっこいのは短剣を使うべきなんだ」


 確かに、この剣を初めて振った時は、重さで身体が振り回された。


「学校とかの武術教練では軽い練習剣使ってたんだろ?」


 ライゼルさんは、どうやら私がこの剣に慣れていないと思っているらしい。よし、見せてあげるとしよう。


「いえ、授業のときには一番重くて大きい剣を使ってましたよ」

「え、なんでだ?」

「迷宮では武器や防具は命綱だって聞いたので。手に入る一番いい装備を使うべきという意見に従って父の形見を使うつもりで訓練してたんです」

「いや、あってるけど。誰だそんなこと吹き込んだやつは」

「ライゼルさんですよ、子供の頃にうちで飲みながら言ってました!」


 まだ父が現役だった頃。掘り出し物の良い装備が店に並んだ事があった。切り裂きの剣と呼ばれるその大振りな剣は、普段使っていた数打ちのだんびらとは違う名品だった。

 しかし、二階の魔力溜まりの宝箱を回収して1000Gを6人で山分けする生活ては手が出ないほどの価格。高嶺の花だった。

 そこで当時のライゼルさんはこう言って説得したのだ。


『バルト、俺の取り分も使え。装備は命綱だぞ、手に入る限りの一番いい品を使うべきだ!』


 確かに言っていた。


「あー……。聞かれてたのか」

「これ、あの時の剣ですよね」

「そうだな」


 軽い武器の使い方を教えようとしていたライゼルさんは当てが外れたようだ。


「腰を落として細かく動いて、敵の装甲の薄い所を狙って確実に当てていくのが短剣術の使い方なんだが、お前の体格で重剣術使ってんのか」

「メイスみたいに重さでぶったたく使い方はしてませんよ。体幹が崩れないように芯を作りつつ、体全体で引っ張るようにして剣を振ってます」


 ブンと大きく剣を振り、ピタリと止めて見せる。足は地面に吸い付いたように張り付き、上半身は揺らがない。


「んー、振るえるならいいか。兵士や騎士の扱う対人用の剣術とは別物だしな。好きなようにやってみると言い」

「いつかはカタナってのも使ってみたいですから、大きめの武器で行こうと思います」

「わかった。それより、明日はちゃんと休めよ。最高のコンディションじゃないと危ないからな。長く生き残る冒険者はしっかり休むものだ。いいな?」

「わっかりましたー!」


 剣を背中に背負いなおすと、シュピッと手をあげて返事をする。


「よし、俺も明日と明後日は休養。その次にまた迷宮に行こう」

「えー、2日もお預けですかぁ?」

「お前俺の言う事聞いてたか?」


 リーチェッタはちゃんと聞いている。ただ、守る気がないだけだ。そもそもライゼルさんとは年が違うのだから、休養の時間も短くて済む。夜にしっかり寝れば疲れは取れるのだ。

 身体を休めるための休養と、遊ぶための自由時間を混同している。その点、学生気分が抜けていないのだ。


「さて、ライゼルさんが休む間に一緒に潜れるメンバーを探さないとな」


 学生の間によくコンビを組んだ相棒、パイエ=クレマリアの事を思い出した。


「よし、パイエを誘ってみよう。たしか魔法学科受講してたし!」


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