始まり
流血シーンなどがありますので、苦手な人は見ないで下さい。
FPSのような照準器を視界に見つけた僕は、まだ酔いが覚めていないことに気付いた。昨日からそれが見えるようになり、頭がおかしくなったと思った僕はこれまでのストレスもあり、やけ酒をしてそのまま寝た。だが、朝になれば、つまり今になっても、治った様子はなかった。ストレスに参った精神が変な幻覚を本当に見せているようだった。幾ら目を擦っても、消えることはない。
「……何がどうなっているのだ?」
僕はベッドの上で胡座をかき、悩んだ。だが、それだけで答えが出てくることはなかった。仕方なく友達にでも相談しようと、僕は枕元に置いていたコンタクトレンズ型の液晶端末をケースから取り出し、目に装着した。企業名のバナーが出た後に液晶端末が起動された。通知の件数はゼロ。陰キャのぼっちな僕にはそれが普通だった。視界に表示されるコンテンツに空中で触れると、アプリが開く。誰かの誕生日も近日中にはない。
「あぁ、消えないな……」
視界に映るアプリを片っ端から開いても、照準器が消えることはなかった。逆に照準器が見えやすいように、近くにあるアプリは普段より色が薄くなっていた。何の機器もなしに、液晶端末に干渉出来るものを聞いたことはなかった。テスト時のカンニング対策に、液晶端末は付けた状態で許されるが、代わりに教師に操作権が渡る。それが学校から支給されている、生徒用の液晶端末の機能だった。だが、その機能も専用の機器があるから、出来ることであった。
僕は改善しない状況に軽く溜め息を付くと、メッセージアプリを開き、唯一の友達と通話しようとした。しかし、通知が開始される前に、僕の視界に見覚えのないバナーが現れた。
『e68891e38085e38292e6b0b8e981a0e381abe88ba6e38197e38281e381a6e3818de3819fe784a1e79fa5e381aae4babae99693e38288e38081e588b6e8a381e381aee69982e3818ce69da5e3819f
誰一人我々ノ試練ニ立チ向カオウトシタ者ハ居ラズ。尻込ミシ動カヌ者二、其ノ罪ノ裁キヲ。
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その次の瞬間、僕の視界一杯に動画が表示された。それを見た僕は吐きそうになる自分を何とか抑えた。街の中央に位置する空中浮揚時計台の重力反転装置により、その上空に血塗れの遺体が浮かんでいた。そして、その装置の領域からはみ出した赤い液体が、空から降り、下の広場にある噴水を真っ赤に染めていた。そのありように体が硬直した僕は、目を背けることも出来ずに見つめ続けるしかなかった。すると突然、動画がズームされ、僕の視界一杯にその歪な形をした顔が映し出された。何かが爆発したように前頭部が綺麗に削がれ、脳から飛び出た血が滝のように流れていた。目の悪い僕がズーム機能を付けていたことを、ここで思い出した。その機能を付けたままにしていた、自分を恨みたくなったがもう遅かった。
僕は口元を押さえると近くのゴミ箱に吐いた。逆流した吐瀉物の匂いが部屋に充満してもなお、その原因である動画が途切れることはなかった。どこに視界を向けようとも、その遺体が僕の視界の中央に必ず現れた。僕は急いでズーム機能を切るために操作バーを押したが、どこも反応しなかった。仕方なく画面の片っ端から押し続けた僕は、画面に文字が表示されるのを見た。
『コンタクトレンズ型液晶端末による爆発』
その文字を読んだ僕は付けていた液晶端末を外そうとしたが、幾ら頑張ろうとも取れることがなかった。その間にまた動画が再生され、僕は気持ち悪さにベッドで横になり、意識を失った。
『[気付いた者]の称号を獲得』
『貴方は[鑑定者]になりました』
『ようこそ、Death Gameへ。ここが全ての始まりです』
僕は表示されたその文字に気付くことなく、寝続けた。
この日の出来事は後に調査され、「眼球爆発テロ」と言われた。だが、これはただの始まりでしかなかった。