プロローグ
最初は主人公の一人語りがあります。ご了承ください。
ルストレア王国。
肥沃な大地と先進的な魔法技術により発展した魔法国家で、現状、世界を支配していると言ってもいい大国である。
その先進的な魔法技術を支えていたのは、世界最強と名高い魔法使いだった。そして彼は魔法使いの最高位の称号である賢者を名乗ることを許され、世界最強の賢者と呼ばれたのだ。
その力は凄まじく、まさしく海を割り山を押し潰した。しかし、その強すぎる力を恐れた国は、彼の一番弟子を裏切らせ、騎士団と共に彼を襲った。
彼が襲われてから既に五日。
その彼は今、王都の地下深くにある隠し部屋へと逃れていた。
―アーケン―
体中が痛い、これほどの痛みを感じたのはいつ振りじゃろうか。ローブの下に隠れている深い傷は儂を容易く死へと向かわせるだろう。
回復魔法でも治らないとは、奴ら帝国の秘奥まで使ったというのか・・・?確か帝国の宝物庫には魔法を無効化する剣があったはず。範囲魔法には無意味なので完全に忘れておった。
まぁ儂の力は強すぎたし・・・奴らが恐れるのも無理はないんじゃが・・・・・・長年仕えてきた王国に裏切られたのには少し考えさせらる物もあるのう。
そんなことよりもルグロじゃ、一番弟子の癖に裏切りおって、あ奴の技術は儂が教えた物じゃろうに、何が「あなたがいると私はいつまでも活躍できません」じゃ!勝手に活躍したければすればいいのじゃ!
そう考えながらも儂は杖を振るい術式を完成させていく、研究中の転生魔法であれば儂も無傷の状態で生き返ることができるはずじゃ。
しかし、やっぱり儂は天才じゃな、考え事をしながらも転生魔法の術式がほとんど完成しとるわい。じゃが儂の魔力をもってしても魔力が完璧には充填できそうにないのう。これでは転生先が指定できないではないか・・・
まぁ王都に点在している魔力を吸い取る魔術陣を完全に展開すれば必要魔力は充填できそうじゃの、こんなこともあろうかと以前に設置しておいてよかったわい。
「『魔法陣起動』」
儂の血を使った魔法陣は魔力変換の効率が良くていいのう、まぁ血なんかは自分で採れなかっただろうからそれだけは感謝じゃの。
おぉ魔力が溢れてくるわい、王都は魔力が多くて助かるのう・・・騎士団やルグロからも魔力が吸い取れるのじゃ、笑いが止まらんとはこういうことを言うのかのう。
「バチィッッ」
ちっ、ルグロの奴め魔力を吸い取られるのを感知して特定したとは・・・一番弟子というだけはあるのう。まぁ対策術式を設置しておいた儂の方が1枚上手じゃがの。しかし中々強力な術式を組んできたのう・・・まさか儂の指輪が弾け飛ぶとは思わんかった。
しかし、もう転生魔法は完成した、あとは転生先を設定するだけじゃな。
もうこの世とはおさらばか・・・・・・魔法の研究は楽しかったが、激動の様な人生じゃった気がするわい。
転生先はどこがいいか・・・戦争には疲れたし、人死にはもう見たくはない。かといって儂の才能は発揮したいのう。
儂は考えに考え抜き、3つの条件を設定した。
1つ、魔法がある世界
2つ、技術が今より進歩している世界
3つ、儂がその世界で一番の魔力を持つこと
まぁ儂の才能があれば魔力は最低限でも十分なのじゃが、使えないというのも困る・・・まぁ最低でも今の儂レベル魔力は得られるようには設定しておるから問題ないはずじゃな。
儂は光輝く魔法陣の中心に立った。
「さらばじゃな、ムストレア王国。そして新たなる世界よ!」
そして儂は、魔法陣から放たれた光の奔流に包まれ、意識を失った。
賢者アーケン、享年273歳。
この話し方は最初だけです。