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プロローグ
僕の妻になればいい、と彼は言った。
君の心を守ってあげる。
一緒に住めばいい。みんなで暮らそう。
君さえいいなら、とはにかんで笑う。
家族になろう。
私はその誘いに乗った。
形だけの結婚。
恋とか愛とか、そんな感情は伴わない。
嫌いではない相手と、過ごす日々。
悪くないと思っていた。
君を守るよ、と彼は言う。
だけど、君の力も借りたいな。
彼には娘が一人いた。
優しい夫と、可愛い娘。
幸せは人を満たす。
でも、同時に。
足りない、と心がささやく。
幸せは、私を欲張りにしてしまった。