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山のふもとにある二四時間営業のディスカウントショップに、四人は買出しに来ていた。人の少ないこの時間、中国語と英語を話しながら買い物をする外国人は結構目立つ。
創樹の靴は、創樹とザットを店の外に残して、峰春がシグと共に先に店に入って買って来ていた。
地図は創樹が『ゼンリンが一番いいんですが…』と漏らしたために、保留になっていたが、一応書店の場所を聞く。それから皆は、それぞれの買い物に移った。
『下着はセット売りで結構可愛いのあったけど、何この服。ダサい!』
峰春がむくれ、創樹を見た。二人で洋服を選んでいる時のことだ。だが、一着も峰春の気に入る服はない。
服を選び終え、シグがやって来た。ザットは食料の買出しに向かったそうだ。
『もっと他の店ないの? ダサすぎて一着も着れる服がないわ』
『この時間閉店してる。それに、服なんて何でもいいだろ。特別人に会うわけでもない。策を練って休むだけだ』
『でも、このダサさはありえないわ!』
『そんなに言うなら明日、別の店で服を調達すればいいだろうが。明後日S市に戻るとしても、あと一晩はここらで泊まるんだ。今日買ったのをパジャマ代わりにすればいい』
引き下がらない峰春に、面倒くさそうにシグが告げる。
『その別の店にこのジャージで行けって? 今着てる服を洗濯したにしても、乾かないわ』
『じゃあ、洗濯せずにそれを着て行って、新しい服を買った後、シャワーを浴び直してから着替えればいい』
『【ソウジュ! 聞いた? “シャワーを浴び直してから着替えればいい”? これだから男って信じられないわ! その前に洗濯もしない汗かいた服に、もう一度袖を通すのが嫌だから言ってるのに!】』
シグの言葉に、峰春は創樹を振り返り、中国語で言った。
『【はぁ。そうですね。気持ち悪いですもんね…】』
勢いよく言う峰春の剣幕に半ば気圧されつつ、創樹も中国語で応える。
『【そうよ! そこよっ! 嫌なものは嫌なのよ!】』
『こいつは何を言ってるんだ?』
中国語で主張する峰春に、眉根を寄せてシグが創樹を見た。
『女心を理解しない人に関係ないわ』
創樹が答える前に、峰春が英語に戻り、シグに言う。
『はいはい。とりあえず急いでくれ。他の買い物は引き受けるから、五分後にレジ前集合』
二人に告げるとシグは去って行った。
仕方なく峰春は、『かろうじて許せないこともない』スポーツウエアを手にし、創樹にも色違いを勧めた。
五分後。創樹が一人でレジの所へ行くと、既にシグとザットが待っていた。峰春はまだ買い物があるらしい。
『フォンは?』
『…すぐに来るそうです』
ザットが首を傾げ、創樹は遠慮がちに言う。シグがやれやれ、とため息をつく。
『精算はまとめて済ませるぞ。とりあえず並んでおこう。君もね』
それからシグは二人に言って、ザットをレジの前に押しやったあと、創樹にも告げて、軽く背を押して己の前に並ばせる。この時間はすいているので、レジはすぐにあく。
『すみません。ご面倒おかけして。私の分は全部あとで請求して下さい』
創樹は振り返り、シグを見上げて遠慮がちに言った。
『気にするな。活動費は上から預かってるし、俺の懐が痛むわけじゃない。それに…面倒はお互い様だ』
シグは肩をすくめ、ようやくやって来た峰春を視線で示す。
創樹はフッと微かな笑みを口許に浮かべた。
『ソウジュ、クレンジングと洗顔は持って来てくれた?』
『…これでいいですか?』
創樹は問われ、峰春に言われた通り探してとりあえず自分のかごに放り込んでいたふたつを取り出した。
『ええ。ありがと』
峰春は受け取ると軽く確かめて頷き、自分のかごに放り込む。そんな峰春を己の前に並ばせながら、かごの中に服以外のものがごちゃごちゃと入ってることに気づき、シグは眉根を寄せる。
『言っとくけど、女の子の身だしなみとしては最低限よ! クレンジングと洗顔と化粧水はないなんてありえないし、ヘアブラシと日焼けどめとリップクリームは必要でしょ? ホントはファンデーションとか口紅とか、ビューラーとか、アイカラーも必要だけど、我慢したのよっ!?』
シグの表情に気づき、峰春は主張した。
『『…………………』』
シグとザットは顔を見合せ、それから峰春の前にいる創樹のかごと見比べる。創樹のかごには、本当に洋服だけが…。
『レディのかごを覗き込むなんて失礼ね! 下着とかも入ってるのに。エッチ! すけべ! 変態!』
視線に気づいて峰春が声を上げた。シグとザットは顔を見合せ、やれやれ、と肩をすくめる。
『それに、ソウジュにも貸してあげるのよ。ね、ソウジュ』
『え…? あ…ありがとうございます』
それから付け加える峰春に、創樹はとりあえず礼を言った。




