プロポーズ
子供って…いきなりそんなこと言われても…
「ただ子孫を残すにあたって、あまり子供を作り過ぎるのはよくないって。勇者の力が多いに越したことはないけど、勇者の一族が治る国が人類同士で権力争いしてるところもあるって…ケイ、なんだその、冷静なんだな」
「そうだな。マサムネ様がクロエに託したように、必要なことだと思う。マサムネ様が召喚され、次に俺が召喚されるまでの長い間この国は勇者なしで戦っていたためここまで生存圏が小さく…っと、すみません、マサムネ様を責めているのでは決して…」
『気にしないよう伝えてくれ。むしろ大変な役目をさせてすまないと』
「爺ちゃんが気にするなって。むしろ大変なことさせてすまないって」
「いえ、俺も勇者としての役割を果たします。子供か…ミィ、リノフレア、もし嫌でなければ君達にも俺の子を考えてもらいたい。この世界で最も親しい女性は君達だからね」
「ちょ、ちょっとケイ!こんなみんないるところで!」
「ええ。ただエルフは長命で孕む可能性が低いから、まずはケイと同じ人間の娘のお嫁さんを探した方がいいと思うわ」
「それならば私の娘はいかがでしょう?協会でシスターをしております」
「ありがとうございます、まずはお会いしてから考えさせていただきます」
「ケイはすごいな…そんなトントン拍子で…でもその、ガイルはいいのか?同じパーティで一人だけ…」
「ワシか?ワシは既に嫁も子もいるからな。気にすることはない」
「何を言ってるんだ?クロエの方が相手は既にいるだろう?」
え?
「さて、それでは鍛錬は明日からにして、今日は彼女に大事な話をしてあげた方がいい。俺たちはお暇するよ」
「では私が呼んで来ましょう」
カナーシュ爺さんが立ち上がり俺の家から出て行く。それに次いでみんなも去り、しばらくするとカレンが家にやってきた。
いつもの元気さはなく、頬を染め俯き加減でたまに上目遣いでこちらを見てくる。
え?
「ク、クロエから大事な話があるって聞いて来たんだけど…」
大事な話って…。どう考えてもさっきの話だよな。いや、まあその親しい女性はカレンだけだし、多分カレンも俺のことは悪く思ってないはず。しかし付き合うとかならともかくいきなり子供の話を
「あのね。昨日、クロエの後を追ったの。そしたらクロエが魔物をやっつけてて。勇者様の力を引き継いだんだってさっき元司祭様から聞いたの。それで、その、こ、こど」
「いや、待ってくれ。ちゃんと、俺から言わせてくれ。そのもしあれだったら断ってくれてもいいんだけど、その…俺とけっ、結婚して、こ、子供を産んもらいたい。でも、俺はしばらくしたら旅に出る…苦労をかけることになる。それでも良いって言ってくれるなら、考えてほしい」
「…クロエがね、ずっと体を鍛えてたの知ってたよ。ずっと…夢だったんだよね。後のことは元司祭様もいるし、ミィさんやリノフレアさんも頼れると思う。だから、うん。で、でも!ちゃんとその、気持ちを言ってほしいと言うかなんというか」
「そそそうか。うん。そうだよな」
咳払いをしてからカレンの目を見つめる。
「カレン、小さい頃からずっと俺のことを気にかけてくれてありがとう。好きだ。結婚しよう」
「はい!」
カレンが俺の胸に飛び込んで来たのを受け止める。
翌日、勇者パーティと一緒に防壁の外に出る。
「ケイ、勇者の力を顕現するにはイメージが大事らしい。強さとは何かをイメージして、それを心から取り出す感覚、だってさ」
「わかった。やってみよう」
ケイが目を閉じ暫くすると、ケイの胸の前に光が現れそれを掴む。
『いきなり成功か。筋がいいな』
爺ちゃんが呟く。するとケイは鉄の筒のようなものを手にしていた。
「火縄銃、みたいだな」
「ヒナワジュウ?それはどうやって使うのかしら?」
「…うん、初めて持ったけど、使い方はわかりそうだ」
そういうとケイは木に向かって筒を構えた。
ダァーン!!!
爆発音の後、ケイが筒を構えた先の木が半ばで弾け倒れた。
「凄まじいな。本物の火縄銃より遥かに威力があるんじゃないかな…それに弾はどうなって…っと、驚かせてしまったね。ミィ、大丈夫だ。すまない」
ミィを見ると驚きのあまり飛び上がり、ガイルによじ登っていた。
「凄いわね…私の魔法より出が早いし威力もある。これが勇者の力なのね…」
「えーっと、勇者の力はイメージ次第で強くなって行くって。魔物を倒しながらそのイメージを固めていくことで鍛錬していく、ってことで、改めてよろしく、ケイ」
「ああ!よろしくクロエ」
右手を差し出しケイが力強く握り返してくる。