第1幕 シーン4 配役への変身
登場人物
名前:新崎 真奈美
年齢:14歳
職業:学生
今回は彼女の夢の中が舞台。
もともと性格は明くはないが、優しく両親思いである。
一人娘のため将来、両親を看れるように介護福祉士を目指していた。
しかし、徐々にやる気を失って今では両親と会話も無く引きこもっている。
名前:新崎 俊夫
年齢:43歳
職業:会社員
配役:ユウジ
製薬会社に勤め、当時は製品原料の受け入れ係の係長に就く。
性格はマイペースであったが、仕事で厳しく指導されたため短気で神経質に変わっていった。
そのためやり手の係長として活躍するが部下には厳しい。
仕事が忙しいため家にいることは少ないが、一家の権力者である。
名前:新崎 真佐子
年齢:40歳
職業:主婦
配役:ミキ
俊夫とは幼なじみで20歳の時に結婚する。
箱入り娘として育てられ上、大学時代に結婚したため、世間知らずな部分もある。
おっとりとした性格であるが、感情的になると自分を抑えられない。
自分は就職したことがないため、娘には就職して世界を広げて欲しいと思っている。
ミキが緞帳の前に立った時、緞帳はゆっくり上がっていった。
緞帳の向こうは暗闇が続いていて、10mほど先には今居る部屋をくりぬいたかのような立方体が浮かんでいた。
ミキは迷わずに暗闇へと歩き出していった。
初めて夢の中に入ったときは暗闇の上に足を置くことに躊躇したものだ。
歩く道くらい作ってくれよとお願いしたことがあるが、団長も俺たちと同じくイメージすることで舞台をセッティングをする。
無駄な部分に気力を使うことは極力避けたいそうだ。
夢の舞台では裏方でさえも常に気が抜けない。
ミキが夢の中へと入ったとたんに体に変化が起きた。
身長が少し縮み、頭の後ろで結われていた髪の毛は束ねられて背中まで伸びていく。
真っ赤なドレスも白いブラウスとベージュのひざ丈スカートへと変化を遂げていた。
ハリの有った肌にはしわが走り、ピアニストのような手は荒れてし行き、血管が浮き出てしまった。
「今回は私が先に登場ね。あなたも早く役に入りなさい」
そう言って夢の部屋へと向かっていった。
いつ見ても彼女の役作りには驚かされる。
『配役を頭でイメージする』言ってみれば簡単だが、これがなかなか難しい。
変身の方法はまず無をイメージして自分を徐々に消して行く。
全て消えてたら配役をパーツごとにイメージしてくっ付けていくといった感じだ。
この作業は彼女よりキャリアのあるマサさんでさえ、静止した状態で1分以上かかってしまう。
彼女は歩きながら目もつぶらずに10秒ほどで変身してしまうのだ。
団長は彼女の変身をこう表現した。
彼女は自分を消しているのではなく自分を捨てているようだと・・・