第1幕 シーン1 夢芝居
俺の職業はドリームアクター。
普通の俳優ではない夢の俳優なのだ。
ドリームアクターは夢の世界で演技をする。
他人の夢に入り込み夢の登場人物を演じるのだ。
夢の中での演技により観客に喜び、楽しみ、悲しみ、怒りを与えて運命を変えていくのが俺の仕事。
観客は夢を見ている本人だけなのが少し寂しいが、演技によって一人の運命を変えられるところに誇りを持っている。
俺の仲間を紹介しよう。
まずはこの劇団を束ねる団長のジュン。彼はこの劇団の中心人物であり彼無しでは他人の夢の中には入れない。
そのほかにも脚本と新人の勧誘、役者の指導、マネージメントをこなす。
要するに夢の中以外の仕事は彼一人で行っている。
まあこの俺もジュンに勧誘されこの仕事に入った。
始めは信じられなかったが、彼の演劇への熱意と才能に興味を持ち劇団に見学に行った。
そこで彼の能力が本物であることを知り、入団したのだ。
次に紹介するのは本日共演するミキ。
10歳からこの仕事を続けている大ベテラン。
見た目は25歳ほどで俺と同じくらいに見えるが、団長と本人以外は誰も年齢を知らない。
長年の経験からか本質的な性格か分からないが、性格はタカビーで何かにつけ新人の俺を軽視する。
しかし大ベテランだけあって演技は超一流で、一度恋人役をやったときは今までの小馬鹿にした態度を忘れ本気で惚れそうになったくらいだ。
そのほかにもチョイ悪親父のマサさんや、有名女優の娘ユウナ、子役のユウトにアオイちゃんなどがいるがそれは共演してから紹介して行くことにしよう。
今回の舞台は新崎真奈美の夢の中。
依頼人はその娘の母親。
依頼の内容はこうである。
22歳にもなる娘が性格が暗く、そのため友達も少なく恋人も出来そうにない。
一時は介護福祉士を目指していたが諦めてしまい、今では家で引きこもっている。
思い当たるのは中学2年の時に進路について大喧嘩したことがあり、その頃から性格が暗くなって介護福祉士も諦めだした。
だから夢の中で喧嘩を止めて来て欲しい。
と言う内容である。
台本の内容は母親に扮したミキが真奈美と進路について喧嘩する。
それを父親役の俺が止めに入って真奈美を説得する。
といった簡単なものだ。