入会しよう!
意を決した麦人がまず最初に目にしたのは、乱雑に散らかった書類の山が自分に向かって雪崩れ込んでくる光景だった。
「--え!?ぅわああぁぁあああ!!」
麦人は紙の重さに負けて尻餅をついた。突然のことに戸惑い辺りを見渡すと、部屋の奥で何かが紙山の下で動いた。それを同好会の会員だと判断した麦人はソレに向かって声を掛ける。
「すみません!新入会員なんですけど!」
ソレは動き続けるだけで麦人には何の反応も返さない。そのことに奇妙な印象を受けつつも麦人は再度声を掛ける。
「すみません!聞こえていますか!?」
「はいはーい。聞こえてるよ」
その声は麦人の後ろから聞こえた。驚いて後ろへと振り返ると、麦人の胸元辺りまでの身長の小柄な少女が居た。その制服のネクタイは麦人の一つ上の学年の色である赤色をしていた。
「えっと…。『草むしり同好会』の会員の方ですか?」
「うん、そうだよ。そういう君は新入会員の子かな?」
「あ、はい。本日より入会することになりました。穂坂麦人です。今後ともよろしくお願いします」
「これはご丁寧にどうも。一応私がこの同好会の会長で飯堀静音っていうよ。こちらこそよろしくね」
そうして軽く挨拶をすると、静音は奥の蠢く紙山に進んでいく。
「それで副会長を紹介するね。この娘が副会長のアンジェリカちゃんでーす」
じゃーん、と効果音を自分で言いながら静音が紙山から引っ張り出したのは、向日葵の様な形をした鋭い牙の生えた植物だった。