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ペテンに賭ける!  作者: しゅん
バブルフラワー編
6/27

夜空に沈む一輪の花



パン


乾いた音と、眩い光が、辺りを包み込んだ。


ー 2発目の 閃光弾…

ココは膝をついた。

かけるは微動だにせず、空を仰いでいた。

ー どうして…なの…ねえ…

「かける…」


「終わりですね。」

そう言って近づいてきたのはヒューマだった。

「あなたの借金はこれで642万。 そして…ゲームはお終いだ。」

ヒューマは口角をあげた。そして、長い白衣をひるがえす。

「あなたの…負けだ。ペテン師かける。」


辺りが奇妙な空気に包まれる。誰もが、ヒューマとかけるの行動から目を離せずにいた。

かけるは、静かだった。

先ほどまでは取り乱し、我を忘れているかのように見えた。

閃光弾を打ち上げたショックでこうなったのか…?それともまだ何か策が? …いや。あいつが閃光弾を打ち上げた時点でもうゲームオーバーだ。あいつに勝機はない。

ヒューマは、動かないかけるを見て考えを巡らせた。

すると、ゆっくりとかけるが口を動かし始めた。

「…負け…か。おれ…の。」

かけるがそう言った瞬間、ヒューマは勝利を確信した。

考えすぎだった!やはり俺の…

「なあヒューマ。」

かけるの言葉に反応するヒューマ。

かけるはまだ空を見上げていた。顔が見えない。

すると、かけるはゆっくりとヒューマの方を向いた。

その表情を見た時、ヒューマは目を見開いた。

なんで…笑ってるんだ ーー


「お前の負けだ。詐欺師ヒューマ。」



ドカ、と鉄の扉が勢い良く開いた。

「ハーイ!そこまで!動かないで!」

全員の視線が集まる。

元気良く現れたのは、金髪のツインテールに露出の多い警察服を身にまとった女だった。

マリは女を見て、自分の平らな胸をさすった。

「…ボイン…。」

マリは、その豊満な胸を見て目を細めたのだった。

「メガロポリス、フィアちゃん!ここに見参!!!」

フィアと名乗る女は、そう言ってポーズを決めた。

「久しぶりだね!かけるっち! また私にむぎゅむぎゅされたいのかな!?」

「頼んだ覚えもねえし、された覚えもねえ」

「んもう、相変わらずつれないねえ。かけるっちは。」

やれやれ、と大げさな身振りを見せるフィアを見て、ココはかけるに尋ねた。

「ちょ!ちょっとかける!誰よあの女!」

「おい、誤解を招くような尋ね方はしないでくれ…。」

かけるは慌てて身構える。

「 あいつは、メガロポリスといって、不正をする店を検挙する、国家機関の一員だ。 昔に少し面識があってな。」

ヒューマは最初、メガロポリスの登場にうろたえていたが、すぐに目つきを変え、エリカに尋ねた。

「メガロポリスが、この店に何の用だ。うちは何の不正もしてない。それに、今はゲーム中だ。すぐに退いていただきたい。」

言葉こそ丁寧だったが、そこには明らかに怒りに似た感情が込められていた。

「そういうわけにはいきませんなあ!マスター ヒューマくん! 私は、最初からこのゲームを見ており、かつこのゲームの結末を知る者だよ!」

てへ、とフィアはおどけてみせた。

「ハッ!ゲームの結末?そんなものもう決まっている! ペテン師かけるが642万の借金を背負って終わりだよ!」

ハハハ、とヒューマが笑うと、フィアもアハハと笑い返した。

「だーかーらー、このゲームは最初から見てるって言ってんじゃん! ね!かけるっち♡」

かけるは、フィアのウインクを紙一重でかわすと、ヒューマに言った。

「俺は閃光弾を打ち上げ、642万の借金を背負った。 だが、ゲームは終わらない。」

ヒューマは苛立ちをあらわにしながら、かけるを睨んだ。

かけるは表情を変えずに、さらに続けた。

「なぜなら、お前は今から、俺の残りの花火を打ち上げなければならないからだ。」

ヒューマの目が動揺で大きく開いた。

すると、フィアが胸元から録音機をとりだし、頭上に掲げた。

無駄に音質の良い録音機から流れてきたのは、かけるの声と、ヒューマの声だった。

『もし閃光弾を打っちまったらどうなる?残りの花火は買い取ってもいいのか?』

『いいえ!それは、わたくしが責任をもって打ち上げさせてもらいます!勿体無いですから!』

…バカな!

録音機のヒューマが喋るのを終えると、かけるが言った。

「さあ、責任を持って打ってもらおうか、俺の残りの花火を。 …7発の閃光弾つきだがな。」

かけるが笑うと、ヒューマは歯ぎしりをたてた。

「な…なぜ…そんなものが都合良く…!」

「かけるに頼まれたのよ。」

フィアは答えた。

「この店を潰す武器を、俺が今から創る。って言ってきたのよ!かけるっちが♡」

「な…なんだと… それじゃあ…」

ヒューマは怒りに震えながらかけるを見た。

「お前の目的は最初から…この店を潰すこと…だったのか…!?」

かけるの口角があがる。

「…言っただろ? ー 全部まとめて終わらせる ってな。」

こいつ…!

その時、ヒューマの体が宙に浮いた。

「!?」

ヒューマの両脇には、黒人にサングラスの屈強な男が立っていた。

「抵抗しちゃだめよ、マスターくん♪ あなたは破産、つまり負けよ。」

フィアの言葉を合図にするかのように、男たちはヒューマをどこかへ連れて行く。

「んじゃ、かけるっち。私はこいつを機関に連れて行くわ。 あ、それと、かけるっちの借金642万、私がもっとくから、さっさと返してよね!」

「ああ、悪いな。」

「いいのいいの、んで、かけるっち。どうして急にまた店潰し始めたの?」

かけるはその問いに思わずのけぞる。目が少し泳いでいた。

「いや、ただ…あいつが気に食わなかっただけだ。」

フィアは目を細めた。

「ふーん、ま、それならいいけど。」

フィアはそう言うと、ヒューマを抱える男たちを連れて、何処かへ消えてしまった。



誰も予想できない形で、ゲームは終わりを告げた。

ゲームのマスターが、敗北したのだ。


残されたプレイヤー達は、あっけにとられていた。

「五里羅を…助けてやれなかったな。」

かけるはつぶやいた。だが、辺りは奇妙な静けさに包まれていたため、その声は全員に行き届いた。

「…その…悪かったわね。」

目をそらしながら言ったのは落葉だった。

「さっきの…言い過ぎたわ。」

落葉はそう言い残して、鉄の扉を開けた。ギイ、と重たい音と共に、外の空気が流れ込む。

「俺も…すまなかった。」

詰木もそう言って頭を軽く振った。

奇妙な空気が流れる中、ほとんどのプレイヤーが順に去っていった。

その姿を、かけるとココ、マリは黙って見ていた。

最後に、フードをかぶった猫が残った。

しかし、彼はなかなか動こうとしない。

猫は、かける達にゆっくりと近づき、足を止めた。そして、久しぶりに口を開いた。

「かけるくん。」

かけるは目を見開いた。

「お前…!まさか…!」

猫はフードをとり、その姿を見せた。

「本当に、ごめんなさい。」

「ケイジ…なのか…!?」

「黙ってて、ごめん…!」

ココとマリは、ポカンとしていた。

「いや…誰?」

「ああ、こいつはケイジ。血は繋がっていないが、俺の兄弟みたいなもんだ。」

「兄弟!?」

頼りなさそうな薄いルックスに、メガネをかけた、気の弱そうな感じだ。

ケイジはフードを取ると、どうも、と軽く会釈した。

「んで。」

かけるはケイジに尋ねた。

「なんでこんなとこにいるんだ?」

「ああ!そうだ!かけるくん…!」

ケイジは顔を歪ませてかけるの胸ぐらをつかんだ。

「姉さんが…!姉さんがあ!」

今にも泣き出しそうな顔と震える声に、かけるも動揺を隠せなかった。

「真由美さんが…どうかしたのか…?」

「僕、姉さんのために何かしようとしんだ…!だけど…やっぱり何もできなくて…! 花火のSOSに気付いて来たら、そしたらかけるくんも来て…!やっぱりかけるくんじゃなきゃって…!」

「おい!落ち着け! 真由美さんがどうしたって!?」

「助けて…真由美さんの病気が…!」

その言葉に、かけるは愕然とした。


うそ…だろ?

目の前が真っ暗になった。

こんなことって…本当にあるんだ。

もう大丈夫って、思ってた。

心配ないって、思ってた。

でもそれは、ただの願望だったんだ。


かけるは突然走り出した。

「ちょっと 、かける!?」

鉄の扉を勢いよく蹴り飛ばし、3人を残して何処かへ消えてしまった。


崩れ落ちるケイジに、ココは尋ねた。

「あの!なにがあったんですか!?ケイジさん!」

ケイジはゆっくりと顔をあげた。目の下にはクマができている。

「あなたは…?」

「ココです!かけると一緒に旅をしているんです。 何があったか教えて下さい!」

「そうなんだ。かけるくんと…ね。 すみません、お恥ずかしいところを…」

ケイジは無理やり笑顔を作って見せた。

「実は…僕の姉…かけるくんにとっては母親のようなものでしょうか… 彼女の病が最近悪化しまして…」

「…え!?」

「かけるの おかあさん…」

2人に緊張が走る。そんな話、かけるからは一言も聞いていなかったからだ。

「でも…悪化って…」

「…はい。姉さんが病におかされたのは…2年前くらいです。」

その数字に、ココは聞き覚えがあった。

「それってまさか…」

「病を治すために、とにかくお金が必要でした。でも、僕たちに大金が払えるわけがなかったんです。」


「ー 俺はな、金が必要だったんだ。…俺はとにかく人を騙しまくって、金を手に入れなくちゃならなかった。それで ー」


あの時…かけるはどんな顔をしていたっけ。


「そしたらかけるくんは、何も言わずに出て行って… その3日後、大金を抱えて…帰ってきたんです。」


なぜだろう。思い出せない。










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