eclipse of the moon
1年後
上空には青空が広がっている。
巨大な交差点を、スーツに身を包んだ人々が忙しなく行き交っている。近くのビルには、ニュースキャスターだろうか、薄い化粧を施した女性が何やら話している。
王宮が焼き払われて1年。街は劇的に変わった。賭博は法律で禁止され、それを扱っていた店は全て商店やビルに姿を変えた。 政策の責任者はアレク。犬の姿をした元メガロポリスだ。彼は今もベッドタウンの改革に尽力しているが、全てを決める権力は持っていない。サトリとは異なり、民主主義の体制を採用したのだ。
1年前、全焼した王宮内部を、当時のポリス達が必死に捜索した。しかし、中から焼死体が見つかることはなく、行方も分からないまま選挙は幕を閉じた。一応選挙の勝者は決まっていたものの、当人がいないのではどうすることもできなかったのだ。結局、多くのポリスの推薦で責任者がアレクに決まり、今に至っている。
全てのゲームは、終わりを迎えたのだ。
…退屈だなあ…
ベッドタウンから遠く離れた地。
…今日は何しようかなあ…
少女が1人、もの思いにふけっていた。
…1人じゃんけんも、1人鬼ごっこも、1人相撲も…もう飽きたしなあ…
そっけない部屋には、大きなロッキングチェアが寂しく揺れていた。
……また…皆と一緒に…
長い黒髪の少女の名はマリ。1年前の騒動を引き起こしたともいえる、月光刀の力をもつ少女だ。
「ココちゃん…かける… どこにいるの?」
かけるとココは、この1年間行方不明となっていた。焼死体こそ見つからなかったものの、あの時死んだのではないかという噂が、あちらこちらで言われるようになった。
マリは彼らが生きていると信じていた。信じることで自分を保っていたのだ。しかし時は流れ、1年が過ぎてしまった。
彼女は疲れていた。
いつの間にか目には涙が溜まっていた。だが、泣き声をあげることはなく、ただ呆然と床を見ていた。
もう、やめてしまおうか。
どうせ、わたしがいなくなって悲しむ人はいないんだ。
かけるたちだってきっともう…
「だから言ったじゃねえか!」
突然、外から声が聞こえた。
「はあ!?迷子になってたのはあんたでしょ!!」
男性と女性の口喧嘩だろうか。
「嘘でしょ!?確実にお前が迷子だろ!お前逆方向の電車に乗ってったじゃねえか!」
「うっ…違うのよ!あれは!とにかく!迷子はあんたよ!」
「んな無茶苦茶な…」
2人は、マリのいる家に歩いてきた。その声を聞いて、マリは吸い込まれるように玄関へ向かった。
「うわあ!久しぶりだわ!この家!おじさんとよく遊んだのよ!」
その女性は、ドアに手をかけた。
「さ、入ろう!かける!」
ガラリとスライド式のドアが開いた。
マリは彼らを見て、涙を流した。
白くてくせ毛がかった髪の毛に、右手にリンゴ飴をもっている少年。真紅でさらさらとした髪の少女。 かけるとココだった。
久しぶりの再開だったが、マリは動けなかった。
かけるとココちゃんは、私を知らない。
わたしは、2人の記憶を消したんだ。
マリは拳を握った。
避けられない運命が、マリに重くのしかかった。
マリがそそくさとその場を退こうとした時だった。
「マリちゃん!やっと見つけた!」
温かい言葉が、マリを包んだ。
「無事で本当に良かったよ。」
マリの目からとめどなく涙が溢れる。
振り向くと、そこにいたのは紛れもなくいつもの2人だった。
「待たせて悪かったな、マリ。」
かけるは軽く微笑んで言った。
マリの目から涙は止まることはなかった。マリは震える声で言った。
「…おかえり…。かける、…ココちゃん…!!」
マリはそう言って、ニッコリと笑ってみせた。
まず最初に、読んでいただきありがとうごさいます。
「ペテンに賭ける!」はこれで完結になります。
セリフを直したり地の文を増やしたりはすると思いますが、ストーリーはお終いです。
良かったら感想等かいていただけると非常にありがたいです。




