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シトリヒメの赤い糸と、眼鏡のお守り人形  作者: 依馬 亜連
おまけ

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32/39

番外編2 銀之介 対 右近

 拍手お礼小話の加筆修正版です。

 銀之介の心境等々が、無駄に付け加えられています。

 時期としては、7話と8話の間辺りかと思われます。

じゃーん(ターダ)! こちらが右京さんなるよ!」

 夜半。鈴緒は居間のテレビにゲーム機『ティン・トイ・ボックス』を接続し、銀之介へ愛用キャラクターの右近を紹介する。

 きらめく笑みの彼女と比べ、銀之介はむっつりと渋面だ。

 鈴緒によると、彼と右近は「似ている」とのことであったが、

「こいつ、とんでもなく感じが悪いじゃないですか」

銀之介は心外そうに首を振った。


 短髪に眼鏡という点は、似ていると認めても良かろう。

「何だか癪に障る人柄です。言葉に棘があるというか」

「それは仕方ない。クールガイな、左近さんの相棒なのだ」

「彼は、クールをはき違えていますよ」

「銀之介さんは言えた身分か?」

「えっ」

 思わず目を剥いた銀之介の隣に座り、鈴緒は淡々とコントーローラを操る。

 なお左近とは、この「ファイターズ・クロニクル」の主人公だ。こちらは眉目秀麗で逞しい、王道的外見である。

 長身の右近は、画面を縦横無尽に疾走し、対戦相手の半裸男を翻弄する。鈴緒によると、相手の防御を潜り抜ける「めくり」という技術らしい。

 そして雷光を纏った足から必殺技を繰り出し、悠々と勝利をもぎ取った。

『バカの一つ覚えか、クソが』

 倒れた半裸男を一瞥し、このような罵倒を浴びせていた。しかもカメラ目線で。銀之介が顔をしかめるのも、無理はない。

「でも、お年よりや女の子には、優しい言葉使いですよ」

「どんな言葉です?」

 ペリドットの瞳を輝かせる鈴緒に、銀之介も何とか笑顔で続きを促す。

 いつもこんな表情を浮かべてくれればいいのだが、と頭の片隅で考えながら。


「『年寄りは公民館で囲碁でも打ってな』や、『脂肪袋の代わりに、胸板を作って出直せ』です」

「ちっとも優しくないです。とんでもない根性悪ですよ」

「でもクール──」

「ご先祖様や金次郎さんに誓って言いますが、彼はクールではありません。こいつはただの、毒吐きナルシストです。こんな男にだまされないで下さいよ」

 恍惚とのけぞった勝利ポーズも、銀之介の不満を煽っていた。

 加えて、服装もいただけない。真っ白なロングコートを羽織っているのだ。こんな実用性に乏しい上着を、銀之介は生まれてこの方着た経験がない。また、着たいとも思わない。

「俺がこんな格好をして歩いていたら、ヤクザに間違えられますよ」

 散々右近を貶められて落ち込んでいた鈴緒も、途端にぱぁっと明るくなる。

大丈夫(ノー・プロブレム)! 右近さんもヤクザよ!」

「オゥ……」

 思わず、鈴緒から伝染した間投詞を、口ずさんでしまった。


「お口悪いけどね、右近さん、とてもお友達や家族を大事にする。そこも、銀之介さんに似てるよ。優しいところ」

 最終ボスである巨人を倒し、鈴緒がポツリと言った。

 まじまじと彼女を見下ろせば、ミルク色の頬を薄っすらと染め、はにかんでいる。


 照れくさそうな顔は、小さな頃からちっとも変わらない。

 あの頃も、目が合えばよく笑っていたな、と思い返せば、ついつい顔がやに下がる。

 上機嫌が表へ出る前に、表情を取り繕った。

「いずれにせよ、似ていることは確定というわけですか。でも、長所もあって何よりです」

 などと呑気にすましていれば、ロックな音楽と共に画面が切り替わる。

 右近のエンディングだ。3Dグラフィックスの格闘パートから一変し、セル画調のアニメである。

 ヤクザの若頭らしい右近は、薄暗い事務所で彼を待つ母に、帰還の挨拶をしていた。息子の無事を喜ぶ母へ、右近はニヤリと笑う。

『長生きしろよ、クソバアア』

「毒蝮三太夫ですか、こいつは」

 鈴緒が好いていようが、関係ない。世間的には、右近はいわゆる「イロモノ」に属していた。

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