戦い
俺は今、人生で一番一生懸命に生きようとしているのかもしれない。五百メートル後方にはミノタウロスが迫っている。全力疾走でなんとか振り切ろうとしたが中々にしつこい。重蔵さん達が戦っている最中から、どうやったら俺なりにあのミノタウロスの排除、或いは逃走出来るか考えていたが、複数ある考えの内の逃走はまず無理と判断した。走る速さはほぼ同じ、もしミノタウロスが完全な状態だったら、今頃俺の命は無かったかもしれない。
俺は帰り道が判らなくなるのを覚悟の上である場所を探して走っている。ある程度目星は付けているが、俺は岩が沢山ある崖下の方を目指して走る。
五分後…、俺を追うミノタウロスの数が増えやがった。合計五匹が鎧を着たミノタウロスを先頭に俺目指して追い掛けてくる。
「ちくしょう、俺が何をしたっていうんだよ」
ミノタウロスに止めを刺したの俺でした、そうでした。
悪態を吐きつつ、なんとか目的地の崖下まで到着する。思った通り地面が硬く岩だらけなので、此処ならワームの心配も無いから思い切り戦える。背後が崖だから、守りやすいけど逃げ辛い。
俺は岩の陰に隠れて様子を窺うと、ミノタウロスが固まって此方に向って来ている。
固まっているなら好都合だな。俺は対戦車ロケット砲を両肩に一つずつ召喚して狙いを定める。距離二百五十メートル、相手に攻撃手段が無いから、落ち付いて照準を合わせられる。
「発射」
放たれたロケットが一直線にミノタウロスの集団に迫る。そして…爆発
普通のミノタウロスが二匹身体がバラバラになって吹き飛んだが鎧を着たミノタウロスはほぼ無傷、バケモノか。
鎧を着たミノタウロスが、仲間を殺された怒りで咆哮を上げる。ここで俺は新しい召喚術の方法を試す。
ミノタウロスの足元に作動状態の地雷を召喚する。しかも召喚した地雷は地面の下に隠れている。
魔物の体内に異物を召喚して倒せないかと試したが、結果は失敗、だが無機物や死んだ後なら魔物の体内にでも召喚可能な事が判明、更に手元だけでなく、目の見える範囲ならばどの場所にでも召喚出来る事が判った。
地雷を踏んで爆発の衝撃で足を損傷し倒れたミノタウロス達に、仕掛けられ地雷が身体に触れて更に爆発、残りは鎧を着たミノタウロスのみとなった。
平然と立ち上がり怒りに燃える鎧ミノタウロス。
「これでもダメなのかよ……」
今度は対戦車ライフルを召喚して狙いを定める。対戦車ライフルをぶっ放す。反動が凄いが、強化された身体には全然問題は無い。立ったままでも撃てる。
カ――ンと甲高い音と共に鎧に弾かれ、衝撃で鎧ミノタウロスの身体が揺れる。
「一体何なのあの鎧、頑丈にも限度があるだろ」
俺はミノタウロスの着ている鎧を召喚する。鎧が本来の状態ならば鎧の機能で不可能だが、今はその機能は使えない。鎧ミノタウロスの鎧が消え、俺の手元に魔法陣が浮かび、その中から灰色の鎧が現れる。ミノタウロスの方を見ると、鎧が無くなって何が起こったのか判らないのか、首を回して辺りを見ている。
俺は対戦車ライフルの引き金を引いた……
十分後、二十発の弾丸を受けて漸くミノタウロスは沈黙した。ミノタウロスが死んだ途端、外から身体の中に今迄に感じた事の無い程の膨大な力が流れ込み、自分の身体を作り替えて行くのを感じる。
ミノタウロスから大剣、鎧と同じ材質で作られている膝まで高さのある靴と肘まで覆う籠手と変形して顔全体を覆える兜と魔石を回収、人間は死んだらゾンビになると知っているが、魔物もゾンビになるのか判らないから取り合えずゾンビにならない様に処理をする。その経過で肉も少し回収する。特別なミノタウロス肉だから食べたらパワーアップするかもしれないし。
空が暗くなり始め、今日の内に帰るのを断念し、明るい内に安全に過ごせる場所を探す。崖から三メートルの高さに穴を発見、よじ登って確かめるとかなり奥行きがある。まるで洞窟だが誰かが住んでいる痕跡は見当たらない。一日の宿には十分だ。
回収した荷物を洞窟まで召喚する。鎧一式と肉と魔石五個が現れる。さっきまで気付かなかったが、鎧が俺の魔力を吸っている気がする。籠手を手に持つと、籠手が縮んで俺の腕の大きさになる。付けようとしたが籠手が獣臭い、何かヤダ。
大き目のタライとスポンジを召喚して、タライの中に洗剤とぬるま湯を召喚して入れ鎧一式を洗う。お湯が直ぐに汚れるので何回も入れ替える。手間を掛けたお陰か傷の無い鎧一式は、新品同様に綺麗になった。後はタオルで拭いて乾かすだけだ。念のために消臭スプレーを吹きかけておこう。
次に肉を食べる準備だ。野外用のガスコンロと鍋を召喚してカレールーの素と野菜、油、ペットボトル入りの水を召喚する。ミノタウロスの肉と野菜を細かく切って鍋で炒めてカレーを作る。味が落ち着くまでタライにお湯を入れて風呂に入ろう。
風呂に入った後は新しい下着を召喚して着替えて、タライの残り湯で脱いだ下着を洗って、物干し台を召喚して干しておく。ここは風通しが良いから直ぐに乾くだろう。
皿に盛られたバターライスを召喚してその上に適温に温まったカレールーをたっぷりかける。
「いただきます」
肉の入ったカレーを一口、少ししか煮込んでないのに口の中でお肉がとろける。しまった、付け合わせのらっきょう召喚するのを忘れた。
「ミノタウロスの肉がこんなに美味いとは…、神のお気に入りのミノタウロスだからか?」
ちょっと待てよ、お気に入りの魔物を倒されて、神様怒ってないかな。大丈夫だよね、重蔵さんも殺そうとしたし……天罰来ないよね。
…………神様……、これって天罰ですか……
もう一か月も雨が止みません。
そんなに広くない洞窟の中も探検し尽くしました。ついでに改造しまくりました。運動不足と食べ過ぎでお腹に贅肉が付いてきました。
俺は洞窟を改造して作った部屋の一つにベッドを召喚して、寝転びながらポテトチップを食べてます。
その他に風呂場、台所、居間、トイレ、倉庫、隠し部屋等など結構気合を入れて作りました。トイレなどの排水口は洞窟の外までの掘る土を召喚術で召喚して作りました。イメージが結構大変でした。照明は洞窟の天井に日の光を召喚して一日に三時間位洞窟の中を明るくしています。残りは、日の光が召喚された時にソーラーパネルで蓄えた電気とバッテリーで洞窟の中を明るく照らしている。この経験で色々と召喚術の使い方にも広がりを感じる事が出来た。
その応用で元の世界に戻る可能性が生まれた。何と魔法陣を通して俺の元の世界のアパートの部屋に繋げる事に成功した。しかし魔法陣の大きさは今現在の実力では人の頭程度、人が通るには小さ過ぎる。俺が猫だったら帰れたのに…、
携帯の電源を入れたら情報が更新されてた。あの後どうなったか調べたら、結構な騒ぎになっていた。何故かコンビニと周辺の監視カメラの情報が壊れていて使えないらしく、行方不明者の人数は十二人になっていた。あれ?確か行方不明者って十三人だよね。詳しく調べてみたら……、俺の名前が有りませんでした……、ぼっちか、ぼっちがいけないのか、そんなにぼっちが悪いのか。
「会社のみんな、少しは心配してくれよぉぉぉ」




