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神の遊戯  作者: 衆人
第1章
7/21

勝利

「らあああああああ!」

ガギィィィィン

未来が持つ砂鉄の剣が音をたてて弾かれる。

「未来!下がれ!」

俺が指示を飛ばす。

未来が回避態勢に入った瞬間、

ジャキン!

銃口が未来の身体に向けられる。

「未来ちゃん!」

風見が未来をかばい、ベクトルを操作し、防御する。

こんな一進一退の攻防をもう一時間も続けている。全員の顔に疲労の色が見られ、かくいう俺もかなり疲れている。

くそっ、ここまで強いとは思わなかった。

俺たちがここまで苦戦しているのは理由がある。

1つは、相手の圧倒的な火力。

様々な武器や、大砲なんかを瞬時に生み出し、それを扱うのだ。

2つ目は、相手の防御力だ。

どう感知してるのか知らんが、こちらの攻撃に対して完璧に盾を生成するのだ。

以上の点から、さっきから一切ダメージを与えられない。

どうにかしてあの盾を壊せないだろうか。

俺は身体を金属に変え、考える。

「ちょっと!なに一人だけ座ってんのよ!」

「うるせえ!黙ってろ!」

単純な破壊力ではあの盾は壊せない。

どうすればいい・・・・・・・・・・・あ。

思いついた。

「未来!アイツに電撃を浴びせろ!盾が赤熱するまで!」

「うぇ!?ま、まあいいけど」

未来の髪が青く輝き出す。

実験都市の能力者は、個人の気に入った技を持っていることが多い。

自分で名前をつけて、その技を『僕の考えた必殺技』として、使用するのだ。

中二臭い?なにそれおいしいの?

今から未来が使うのもその『僕の考えた必殺技』だ。

「らあああああああ!」

さらに輝きが増す。

雷撃滝(カスカータ・トゥオーノ)!」

ズドドドドドドド!

文字通り滝のような雷撃が能力魔獣(スキルビースト)を襲う。

バシャアアアアアっ!

案の定盾で防がれる。だが計画通りだ。

強力な攻撃を受けると、それ以外に一切注意を向けなくなるのは、一時間の戦闘の中でわかっていたことだ。

「くああああああっ!」

なおも雷撃は続く。

そのうち、盾が赤く染まってきた。よし、赤熱してる!

「未来!雷撃をやめろ!明良!おもいっきり盾を冷やせ!」

「りょ~かい」

いつもの少し抜けた声で明良が返事をする。

「はああああああっ!」

明良の周りに水が渦を巻く。

そして、

薔薇吹雪(ローゼ・シュネーシュトゥルム)!」

水が飛沫となり、それが凍ってあたかも薔薇の花びらのようになった。

「はあっ!」

一斉に花びらが飛ぶ。

そして、盾へ無数の花びらが舞い落ちる。

とどめとばかりに明良が大量の水を盾へ流し込む。

ジワアアアアアっ!

耳をつんざくような凄まじい爆音が響く。

カンのいい人は俺が何をしたいかわかったはずだ。

ビキィッ!

盾が音をたてて割れた。

物質は、温めると熱膨張し、体積が増す。

それを急激に冷やすと体積が戻ろうとする反動で、物質が割れてしまうのだ。

この時を待っていた。

「風見ィ!」

「おう!」

風見がバレーのレシーブのようなポーズをとる。

俺は風見に向かって走り、風見の手に足をかける。

「うらぁ!」

風見がベクトル操作で俺を高く打ち上げる。

俺は空中でキックの態勢をとり、身体を金属に変えた。

ギュオッ

俺の後ろに風見が跳ぶ。

そして、これまたバレーのスパイクの態勢をとり、

「うおおおおおおおっ!」

俺の身体をおもいっきり叩いた。

超音速旅客機もびっくりな速さで俺がキックを放つ。

能力魔獣(スキルビースト)が慌てて盾を構えるが、割れた盾では意味がない。

パン!

俺のキックが能力魔獣(スキルビースト)の核を正確に貫いた。

身体を元に戻し、能力魔獣(スキルビースト)の破片を身体から剥がす。

そして、

「っしゃあああああ!」

勝利の雄叫びをあげる。

むこうから仲間が駆け寄ってくる。

よし、

「帰るぞー」

「「「違うだろおおおおおお!!!」」」

は?何を言ってるんだコイツらは。

訳がわからないよ。

「そ、そうじゃなくてさ~」

「もっと他にやることあるだろ!」

「えっと、勝利の余韻を噛み締めるとか、いろいろあるじゃない!」

はあ、面倒くさ。

「じゃああれか?」

と言って未来の耳元で囁く。

「俺とハイタッチしたりどさくさに紛れて抱き締めたりとかしたかったのか?」

「なっ・・・・そっ・・・ばっ・・・!」

「お前もだ、明良」

「ふぇ?」

明良に近づき、また耳元で囁く。

「勝利の余韻を噛み締めるとかいいつつ、俺と抱き合ったりキスしたりしたかったんだろ?」

「ッ!はわわ・・・あ・・・えと・・・」

ふたりとも顔を真っ赤にして照れている。

絶景かな絶景かな。

ビュオッ

俺の眼前に足が現れる。

「とっとと死ねぇ!このリア充が!」

「悔しかったら彼女の一人くらい作ってみやがれ」

ふと、俺は思うことがあった。

この騒ぎのなかに、アイツもいたらいいのに、と

「もしかして、あの子のこと、思い出してるのか?」

風見が攻撃をやめ、こう聞いてきた。

「ああ、まあな」

《あーまた負けちゃった。ほんと強いよね慎ちゃん》

《やった!また同じクラスだね!嬉しい!》

《ずっと、一緒にいようね。好きだよ、慎ちゃん》

今はもう失われた、とある少女との初恋の思い出。

「どこ行っちまったんだよ、ヒメ」

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