実験都市
趣味で始めた小説です。
気軽に見てみて下さい。
「死ね!慎二!」
「 甘えよ」
ガシィッ
やれやれ、このやり取りは何百回目だろう
そろそろ俺にはかなわないことがわかりそうな物だが
襲撃者は後ろへ跳び、俺から距離を取った 。
「はあああっ!」
今度は某国民的等身大ヒーローのようなキックを
繰り出した。
俺はそれを回避し、襲撃者が着地したところで
顎に蹴りを入れた。
「がふっ」
襲撃者は揉んどりうって倒れた。
「痛いわね!よりによって顎を蹴るなんて!
レディの顔を蹴るなんてサイッテー!」
「じゃあ次は腹蹴ってやる」
「こんの野郎ー!焦がしてやる!」
バチバチバチッと襲撃者の手に電光が走る。
「くらえ!」
極太のビームが俺に向かってくる。
無駄なのに。
ビームが俺に直撃する。が、俺にダメージは無い。
『鋼鉄』
この俺こと神代慎二が持つ超能力の名称だ。
全身、もしくは任意の身体の部位をオリハルコン並の強さの合金に変えることができる。
金属なので、電気を通しやすい。
その性質を利用して、俺は自身の身体をアース代わりにしてダメージを回避している。
やがて、ビームはだんだん弱まっていき、あとには疲れてへたりこんだ襲撃者、天野未来の姿があった。
コイツの能力は『電撃』
電気、磁場、その他諸々を操る能力だ。
応用性が極めて高く、実験都市最強の能力と言われている。が、俺に負け続けている。
「は~い、未来ちゃんの負けで394敗目~」
今審判をしていたやつは、流田明良。
男のような名前だが、生物学的には女性である。
操る能力は『激流』
水を操る能力で、温度も操ることができるので、氷や、水蒸気も操ることができる。
まあ、何だ。いわゆるチートだ。
「いやぁ~未来ちゃんも諦めないねぇ~」
「当然よ!こんなヤツにずっと負けっぱなしなん て嫌だもん!」
面白い。その度胸買いだ。
「おう、いいぜ。かかってこい」
「うおおおおおお!」
スポ根アニメのような叫び声と共に未来が突進してくる。
ガッ
未来がつまずいた。
嫌な予感。
ドサッと、倒れる音が公園に響いた。
「いてて・・・ん?」
俺が自身の身体にしがみついているものを見ると
顔を真っ赤にした未来がいた。
「ぴゃああああああ!」
不思議な悲鳴を上げて飛び退く未来。
「ばっ馬鹿!変態!クズ!カス!死ね!」
ひどい言われようだ。
こういう状況になると、いつもこんな感じの反応を示す。
おそらく、俺に惚れているのであろう。
もっと攻めてみよう。
「そんなウブな反応してんじゃねーよ。
ハニー」
「ふぇ!?は、ハニーなんてそんにゃ・・・
私達まだそんな関係じゃ・・・」
顔を真っ赤にしてもじもじしながらうつむく未来。
なるほど、面白い。
「いや~お前の反応おもしれぇな~」
「なっ!?私の純情を弄んだの!?
早く死んじまえ!」
まだ顔が赤い未来が叫ぶ。
ドキドキで壊れそうだな。
ひし、と、後ろから抱きしめられた。
「慎二君の、ばか」
明良だった。
お前にフラグを建てた記憶は無いが。
「死にやがれぇぇぇぇ!」
弾丸のような速さで小石が飛んできた。
運良く避けることができた。
こんなことができるのは・・・
「お前か、風見」
「何なんだお前!そんな美少女に抱きしめてもら
えてる上に未来ちゃんとイチャイチャしてんじゃねーよ!死ね!爆発しろ!」
「お前な、そうやってがっつくのが駄目なんだよ。モテたいなら女を断て。」
「無理だよ!アホか!」
この女好きは俺の幼なじみの風見哲也。
能力が『加速』であるため、皆にパシリ扱いされている不憫なヤツだ。
ちなみに加速は物体のベクトルを大きくして物体を加速させる能力だ。
「何で僕にはフラグが建たないのにお前にばっかフラグが建つんだ!僕のほうが顔はいいのに!」
もうほっとこう。面倒臭い。
♪~♪
どこからか美しいモルダウ川を感じさせるメロディが流れてくる。
あ、俺の携帯か。
「アンタ、その着メロのセンスどうにかしなさいよ」
何を言っているんだ?この馬鹿は。
「おっと上司からか。
はい俺ー。はい・・・は?そんなん別の科に回してください。俺らの管轄じゃ無いッスよ。
は?全員非番?アホッスかアンタら。
はあ、やりますよ、やりゃいいんでしょ。
じゃあこれ終わったら非番申請通して下さい。
はい、はい、じゃ終わり次第連絡します。」
携帯をスリープモードにする。
「大体分かるけど、何て?」
「市街地で暴れてるヤツの拘束だってよ。」
「「「ええ~!?」」」
「これ終わったら非番だから頑張れよ。」
「はあ・・・で?敵の詳細は?」
「えっと・・・最近能力に目覚めた新米。
能力は『爆発』だな。」
「うわ・・・簡単過ぎ・・・」
「アンタが別の科に回せって言ってた意味がわかったわ」
「これで非番がもらえるなんてラッキーだね~」
コイツらがここまでリラックスしているのには訳がある。
俺たちはエリート部隊だからだ。
「さっさと終わらせて遊ぼうぜ」
「「「おー」」」