表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星のひかり  作者: 五十鈴スミレ
本編
80/101

(偽)七十七幕 ここが勝負どころ

完結です!


……という、エイプリルフール跡地となります(笑)

こちらは偽物の七十七幕です。

普通に本編だけ楽しみたい、本編の雰囲気を壊したくない、という方は次の本物の七十七幕へとお飛びください。

お遊びもバッチコーイ! という方だけそのままどうぞ。



 ガーデンパーティーが終わって、人のいなくなったシュア家の庭。

 かたむき始めた日の光を浴びた草木は、キラキラと輝いているように見える。

 きれいだな、と素直に称賛が浮かんでくる。

 四季折々の花々が計算され尽くした配置で咲き誇り、花を引き立てるように生いしげる緑が目に優しい。

 わたしの大好きな、誇りにすら思う、我が家の庭。

 ぼんやりと眺めているだけで、心が満たされていくように感じる。


 もっとも、そう感じるのが庭のおかげだけじゃないことも、わたしはもう知っている。

 わたしの隣には今、ジルがいる。

 ガーデンパーティーが終わっても帰らなかった、お客さま。

 話がしたいと言ったのは彼のほうなのに、一向に口を開こうとしない。

 だから二人でこうして、ベンチに座って庭を眺めているわけなんだけど。

 一緒にいられるだけで、こんなに心が浮き立つだなんて、少し前だったら想像もできなかった。

 庭がきれいに見えるのは、ジルが隣にいるからでもあるんだって、認めざるをえない。


 気持ちを落ち着けるように、わたしは小さく息をつく。

 ジルはわたしに話があると言った。

 けれど二人きりになってからも、ジルは話し出そうとはしない。

 それだけ話しにくいことなんだろうか。


 一つ、思い至ることがないわけじゃなかった。

 ちゃんと話すから、もう少し待っていて、と以前言われたことがある。

 もしそれを今ここで、話すつもりなのだとしたら。

 そしてその内容が、わたしの予想しているものなのだとしたら。

 わたしから話を振ってあげたほうがいいのかもしれない。


「もうすぐジルの誕生日ですね」


 まずは遠回しに、とわたしは話題を選ぶ。

 ジルの誕生日まであと二週間もない。

 庭に向けられていた視線がこちらを向き、ジルは苦笑を浮かべた。


「エステル、名前」

「……ジルベルト、の」


 やっぱり、いまだに慣れない。

 二人きりのときは、といつも思っているんだけれど。

 十年以上も呼び続けていた呼称を変えるというのは、思っていたよりも難しかった。


「そうだね、祝ってくれる?」


 話を戻したジルは、そう聞いてくる。

 その言い方だとわたしがいつも祝ってないみたいだ。

 毎年、誕生日当日やその前後の日に、おめでとうと言っている。

 何か贈りものをしたことはほとんどないけれど、それは別に不義理でもなんでもない普通のことだ。


「毎年ちゃんと祝ってるじゃないですか」

「今年は、去年までとは違うからね」


 くすりとジルは微笑んで、わたしの髪を一房手に取った。

 その髪に軽く口づけられて、わたしは出そうになった悲鳴を飲み込む。

 何が去年までと違うのか、わざとジルは行為で示したんだろう。

 そうしてわたしが取り乱すのを見て、心底うれしそうな顔をするんだから、たちが悪い。

 これくらいのことで動揺させられてしまうことに腹が立つけど、どうにもできない。

 ジルを好きになってしまった時点で、わたしの負けなのかもしれない。


「いいですよ、わかりましたよ。たぶんジルが一番欲しいであろうものを、プレゼントします」


 やけくそ気味のわたしの言葉は、的確にジルの不意をついたらしい。

 ぽかん、とした半開きの口と見開かれた瞳。驚きすぎて時間が止まっているようだ。

 少ししてからジルは首を横に振り、ため息をつく。


「……何を言っているか、わかってる?」

「わかっているつもりですが」


 困惑した表情を浮かべているジルを、わたしは真正面から見つめる。

 今、目をそらしてしまったら、負けてしまう。

 ここが勝負どころ。

 きちんと、伝えなければいけない。


「僕の一番欲しいものは、エステルだよ?」

「はい。ちゃんと、わかっています」

「気持ちだけじゃない。エステルの全部が欲しいんだよ」

「何度も言わせないでください」


 わたしの決意を疑っているのか、ジルは言葉を重ねる。

 そんなこと、とっくの昔から知っている。

 恋愛というものは、プラトニックなままではいられない。

 特に男性はそういった欲求が強い、ということもわたしは知識として知っていた。


「まだ待ってほしいって、言っていたのに」


 たしかに、ジルを想いを通わせたそのあとに、わたしはそう言った。

 けれど……。


「気が変わることだってありますよ」


 わたしはしれっとした顔で告げる。

 とたん、ジルは説明しがたい複雑な表情をした。

 困っているような、泣き出しそうな、怒っているようにも見えなくもない。

 どこか間の抜けているその顔を、なんだかかわいいと思ってしまった。


「エステルは、先回りするのが好きだね」


 先回りなんてしたつもりはない。

 ただ、自分のしたいようにしているだけだ。

 こんなことはジル以外には言えない。

 ジル相手だから、わたしは遠慮しないで好きなようにできる。 


「……今日、僕の家に泊まる?」


 それは遠回しで、けれど明確な、誘い文句だった。

 うなずく代わりに、わたしは答えを口にした。



「嘘です」



「……え?」


 すぐには意味が飲み込めなかったのか、ジルは思わずといったふうに声を上げる。


「だから、嘘なんです、全部」


 申し訳ないな、と思いながらも、わたしは再度同じ言葉を告げる。

 だんだんと理解が追いついてきたのか、面白いくらいにジルの表情がくずれていく。

 自分の膝に肘をつき、手で顔を覆う。少し違うけれど、考える人のできあがりだ。


「……やられた。そっか、そっちでは四月一日か」


 どういった理由によって嘘をついたのか、そこまでジルは察したようだ。

 相変わらず、敏くて助かる。

 一から説明をするのは面倒だなぁと思っていたところだった。


「そうみたいですよ。期待しましたか?」

「無様なほどにね」


 ジルはそう答えて、ため息を一つ。

 これではまるで自分が悪女みたいだ。

 騙したことには違いないんだから、悪い女ではあるんだろうけれど。


「ごめんなさい。おわびと言ってはなんですが、誕生日にはちゃんとプレゼントしますから」

「楽しみにしておくよ……」


 返ってくる声にはまるっきり覇気がない。

 どうすればジルを元の調子に戻せるだろうか?



 結局それから、名前を呼んだり好きだと告げたりと、わたしはジルの機嫌を取るのに大変な思いをするのでした。







なろうさんではエイプリルフールをされてる方があまりいないからか、騙されてくださった方がけっこういらっしゃって、うれしいかぎりでした。

お遊びに付き合ってくださってありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ