まぁちゃん
目を覚ました恭助は、生徒会室へと駆ける。
そこには幼馴染のまぁちゃんがまっていた。
昔のことを思い出しながら飲むグリーンティー。
そこに鳴り響くノックの音。
乱暴に開かれたその扉の先には。
どこだここは。
目を開けるとそこには白い天井があった。
病院・・・?
いや、そんなたいそうな場所じゃない。
――――保健室だ。
どうやら自称天使に殴られた後、運び込まれたらしい。
ご丁寧にベッドに寝かされていた俺は体を起こした。
すると、一人の女子生徒の姿が。
何寝てんだよ。
今回の事件の加害者が隣で椅子に座り寝息を立てていた。
しかしよく椅子でここまで爆睡できるな。
「見ててくれた――のか?」
つっても犯人はコイツか。
殴られるまでは俺も多少テンパっててあまり気付かなかったが、
結構可愛いな、こいつ・・・。
しかし、こんな細い腕から良くあの一撃が放たれたもんだ。
でもパイプ椅子なら誰でも威力は出るか。
体力には自信があるんだが、
そりゃ、気絶しますよね。
この場合、体力よりも耐力か。
そんなことを考えてると自称天使は目を覚ました。
「ふぁ~・・・ぅあっ!」
大きく伸びをしたが目の前の俺に気付いたことで中断された。
「おはよう。」
「お・・・おはよ。」
「なにやってんだ?」
「・・・・ぁ、そっ・・・そう!あなた廊下で倒れてたのよ!おそらく階段から落ちて
頭でも打ったのね。そのことは覚えてる?」
「いや、お前に殴られたんだが。」
「なななななにいってるのよっ!」
―――しばらく沈黙。
「はぁ~・・・やっぱ無理よね。」
先に口を開いたのは自称天使だった。
「本気で成功すると思ってたのかよ。普通の人なら死んでもおかしくないぞ。」
「だってああするしか・・・。ほんとに記憶を消す魔法はあるみたいだけど、
そんな上級魔法あたし使えないし・・・。」
魔法か、そういえば俺を一時期縛っていたあの青白い光の縄、アレも魔法なのだろうか?
「なんだ。お前は魔法使いなのか?」
「天使よ。さっき言ったでしょ。」
まぁその後記憶を消されそうになったのだが、見事失敗。
「天使は魔法が使えるのか。」
「最初にあんたを縛ってたアレ、ホールドの魔法よ。」
俺の予想は当たっていたようだ。なるほど、ホールドか。どおりで動けないわけだ。
「でもアンタ、天使とか魔法とか聞いても、落ち着いてるわね。」
「まぁ似たような人を知ってるからな・・・。」
その人はいつも明るくて、優しくて、好奇心旺盛で、ちょっと憧れだった。
スポーツ万能で、頭も良くて・・・だけどちょっぴりドジな。
その人の名は片平円香。通称まぁちゃん・・・。
「あっ!」
「どうしたのよ、いきなり。」
「そうだった!まぁちゃんに呼び出されてるんだっ・・・!」
すぐさま壁の時計を探す。あった。
時刻は午後5時を回っていた。
こうしちゃいられん。
すぐさま立ち上がる。
「ちょっと、どこ行くのよ!」
「見ててくれてありがとな。じゃ!」
「ちょっとぉ・・・・頑丈なヤツ・・・って、待ちなさいよ!」
俺は保健室を飛び出した。
生徒会室はこの階段の上だったな。
しかし保健室までそれなりの距離があったが一体意識のない俺を誰が運んだのだろうか。
天使の魔法とやらか?
そんなことはどうでもいい。
俺は生徒会室への階段を駆け上がった。
生徒会室と書かれた部屋。
少し時間を消費してしまったが、放課後に来いとしか言われていないので
遅刻なんてことはない。今も放課後だしな。
気にしない。気にしない。
ドアをノックする。
コンコン
「は~い。」
中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「失礼しまーっす。」
一応の挨拶言葉を交えながらゆっくりとドアを開くと
「キョウちゃんいらっしゃーーい!まってたのよーー☆」
「おまたせ。場所が分からなくてな、時間食っちまった。」
「キョウちゃん新入生さんだから生徒会室だけじゃわからなかったわよね~。
失敗、失敗。」
まさにテヘッってな感じで自分の頭に手を当てる女子生徒こそ、俺を生徒会室に呼び出した本人、まぁちゃんこと片平円香だ。
「さぁさぁ座って座って。今お茶入れるからね。」
教室の椅子よりも少し豪華なクッションつきの木製の椅子へと座らされた俺は、辺りを見回した。
教室の半分くらいの大きさの部屋だろうか。真ん中に長机があり、その周りに椅子が置かれている。
その一つに俺が座っているわけだが、会議でもあっていたかのようなレイアウトだ。
周りには本棚やパソコンデスクが置いてある。
その中に一つ教育の場としては不似合いなものが置いてあった。
「ゲーム・・・。」
ゲーム機だ。しかも最新の。何でこんな場所に・・・。
「あらキョウちゃんゲームしたいの?」
「いや、なんでこんなところにっておもって。」
「それね、先代の生徒会長が置いていったのよ。やりたいんならやってもいいわよ~」
「いや、いいよ。」
俺は苦笑いっぽい表情で返答した。
「さぁどうぞ。」
「あぁ、ありがとう。」
差し出されたお茶からは深みのある香りが立ち上っていた。
うむ。実にうまそうなティーですな。
少し口をつけてみる。
「うん、おいしい。」
「そう、もらい物なんだけどね。よかったぁ。」
たしかにおいしい。
まぁちゃんは何をやらせてもうまい。
勉強にスポーツ、料理や裁縫、お茶を入れさせても確かな腕前。
本人を誉めると
「やーだぁ、お茶自体がおいしいのよ~。」
とか言うんだけどね。
「お茶をおいしく入れるコツとかってあるの?」
「もちろんあるわよ~。飲んでもらう人においしいって言ってもらえる様におまじないをかけるの。そしたらね、100倍くらいおいしくなっちゃうかも!」
100倍か、それはたいそうなもんだ。
しかしこのまぁちゃんの「おまじない」はシャレにならんのだな。
あれは俺がまだ小学校に上がる前だった。
俺が自転車に乗るの練習をしていた時だったか。
ペダルをこぎだすときにバランスを崩してしまう俺は、坂道なら勢いが付いて乗れるかもしれないと思い、何を思ったか滑り台のうえにせっせと自転車を引きずりあげ、
無謀な挑戦を遂行した。
その時、傍観者としてまぁちゃんがいたな。
自転車にまたがった俺は、今より宇宙に旅立つ宇宙飛行士のような心境で発射台から目標地点をみつめた。
そして―――。
ま、結果は見事失敗。
発射と同時にバランスを崩した俺は、転がりながら地面へ墜落。
青あざと鼻血という代償を背負い、痛みに耐え切れず泣きじゃくっていた。
そのときだった。
まぁちゃんが駆け寄ってきて、やさしく俺の頭を撫でて――
「いたかったね。でももう大丈夫だよ。まぁちゃんが痛いのとってあげるね。」
その瞬間、光に包まれたような気がした。
体がフワッっと軽くなり、さっきまであった痛みがうそのように消えていった。
あの時の不思議な感覚は、今でも鮮明に覚えている。
ちなみに墜落の痛みもな。
「キョウちゃん?」
ふと脳内回想から現実へと引き戻される。
「・・・は!な、何?」
「いや、なんだかね。ぼ~っと天井見てたから。」
「ちょっと昔のことを思い出してた。」
「ふぅ~ん、それって、まぁちゃんのこと?」
「そう。まぁちゃんのこと。」
「ふふ~ん。まだまぁちゃんの体、忘れられないんだぁ~。」
「ぶほっ・・・!思い出してたのはそのことじゃねぇ!!」
「またまたぁ~、またみたいのぉ~?」
「その話はやめてくれ!」
あれは事故だ。たまたま家の水道が壊れてまぁちゃんの家の風呂を借りた時に、
たまたま脱衣所に入ったところたまたま風呂から上がったまぁちゃんが出てきてですね。
たまたまですよ、ほんとに、あの時はすみませんでした。
そんなことを言っていると。
コンコン
「あら、だれかしら?」
まぁちゃんがは~いと返事をしようとした刹那、
ノックとは裏腹に乱暴にドアが開かれた。
バンッ!
「ハァハァ・・・見つけたわ!」
登場したのは・・・・あの天使だった。
なんとなーく書いてます。
途中超展開になりそうです。
うそです。わかりません。
皆様の気分を悪くさせてしまったなら素直に謝ります。
すんません。
誤字、脱字、あると思います。素人です。
ご指導いただけるとうれしいです。すんません。