表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

それって天使の感想ですよね?

作者: 上崎新一
掲載日:2026/06/02

 冴えない日常に嫌気が指していた今日このごろ。道端に財布が落ちているのが見えた。拾うのか、拾わないのか。頭のなかに刹那の思考が浮かぶ。

 すると、どうだ。天から光が差して来たかと思うと、昔幼少期に母より読み聞かせられてきた聖書の絵本に出てくるかのような、天使が降りてきた。

「拾うのは辞めなさい。盗みは悪魔のすることです。人の所業ではない。」

 頭のなかの整理がつかないまま、今度は立て続けに地面が黒い靄のような、煙のようなものを吐き出しながら、黒く染まっていった。そして、中から今度も聖書に出てくるような悪魔が出てきた。

「拾っちまおうぜ。だ〜れもこんなとこなんか見ちゃいねぇ。盗んじまえよ!」

 何なんだこれは。ベタすぎて笑いがこみ上げてきてしまう。だが、これらが俺自信の思想の反映だと思うと、少し嫌である。

 俺はそのままスルーしようと思っていたのだ。べつに、脳みその中で「盗む」を議題に思考していない。

 すると、また上から光が差してきて、今度は違う天使が降りてきた。

「無視するなんて、なんて非道徳的なんでしょう。ちゃんと拾って警察に届けなさい。」

 …ややこしいな。何だよコイツら。

 すると、なんかまた同じ方法で二体目の悪魔がでてきた。

「いや、別にわざわざ拾う必要なくないっすかw?落とした本人が、もし落としたというふうに感じたのであれば、心当たりのある所に戻って探しに来るでしょうし、わざわざ警察に届けるほうが非効率的だと思うんすよ。」

 うわっ一番めんどくせえタイプのヤツだ。

「お前らなんなんだよ…てか、天使なら天使で思考まとめとけよ。悪魔も、天使も、なんか二体目から方向性違うじゃねえか。」

 すると、最初の天使が言う。

「善の考え方は人それぞれですよ?でも、我々天使は正しいことしか言っていません。方向性が違っていても、正しいことにはかわりありません。」

 ……正論だな…。何も言い返せねぇ。

「えっと、たとえそれが善であったとしても、人に押しつけるのは善と言えるんですか?あなたが言った「善」の価値観は、「人それぞれ」だという主張なのに、「正しい事しか言っていない」って矛盾してません?wこの人にはこの人なりの自由が保障されるべきであって、善の押し付けっていかがなものかと思うのですよw」

 俺この悪魔好きだわ。てか天使でいいよこいつ。

「え、盗まないの?」

 あぁ、忘れてた。こんな悪魔もいたっけか。

「まずそもそも見つかる可能性があるのに盗むってリスクヘッジなってないっすよねwそれってバカのやることだと思うんすよw」

 悪魔同士で仲間割れしてる…。そう思っていると、二体目の天使が反論する。

「人に見られる見られないではなく、盗むという行為自体が悪と言っているのです!」

「え?悪も人それぞれっすよねw?」

 流石悪魔。腹が立つな〜。俺が天使だったら殴ってるね。

「法律で禁止されているのですから、定義的には悪でしょう?」

「………」

 言い負かされてるやん!おい!どうしたんだよ悪魔!もうちょっと粘れや!

 すると、また天から光が差してきた。

「おい、天使達!そろそろ時間ですよ?戻ってきなさい?」

 地面から黒い靄が立ち込める。

「お前らも早く戻ってこい。」

 天使と悪魔は別れも告げず、最後まで互いを睨み合ってすうっと消えていった。

 先ほどの喧騒が嘘だったかのように、急に静かになった。

 俺は、しばらく財布を見つめていた。その場から動けなかった。てか、動けない。

 俺、どうしたら良いんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ