文章力:②読者に伝わる言葉を選択する
文章力を上げるにはどうすればいいか。それもまた難しい問題です。
国語の教科書を引っ張り出して読めば、日本語力は上がるかもしれません。本をたくさん読めば、語彙は増えるかもしれません。しかし、それはかなり地味で大変な道のりです。
(別に楽をしたいというわけではありませんが、)ここでは別の視点で考えてみます。
■ 簡単な言葉を使う
小説をよく読む人ほど、脳内に上手な小説のイメージがたくさんあります。それを目標に、なんとなく「それっぽい」言葉や文体を選択していることが多いのではないでしょうか。
とくにWeb小説やライトノベルではなく、一般小説をよく読んできた場合、言い方は悪いですが堅苦しく、仰々しい表現に寄っている可能性があります。
ですが、「読者に話を伝えたい」という基本に立ち返ると、簡単で誰でも分かる言葉・表現を使ったほうがいいのではないか、という考えに至ります。
例を挙げると、
・「黄昏時」 → 「夕方」あるいは「17時」など具体的な時間
・「嚥下する」→ 「飲み込む」
・「悉く」→ 「ことごとく」
などです。これは、どちらが優れているという話ではないです。シーンの雰囲気やキャラの言葉選びの個性を考えて、前者を選んだ方がいいケースもあります。
ただ、「伝える」ということを最優先で考えた時に、後者を優先する価値は十分にあります。目的に合わせてよりシンプルな言葉選びをするというのも、ある種の「文章力」と言えます。
■ 読者の知識量を類推する
唐突ですが、一つの例を上げます。
--------------- 例 ---------------
太郎は、一枚の絵の前で足を止めた。ピカソの『ゲルニカ』だ。
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この一文は、状況を完璧に説明しています。ですが、これが正解かと言われると、そうとも言い切れません。
想定される反応は、以下のようなものです。
・ゲルニカがどんな絵なのかを知っていて、頭に絵が浮かぶ
・ゲルニカの名前は聞いたことはあるが、どんな絵なのかは知らない
・ゲルニカは知らないが、ピカソが有名な画家というは知っている
・そもそもピカソを知らない
この文は、読者の知識量によって受け取り方が変わります。そこで大事なのは、どこまでを常識の範囲内と置くか、そしてこのシーンで伝えたいことが伝わているか、です。
私のイメージでは、ピカソは9割以上の読者が分かり、ゲルニカの絵まで浮かぶのは1割程度と思います。その予想が正しいかどうかは分かりませんが、「ピカソ」は残して「ゲルニカ」は除くという判断が妥当でしょう。
そして、このシーンがたとえば「太郎が初デートで美術館に付き合わされたが、絵に興味がなく退屈している」という状況なら、絵の内容にそこまでフォーカスしないでいいことになります。
--------------- 例 ---------------
太郎は退屈を紛らわすため、一枚の絵の前で足を止め、見入っている風を装った。ピカソの何とかという絵らしいが、細かいことは太郎には分からない。
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こんな感じになりました。
ここでは「ゲルニカ」を省くという選択になりましたが、「ゲルニカ」が物語の根幹にかかわるキーワードであれば、残す選択肢も出てきます。その場合は、「ゲルニカ」がどんな絵なのかを説明で補足する(係員や、一緒にいる彼女に解説させる)ことで、読者に伝わるようにするという方向性になります。
いずれにせよ、読者の知識量を想定して、伝わりやすい表現を選択するというのも、作者の腕の見せ所です。
【今回のまとめ】
・読者に話を伝えるために、あえて簡単な言葉を使うことも視野に入れる
・読者の知識量に依存せず、本当に伝えたいことが伝わる表現を選ぶ




