キャラクター設定:③敵には敵の事情を作る
基本的に主人公というのは、共感ができて、行動に納得感があって、応援したくなる存在です。主人公の味方となるキャラも同様です。
ですが、物語には主人公の敵となるキャラだって登場します。そういったキャラは、どのように設計するのがいいのでしょうか。
■ 敵キャラとは?
「主人公と対立関係にあるキャラ」と定義します。
主人公=正義、敵=悪とする作品が普通だとは思いますが、「敵の行いにも理由があり、敵に救われている人もいる」、「主人公が実は悪だった」のような作品も多くあります。
ここでは主人公と利害が一致していないだけ、という程度の広い定義にとどめます。
■ 敵キャラに共感できるべきか?
これが難しい問題です。
作中で主人公が敵を倒すという展開にする場合、敵キャラの共感性は低い方が良いです。
共感性が低ければ「主人公が勝って嬉しい」という感情と同時に、「敵が負けてくれて嬉しい」という感情が合わさって増幅されるので、本来的にはそれが正しいです。
下手に共感できる部分を作ってしまうと、敵のはずなのに負けてほしくないという矛盾した感情が生まれてしまいます。
そのシーンのテーマが「泣き」あるいは「悲しみ」であればそれでいいかもしれません。主人公が敵の思いを汲んで、その上で打ち倒して前に進んでいく、という切なさを含んだストーリーにできます。
ですが、シーンのテーマが「勝利」や「歓喜」の場合にそれをやってしまうと、主人公が勝ったのにもやもやする、という残念な結果になります。
確実に言えるのは、
・主人公サイドより高い共感性を持たせてはならない
ということです。
■ まったく共感できないキャラ
共感性がゼロのキャラを作るのは、私の理論では不可能です。
行動の納得性を軸に考えていくので、「共感性がゼロ」=「行動に一切の納得感がない」となるので、脳内でキャラの動かしようがないです。
そのため、私の作品には同情の余地のない、完全な悪役は出てきません。その良し悪しはともかく、これは私の作風の一つです。
■ 共感性の低いキャラの作り方
性格、境遇、行動の規模といった共感性に影響する設定のうち、一部の設定を共感性を高くして、別の設定の共感性を低くすれば、理屈上は共感性の低いキャラを作ることができます。
1.性格は悪いが境遇には同情の余地があるキャラ
人身売買に加担する富豪。
しかし、その出身はスラム街で、助けてくれなかった人々への復讐が動機になっている。
2.境遇に恵まれていて悪事の規模は小さいキャラ
メイドに怒鳴り散らす、有名貴族の息子。
何不自由なく生きてきたお坊ちゃまだが、暴力を振るったりするわけではない。
3.性格は良いのに明らかにやりすぎなキャラ
正義のためと信じて、軽い罪人も含めて全員処刑してしまう王様。
「悪は裁かれるべき」、「国の秩序のため」と、考え方自体は立派。
いずれもベースは「嫌なやつ」です。その上で、何から何まで悪というわけでもないキャラ設定になるようにしています。
ここから設定の強弱を変えることで、共感性を調整することも可能です。
1なら、人身売買と言いつつ、悪事を働いた貴族を売り物にしている。そこで得た金でスラム街を整備している。などとすれば、共感性は上がります。
2なら、気に入らないことがあると殺してしまう。女性を街から攫ってくる。などとすれば、共感性は下がります。
やりすぎると作者自身の中で現実感を失って、書きづらいキャラが生まれてしまいます。自分が許せる範囲で共感性を調整していくのがいいでしょう。
【今回のまとめ】
・主人公と対立するキャラの共感性は基本は低い方が良い
・設定ごとの共感性の高低を調整して、「行動の意図は分かるが共感まではできない」キャラを作る




