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わたしたちのゆるり薬膳生活  作者: 山いい奈
1章 ゆるゆる薬膳との出会い
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第2話 ひと駅歩けば

 よし、とりあえず、お弁当を作る予定は無くなったが、お昼ごはんは時間になったら食べなければならない。


 午前中は家事をしたり動画を見て身体を休めたりして、やがてお昼の時間がやってくる。


 つくねバーグにしようと思っていた鶏ひき肉は200グラムほど。ひとりで食べるには多いので、小分けにして冷凍しておこう。千歳(ちとせ)は半分ずつをラップに包んでフリーザーバッグに入れ、冷凍庫に収めた。


 スナップえんどうもすじ取りなどの下処理をして、半分は冷凍しておこう。今度豚汁の具材にできる。2食分には少ないが、カットわかめあたりを追加したら良い。


 プチトマトは新鮮なうちに使ってしまいたい。横に4等分にカットした。半分のスナップえんどうも半分のななめ切りにしておく。


 温めたフッ素加工のフライパンにオリーブオイルを引き、ベビーほたてを並べる。ほたては大きくなればなるほどお値段が贅沢になるイメージだ。地元の回転寿司などでいただく開いたほたてでも充分おいしいが、以前旅行で行った北海道でいただいたほたての貝柱は直径5センチほどあって、肉厚でとんでも無く美味しかった。


 北海道はそういえば、魚介類のサイズがことごとく規格外だったなぁと思い出す。ほっけの開きもかなり大振りだった。全長などは千歳の顔以上あったのでは無いだろうか。


 魚介類は大きく育てば育つほど、脂乗りが良くなって美味しくなると聞いたことがある。だから北海道の魚介類は人気なのだな、とあらためて思う。


 だからか、ベビーほたては比較的手に入りやすいお値段である。養殖であるなら短期間で育つからコストもそう掛からないのだろうし、天然であれば小さな身でも無駄を出さずに済む。


 漁業の世界、常識は千歳にはあまり分からないので、あくまで想像であるのだが、そんな事情だってあるのかも知れないな、なんて思うのだ。


 ベビーほたての表面に良い焼き色が付いてきたので、白ワインを入れる。じゅうと音がし、ゆっくりとアルコールが飛んで、煮詰まっていく。甘い香りがしてきたら、それが旨味になる。


 そこにプチトマトを加える。愛用しているシリコンスプーンを使って、適度に潰しながら火を通して行く。そこにスナップえんどうを入れた。さっとかき混ぜたらお水をひたひたに入れる。


 沸いたら顆粒コンソメとお砂糖を振り入れ、ことことと煮込んで行く。その間にあまりそうな白ごはんを冷凍する。お弁当用におむすびにしようと、いつもより多めに炊いていたのだ。晩ごはんに回すにしても多いのだった。


 そうだ、晩ごはんはお外で食べても良い。焼き鳥屋さんでも行こうかな、そうしよう。というわけで、お昼に食べる分以外の白ごはんをラップで包んで、軽く粗熱を取るためにカウンタに置いたのだった。




 千歳が住んでいるマンションは、大阪メトロ御堂筋(みどうすじ)線のあびこ駅が最寄りである。あびこは商店街に飲食店やスーパー、商店などがたくさんあり、少し歩けば業務スーパーもあって、暮らしやすい街である。


 日本最古の観音寺であるあびこ観音も、このあびこにある。あびこ駅を出て、あびこ筋と呼ばれる4車線の道路を挟んで商店街とは逆側に参道がある。


 千歳のマンションは商店街側で、少し脇道に逸れたところにあった。だが駅からも近く、便利である。


 千歳はこの利便性を手放したくなくて、拓嗣(たくし)くんと話し合いをした結果、結婚後はあびこで新居を構える約束をしている。


 拓嗣くんの今のお家も大阪市である。路線は千歳と同じ御堂筋線で、駅は昭和町(しょうわちょう)。昭和町も駅前にはスーパーなどを含めいろいろなお店があって便利なのだが、やはり業務スーパーの存在は大きい。


 拓嗣くんのお勤め先は御堂筋線を始め各線の梅田(うめだ)駅が最寄りだ。路線によっては大阪梅田駅だったり大阪駅だったりするのだが、御堂筋線は梅田駅である。なので3駅分遠くなってしまう。時間にして5分ほど。御堂筋線名物の地獄の通勤ラッシュで5分追加は厳しいかも知れないが、我慢してもらうしか無い。


 あびこ駅がある御堂筋沿線は利便性が高いと人気の路線でもある。御堂筋線は梅田を中心に、箕面(みのお)市の箕面萱野(かやの)駅から(さかい)市のなかもず駅を繋いでいる。あびこ駅は大阪市の最終駅で、隣の北花田(きたはなだ)駅は堺市になる。北花田の駅前には大型ショッピングセンターであるイオンモールがあり、千歳は気候の良い季節には散歩も兼ねて買い物に行ったりしている。


 北花田のイオンモールには、西日本最大級の無印良品(むじるしりょうひん)が入っている。オープン当時は日本でいちばん大きな店舗だと話題になった。無印良品のオリジナル商品はもちろん、生鮮食品や精肉、鮮魚なども取り扱っていて、さながらスーパーである。最近はイオン系列の冷凍食品専門店(あっと)フローズンも入り、主に地元客で賑わっている。


 今日は天気も良く、暖かい。なら、と、千歳は15時ごろに外出準備をする。お洋服は草色のカットソーに黒のカーディガン、ブルーデニムのボトムを合わせた。足元は黒のスニーカーだ。


 ベージュのショルダーバッグを肩に掛けて外に出て、商店街を抜けてあびこ筋に出る。筋沿いに南下していくとやがて大和(やまと)川に差し掛かる。それを渡る吾彦(あびこ)大橋を進むと堺市に入り、筋の名前はときはま線に変わるのだ。


 あびこ筋とときはま線は府道28号線である。北上して大阪の中心部に入れば御堂筋と呼ばれ、梅田に繋がっている。この筋の下を走っているのが大阪メトロ御堂筋線なのである。


 ぽかぽかとお日さまが射し、気持ちが良い。今日は風もほとんど無かった。それでも吾彦大橋を渡るときには、川沿いだからなのか風がひゅうと舞った。


 そのまま軽い足取りで、さらに南下。するとガソリンスタンドがある交差点に差し掛かる。ここは渡っても渡らなくても良い。赤信号だったので迷うこと無く右折した。警備員さんの誘導に従って信号機の無い横断歩道を渡ると、そこはイオンモールのいちばん北側の門である。


 どのお店から攻めようか。千歳はうきうきと中に入って行った。

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