捜索開始
図書館をあとにして、僕らは避難所で一夜を明かした。
正確に言えばまだ明かす前から動き出していた。
聖山騒動に巻き込まれて行方不明となった者は合計で45人。
捜索団員は総勢28人。
化け物によってこれ以上の被害者を出さないために2つの班に分かれて行動する。
10人の囮班と18人の捜索班。
僕らは当然捜索班に加わった。
朝5時。
まずは囮班が先に出発。
5時15分。囮班からの合図を受け僕ら捜索班は一斉に聖山の中へ入って行った。
僕はまだ化け物を見たことはないが、
この山に化け物がいるのか。
普通の山に見えるが。
山麓付近に居座ると、山を下りてきた化け物に見つかる危険性があるため、まずは真っすぐ中腹を目指す。
そこからまた3人組6班に分かれて山を下りつつ捜索する。
3人班は僕とイアさんは別々になった。
協力、という約束はつまり、捜索団に参加するということだから、果たしたと思っていいだろう。
特に何事もなく、僕らは山の中腹までたどり着いた。
一旦休憩し、捜索対象を確認した後、班ごとに分かれて行動を開始する。
異世界人が発見されたケースは今のところないらしいが、そんなことは関係ない。
僕は先輩が見つかるまで探し続ける。
何年かかろうとも。
僕の班のメンバーはライオさんとグルマンさん。
2人とも四十路のおじさんだ。
だがその分経験は豊富で、実際それぞれ1人ずつ発見した実績もある。
僕は彼らのあとに続いて捜索を開始した。
「化け物たちは足跡を残さない。だから捜索対象を見つけるにはとにかく声に出して呼び続けるのが大切だ。」
二人はそう言って捜索対象者の名前を呼んだり、自分たちが捜索団員であることを叫んでいた。
僕も彼らについていろんな人の名前を呼んだ。
そうこうしているうちに、1つ目のチェックポイントまでついた。
この山は騒動中以外は普通の山であるから、その期間中にこうしてチェックポイントをいくつか設置する。
その期間中は一切化け物が湧かないかわりに、捜索対象者も姿を消す。
一度警察団員や有志が山を隅から隅まで捜索したことがあったらしいが、それでも誰も見つからなかったらしい。
つまり、聖山の周りに化け物が湧いているこの期間中だけが、行方不明者捜索のチャンスであるということ。
僕らは次のチェックポイントを目指して歩き始めた。
この山には合わせてたら36個のチェックポイントがある。
一班で6個のチェックポイントを回りながら捜索する。
しかし、
「見つかんねぇな。」
グルマンさんが言うように、もう4個目のチェックポイントだと言うのに一人も見つからない。
「それに、何だかやな感じだ。」
ライオさんは言った。
「何か、普段とは違うんですか?」
聞くと、
「あぁ、やけに静かだ。まるで…」
話している最中だったが彼は口を開けたまま黙ってしまった。
その目の向く方を見ると、
ー!!
なんだ、あれ…。
化け物、としか形容しようのない"何か"がそこにいた。
「落ち着け。俺の指示に従え。」
ライオさんは僕の前に立った。
「とりあえず、あいつに敵意があるかどうかだ。」
と言うが、あれにそんな意識が存在しているとはとても思えない。
「一歩ずつ下がれ。慌てんなよ…。」
指示に従い下がる。
化け物はさっきから動きを止めている。
こっちを見ているのか?
目があるのか?
まさに異形そのものだった。
もう一歩下がる。
…。大丈夫なのか…?
襲ってきそうな気配はない。
もう一歩…。
下がろうとした瞬間、やつは僕の視界から消えていた。
「どっかいった…?」
グルマンさんが言った。
「なんとかなったな…。」
ライオさんも警戒を解いた。
よかった…。
ほっと胸をなでおろす。
「それじゃ、捜索再開と行くか。」
ライオさんが歩き出した…。
ーそこで僕の意識は途絶えた。




