表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イデア  作者: すだちポン酢
聖山騒動
34/39

守り方

 3年という時間はあっという間に過ぎていった。

僕らはその間にもこの世界の冒険者として暮らしていた。

依頼を受けて、お金を稼ぎ、宿をいくつか転々とした。

一つの部屋に泊まれる最大限は3か月だった。

なぜなのかはよくわからない。

けれども、この世界に来て、3年は確かに経過した。

もうここからは、いつ聖山騒動が起きても不思議じゃないんだ。

その時が来たら、僕が彼女を守る。

たとえそれが先輩の意思に反していようが、関係ない。

僕は僕のために、彼女を守る。


 と、覚悟を決めたはいいものの、

その日暮らしの冒険者であるから、今日も今日とて依頼をこなす。

依頼先への移動中、

「ミヅキ君。」

後ろから突然声をかけられた。

振り向くとそこには、この旅の最初のほうに出会った商人のエウルクさんが立っていた。

「あれ、久しぶりですね。」

返事をするとエウルクさんはあたりを見回す。

先輩を探してるのかな。

「せ…姉さんなら今日は別の仕事ですよ。」

彼女は姉さんの方に用があるように見える。

が、

「いや、君だけでも構わない。ナナには明日にでも話すよ。」

そう言って彼女は僕を喫茶店へ連れ込んだ。


 なんだなんだ。

僕この後仕事なんだけど…。

「私はエウルクという名前で君たちに接していたけれど、本当はそんな名前じゃない。」

…。ほう。

「ついでに言うと商人というのも嘘だ。」

…。すごいうそつきだな。

「私はイルキュレム警察団の聖山騒動対策本部から派遣された警察官です。」

…。なるほど。

「え~と、警察の方がなんの用で?」

あ。聖山騒動対策か。

「聖山騒動対策として、私たちは異世界人をそこへ導くという任務を行っています。」

…。導かれてないけど。

「え~と、じゃあ、騒動が起きたときはお世話になります。それでは。」

まぁ何でもいい。僕のするべきことは僕が決めている。

彼女たちの助けはいらない。

「待って。お願いがあってきたんです。」

彼女は僕を呼び止めてそう言った。

「お願い?」

なんだ?

「私の兄は聖山の中に消えました。そして、私は兄にもう一度会いたい。」

なるほど。

「聖山に一緒に入りたいと?」

「そうです。」

彼女は頷いた。

なるほど。

「じゃぁ、僕からもお願いがあります。」

「なんでしょう。」

「僕は先輩を守りたい。ナナさんは僕の姉じゃなくて、前の世界の先輩です。」

彼女はそれほど驚くこともなく、答えた。

「なるほど、協力しよう。」

彼女は右手を差し出した。

僕も右手を出して、握手を交わした。

「ちなみに名前は?」

その態勢のまま聞くと彼女は上目遣いに答えた。

「イア。イア=ウルア。私の本名です。」


ーーーーーーーーーーーーーーー


 私たちは冒険者。

その日暮らしが基本。

聖山騒動のその日まで、いやその日にさえ、

私たちは依頼をこなす。

今日の仕事はパン屋の売り子。

結構接客関係に向いているのかもしれない。

どこかの街で見たような曲がりくねった道を歩く。

でももうここは世界の中心に最も近い場所。

あの街より全然治安がいい。

「ナナさん。」

聞き覚えのない女性の声がした。

振り向くと、どこかで見た気がするような気がする、女性がいた。

「エウルクだ。覚えてるかな。」

エウルク。エウルク…。

え?!

「え?!嘘?!エウルクさん?!」

二年ぶりだ。

すごい。こんな偶然あるんだ。

「少し、話があるんだ。」

そう言って、エウルクさんは私を近場の店へ連れ込んだ。


 あ、思い出した。

これ、そうだ。

「私は、兄を探しに行きたい。」

そうだったそうだった。

彼女が前の世界じゃ邪魔をしたんだ。

「じゃ、私からもお願いです。」

もうお前には邪魔させない。

私は私がしたいことをする。

「瑞樹君を、山に近づかせないでください。」

私は、彼を守る。

「…。わかりました。」

彼女は少し困ったように答えた。

瑞樹くんに先に接触してたのか。

一つ脅かしてやろう。

「お願いしますね。イアさん?」

彼女は目を見開いてこちらを見た。

私はただ笑いかけるだけで店を出た。

彼女はまだ棒立ちのままだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ