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イデア  作者: すだちポン酢
聖山騒動
33/39

エウルクの決意

 聖山騒動。

それは、この世界における最大の災厄。

私の兄は、聖山騒動時の被害者捜索に加わり、失踪した。

だから私は決意した。

この世界の中心である聖山。

そこに最も近い組織である、コロナ警察団への入団を。


 警察団への入団試験は通常面接と身体能力の試験のみが行われるが、コロナ警察団においてはそれが当てはまらない。

面接と身体能力試験に加えて学科試験が行われる。

主に問われるのは聖山の伝承について。

民俗学的な観点から科学的な観点まで網羅しなければならない。

そのために必死に勉強して、試験に合格したのは兄が消えてから5年が経ったあとだった。

私は17歳になっていた。

史上最年少合格だとか騒がれたけれど、そんなことはどうでもよかった。

聖山騒動を止める。

そのために必要なこと。

異世界人との接触と監視。

できるのであれば、聖山の内側まで異世界人とともに行きたい。

平常時の任務や訓練をこなしながら、私は異世界人の出現を今か今かと心待ちにしていた。


 異世界人の出現は決まって10年に一度起こる。

我々は異世界人が間違いなくコロナへたどり着けるように監視、護衛する必要がある。

ルールは色々と細かく定められているが、

私たちの任務は第一の接触と最終段階での接触。

つまり、私は彼らとともに聖山へ行ける可能性があるということ。

彼らの前での私はエウルク=タネス19歳。

出身地はナリボシ。

ナリボシで商人をしつつ、出稼ぎに出たところで最初の接触。

彼らには申し訳ないけれど、私は私の目的のために動く。

別に彼らがどうなったってどうでもいいのだ。


 そう思っていたのだが、二人を見たときそれは無理だとはっきりわかった。

互いに思いやるその姿。

姉弟。なのか。

そんなに似ていなかったけれど、私も兄とは全く似ていなかった。

いつも兄はだらしなくて、私がいないと何もできないような人だったのに。

あぁ、なんで。

捜索団になんか入らなければよかったのに。

そうしたら、今も彼らみたいに楽しく暮らせていたのに。


 彼らと会ったことは、私から残虐性を取り除いた。

彼らもきっと帰りたいと思っているんだ。

彼らを待つ人たちもきっといる。

聖山に入ればそれが叶うという確証はないが、それでも、送り届けなければ。

残虐性はなくなった。けれども、聖山への気持ち、覚悟はより一層強くなった。


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