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イデア  作者: すだちポン酢
ユツムギ編
15/39

捜査開始

 異世界生活6日目。

この街には『慈善の猫』とか言う集団がいるらしい。

この街で起きた3件の誘拐事件。

被害者の家にはいずれもこの集団の一員を名乗る奴が訪れていた。

あやしいだろ。

役所の前の噴水広場には掲示板がある。

毎日のニュースや住民に知らせるべき情報がここに載せられる。

探してみたが、『慈善の猫』の言葉はない。

なぜだ?

政府の方で確認が取れなかった団体ってだけで十分怪しいだろ。

それに誘拐の方だってほぼ100%絡んでる。

情報提供だけでも依頼すればいいのに。

…。

いや、そうも簡単ではないのか。

この世界のフリーター、もとい冒険者は依頼を受けてその日暮らしをしている。

情報提供を依頼したとして、正確な情報をもらえる保証はない。

それは報酬の高低に関係ない。

嘘をついて大金を得ても、小金を得ても、

どちらも冒険者には得になる。

報酬が高ければ信憑性も上がるというわけではないのだ。

かと言って安い報酬なら依頼を受ける人も減る。

でも安い金でさえ求める貧乏冒険者の提供する情報は、果たして本当に正確なのか。

金は心の余裕とも言う。

金のない、心に余裕のないやつは平気で嘘もつくだろう。

…。

なるほどな。治安維持も難しいのな。


 そうなると、さっきのイジェスさんからの10クルス。

これは結構破格なのでは?

全く信頼されていないとして、10クルス。

すごいな。

「『慈善の猫』を見ました。」

そう言っても6時7時台なら納得させられるのか。

今朝は本当、危なかったんだな。

カウンセラー団体を名乗る謎の集団。

体罰を受ける子どもたち。

家出が当たり前の家庭環境。

通報したのは親ではなく村人。

う〜ん。

あまりに早計な結論かもしれないが、

これは親もグルなのでは?

この国の体罰を認める場合は、教育上の躾の場合。

学校も一応が、金持ちの子供しか通えない。

ただの村人は学校にはいけないので教育は親が行う。

その中で言うことを聞かない、反抗するなどがあれば認めると言う。

でも世の中にはどうしようもない大人もいるものだ。

そのルールを使ってストレスのはけ口にするような大人だっている。

でも子供もただのロボットじゃない。

嫌なことからは逃げ出すし、助けてとも言える。

もっとも、3人には助けを求めたところで、助けてくれる大人なんかいなかったわけだが…。

家出をされると不安になる。

普通は安否が心配だから。

でもどうだろう。

彼らの親はその理由で不安になるだろうか。

体罰の内容や、行き過ぎだということを知られたくないから不安になる。

ならいっそ、消えてしまえばいい。

そういう思考にも行きかねないとおもうが…。

まぁ、早計だな。

会ったこともないのに、体罰をした人というだけで被害者の親たちを悪く考えすぎていた。

もし本気で調べるなら、被害者宅にはお邪魔しないとな。

…。

まぁ面倒…。

…。

そう言って逃げた大人が言った結果、彼らは誘拐されたのか…。

…。

はぁ〜。

1つため息が出る。

まぁ、お金のためにもなるし、いいか。

「ナナさん、ちょっと行きたいところがあるんですけど、いいですか。」

僕は、隣を歩く彼女へ言って覚悟を決めた。


 『ユツムギ警察団本部』

噴水広場から伸びる道のうち、屋台街へ伸びる道ではない道。

役所から出て左折して、ナリボシ方面へ伸びる道の途中にその建物はあった。

「事件捜査だね?」

ナナさんも気づいたらしく、そう言う。

「ええ。金をがっぽりゲットしちゃいましょう。」

指でお金のマークを作りながら僕も言って、

僕らは警察団の本部へと入っていった。


 「つまり、被害者一家への訪問のアポ取りを頼みたいと?」

中に入り事件の捜査協力のために被害者を尋ねたいというと、応対してくれていた男性はそう答えた。

「そうです。」

僕が答えると、男性はため息をついて答えた。

「捜査協力とは言ってもですね、お二人はただの一般人でしょ?常識の範囲内での協力を依頼しているんです。そんな踏み込んだ領域には警察団員以外入っちゃだめですよ。」

…。

「では質問内容の取り次ぎだけでもお願いできませんか?」

僕が引き下がらないことに少し驚いて男性は言った。

「そんなことをして、事件を解決できるとでも?」

それを言われちゃ困る。

「そんなこと知りませんよ。ただ単に協力しようと思ってるだけです。」

しばらく考えた後男性はため息を1つ吐いて、言った。

「分かりました。質問内容の取り次ぎには応じましょう。でも勝手に訪ねたりはしないようにしてくださいね。被害者一家も心労がたまっている。僕らでさえそう何度も訪ねられる雰囲気ではないんですから。」

…。できれば直接会いたかったが、まあいい。

僕は聞きたいことを男性へ伝え、情報交換の日時を設定し、警察団の本部をあとにした。

被害者一家に聞かずとも、既に警察団の方で得ている情報もあったので、それは教えてもらえた。

これでかなり分かりやすくなってきた。

これであとすることは…。

「ねぇ瑞樹くん。」

後ろからナナさんに呼ばれた。

いつも気づいたら後ろにいるんだよな。

横にいると思ってたのに。

「なんです?」

答えると、ナナさんは不安そうな顔をして言った。

「いいんだよね?これで。」

…。

この人も考えてはいるんだろう。色々と。

思ったより思考が似ていたのかな。

そりゃそんな顔にもなる。

「ま、解決には至るんじゃないですか。」

そうとだけ言って僕は行きたい場所へ歩き始めた。

ナナさんもその後をついてくる。

役所の前を通り過ぎ、誘拐事件のあった村。

ラデン村とドルト村へ向かった。


 道中、僕は考える。

今回の事件。

誰でも思い浮かぶのは『慈善の猫』の存在。

僕の頭の中にも当然いる。

圧倒的な怪しさのカウセリング団体。

家出の隙を狙って彼らが誘拐をしたというケース。

しかし目的が分からない。

身代金?

だったらもっと金持ちな家の子を誘拐すればいい。

あえて農村の子どもを狙う理由はない。

動機が分からなければ逮捕もできない。

『慈善の猫』だけでは解決に至らない。

が、日本の漫画文化の中で育った僕の中にはもう1人思い浮かぶ人がいる。

昨日の夜の指名手配書。

その3人目。

ベン=ダリアス。

罪状は強盗殺人と「違反研究」。

まだそうと決まったわけではないが、

この世界に生み出されたキメラの数々を見てきたからわかる。

キメラの実験には間違いなく人だって使われている。

コタ村の外。

腕の生えた魚や、普通よりも明らかに顔が人間に近い猿もいた。

繋げられる。

ベンかその後継者でもなんでもいい。

キメラ研究を影でこっそり行う奴らを

『慈善の猫』とするなら。

誘拐の動機は強くなる。

これが1つ目の可能性。

ただ…、そう都合よく行くものでもないだろう。

だから思い浮かぶ、最悪の可能性。

ナナさんもそこに至ったからさっきあんなことを聞いてきたんだろう。

この事件は間違いなく『慈善の猫』が絡んでいる。

警察団は躍起になって彼らを探す。

このユツムギの中心街で。

でもそれに意味はきっとない。

だって『慈善の猫』なんて存在しないから。

それが僕の考える2つ目の可能性。

どちらが正解か。

はたまた正解は全く別のところにあるのか。

それを知るためにも、現地へ行くことは急務だ。


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