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イデア  作者: すだちポン酢
ユツムギ編
14/39

すだちポン酢です。

最近やけに暑いですね。

朝起きるとパジャマがベチャベチャで嫌な気分になります。

そんな僕らとは反対にめちゃくちゃ寒いユツムギへ来た瑞樹くんたち。

今回は何が起きるんでしょうかね。

第14話です。お楽しみください。

 異世界生活6日目。

日本を合わせて人生17年間生きてきたけれど、

治安が人生史上最悪の街へやってきた。

大男2人の助言を信じるならあと3時間は暇だ。

どうしようか。

「11時まではここ出ない?」

ナナさんが尋ねてきた。

「ええ。そのつもりです。」

そのつもりですか〜。と言いながらナナさんは布団   

にごろりと寝転ぶ。

このまま寝るんだろうか。

まあ起きていてもやることはないし、僕も寝よう。

一度畳んだ布団を敷きなおきて横になる。

すると案外すぐに睡魔はやってきた。

自分が思っていた以上にさっきので神経を使ってい   たらしい。

体の方も肉体労働からの馬車10時間から1時間ぶっ通しで歩き続けていたわけだし。

そりゃ疲れて当然だ。

その疲労に任せて僕は眠りについた。


 気がつけば僕は夢の中にいた。

どこかで誰かと話している夢。

正確には僕は話していない。

話しているのは僕であって僕ではない。

話しているのはその時の僕。

そして、今の僕が僕。

僕の話している内容も、相手が話している内容も分からない。

無音の世界で口が動くのを見るだけの夢。

「あ、これ夢だ。」

そう気づいても覚めることはない。

何度も何度も見たことがある。

それを見るたび思い出す。

そして目を覚ませば忘れている。

何度も、覚えていよう、そう思う夢。

とてもとても大切な記憶。

でも、それがいつのものか、見当もつかない。

すごく遠い昔と言われればそう。

昨日にも今日にも思えるほど直近と言われても、そう。

 どこの記憶で、いつの記憶なのか。

その答えはきっと存在なんてしない。

目の前で流れる懐かしい最近の記憶を見ながら思う。

 この夢は、いつかの僕の記憶。

その記憶を思い出し始めると、いつも覚めてしまう。

だからなるべく、僕はその記憶を探さない。

最後まで夢を見るために。

 会話が続く。

無音の世界で、動き続ける口を見続ける。

そして、会話が終わると。

視界は白く染まる。

 ここだ。

ここで起きないようにしないと。

また、忘れる。

 これだけは忘れたくないのに…!


「―くん。瑞樹くん!」

目が覚めた。

ナナさんが僕を覗き込んでいる。

「どうしたの?うなされてたけど。」

うなされてたのか。

「いや、夢で…」 

…なんだっけ。

夢なんてそもそも見てたっけ。

「怖い夢?」

心配そうにそう問うナナさんに、僕は笑って答える。

「なんでもありません。」


 目が覚めたとき、時計はもう11時を回っていた。

一応警告された時間は過ぎたわけだ。

街を覗いてみると、確かに人通りは増えていた。

朝の8時くらいが日本で言う朝の2時くらいなんだろう。

だから今は朝の5時ぐらいの感覚か。

なるほど、夜の街だ。

でも役所は多分まだ開いていない。

もう少し時間もあると思うが、

まあ、街の探索も終わったわけではない。

僕らは店が開き始める時間になるまでその辺をブラブラすることにした。


 といっても、この屋台街のある通り以外はとても狭い路地。

人も増えたとはいえ入っていくわけには行かない。

もっと人が増えてからだ。

覗いてみると一応店もある。

が、開くのはもっとあとだろう。

この大通りに何があるのか。

それを知りつつ役所へ向かう。

着く頃には窓口も空いているだろう。

 屋台が通りの両脇にあって、さらにその外側に店や家がある。

じゃがいも料理の店、衣料品の店、診療所もある。

衣料品の店に毛布はあるだろうか。

オープンは15:00。

まだまだ先か。

 そういえば、12:30に役所集合で警察団の人と話す予定だった。

すっかり忘れていた。

 あまり代わり映えのしない屋台街を抜けると噴水のある広場に出る。

 広場からは3本の大通りが出ていて、その1本が今の屋台街。

 右折するとエウルクさんの故郷、ナリボシへ続く道へ出る。

 左折すると誘拐事件のあった村の方。

それぞれの大通りからゴチャゴチャ細い通りが生えている。

 全貌を把握するには何年もかかりそうだ。

迷子にならないようにしないと。

そう考えると、この街、犯罪にうってつけだな。

そりゃ治安も悪化する。

 そして、噴水広場の奥には荘厳な建物。

これがユツムギの役所。

 シュトレスの役所と同じで24時間空いてはいるらしいが受付は6:00に終了するらしい。

入口にちゃんと書いてあった。

さっきは見落としてしまったな。

ともあれ、役所に着いた。

 次は明日からの仕事探しだ。


 時刻は12:00。

待ち合わせまではあと30分ある。

まあ、僕らは日本人なのであと20分くらいしたら指定されたテーブルで待ち始めるんですけどね。

 さてと、どうしようか。

仕事案内板の前に立ち考える。

この治安の悪い街に長く滞在することと、

パトロールなどリスクの伴う仕事をすること。

どちらのほうが僕とナナさんにとって危険だろうか。

 リスクの伴う仕事は金払いはいい。

1つ2つ受ければナリボシへは行ける。

が、もしその仕事をしているあいだに危険があれば、それが対処できないものであれば、下手をしたら命を 落とす。

 しかしこの街に居続けることも良くない。

この治安の悪さだ。軽かろうが重かろうが、おそらく確実に、いつか犯罪に巻き込まれてしまう。

 さて、悩みどころだ。

「瑞樹くん。」

僕があれこれ考えていると、横からナナさんが肩をチョンチョンしてきた。

「仕事見っけました?」

聞くとナナさんは頷いて言った。

「あれ。」

と指さした先を見る。

『荷物の荷馬車への積み込み 報酬80クルス』

荷物の積み込み?

それだけで80クルス?

どんだけ重いんだよ。いや貴重なのか?

 ともあれこれはいい仕事だ。

荷馬車も確か馬車場にあった。

あそこでの仕事なら人も多いし怪しいことはないだろう。

念の為場所も見てみると、やっぱり馬車場。

報酬の高さはきっと積み込む荷物の貴重性だろう。

「これでいいんじゃないですかね。」

と言うとナナさんは笑って受付へ依頼書を持っていった。

 誘拐犯も多分馬車を使っている。

馬車場は村ごとに設置されている。

誘拐事件の起きた村々の馬車場からどこへ馬車が伸びているのか。

それを知れれば解決には近づくと思うけど、そんなことは多分警察団が調べてる。

 僕らも実績を上げないとお金もらえないから何かしら馬車に関することで調べをつけたい。

今日と明日でどうにかできないかな。

そんなことを考えていると、受付を終えたナナさんが帰ってきた。

 時間はまだ12:15だったが、まあいい。

日本人は時間を守るからな。

僕らは警察団との打ち合わせ?顔合わせ?

のために指定されたテーブルへ向かった。


 警察団の人は時間通りにやってきた。

その人は先に待っていた僕らを見つけると慌てて駆け寄り頭を下げた。

「お待たせしてしまったようで申し訳ない。

私はユツムギ警察団の5級警察、イジェスです。」

5級?

それは偉いのか?下っ端なのか?

そんな疑問はどうでもいいので放っておいて僕らも挨拶をする。

「はじめまして。冒険者のミヅキです。」

僕の挨拶を見てナナさんも頭を下げる。

「ナナです。ミヅキ君の姉です。」

なるほどナナさんの職業は僕の姉なのか。

「あ、どうもどうも。ミヅキさんにナナさんですね。お願いします。」

イジェスさんは椅子に座りながら言った。 

続けて、

「早速ですが、今回協力していただく誘拐事件についてお話します。」

と言い、この事件の詳細を語り始めた。

 まずこの事件が最初に発覚したのは先週のことらしい。

 グラン村の村民から一人の少女が先週から帰ってこないと通報があった。

少女の名はテテ=ソニー。

彼女は家でひどい扱いをされていたらしく、よく家出をしていたそう。

その度に村民で探すのだが、1週間経っても見つからないので通報をした。

それとほぼ時を同じくして、今度はラデン村の少年、グラン=スタントが行方不明になった。

彼もまたテテと同じでよく家出をしていた。

また3日前に同じくラデン村からトマス=ラングレーが行方不明になった。

彼は他2人と違い家出などすることはなかったが、

家ではひどい体罰を受けていたそう。

 この街、この国には教育上必要と保護者が判断した場合の体罰は許可されている。

つまり実質体罰し放題ということ。

 ここまで聞いて、なぜこれらが1つの事件として括られているのか、分からなかった。

 グラン君とトマス君のところは同じ村だし同一犯かもしれないけれど、テテちゃんを誘拐した人間まで同一とは思えない。

「あの、本当にそれ同一犯の犯行なんですか?」

と問うと、イジェスさんは答えた。

「同一犯と言うより、組織的な犯罪と見ています。」

組織的?

ロリコンショタコン同好会か。

「なぜ?」

「誘拐されるよりも前にですね。テテ=ソニーとグラン=スタント、トマス=ラングレーのもとにカウンセラーを名乗る人間が現れているんです。

そのカウンセラーはいずれにおいてもこう言いました。『私たちは慈善の猫と言う団体です。』と。

しかしそんな団体、この街にもこの国にも認められていないんです。存在するかどうかも怪しく、非合法組織、もしくは宗教団体として考えられています。」

 慈善の猫…。

変な名前。

 ん…。猫?

 今朝のことを思い返す。

あのとき、役所から出たとき、たしかあの大男は聞いた。

「お前たち、猫か?」

―!!

背筋が凍るような気持ちがした。

 もし、仮に、「猫」というのが「慈善の猫」を示していたのなら。

あの人たちが…誘拐犯…?

確かにあの巨体なら子供の誘拐くらい楽々だろう。

 もし、もし仮に、彼らの顔をみた僕らを、彼らがマークしているとしたら…?

事件捜査に協力することも、バレてしまったら…?

…。

「あの、イジェスさん…。」

「なんでしょう。」

 言っていいのか。

彼らが「慈善の猫」だったとして、

それをこの場でイジェスさんに教えて、

ナナさんは、不安にならないんだろうか。

いや、ナナさんもこの話を聞いていて、

今朝の話を思い出せば、繋がってしまうか?

横目で彼女をうかがう。

表情に変化はない。

まだ気づいていないなら…。

早くこの街を出なければ…。

そのために必要なのは金。

なら…。

「一緒にトイレ行きましょう。」

「………。は?」


 最初の反応的に無理かな〜と思ったけれど、

イジェスさんはついてきてくれた。

ナナさんを一人にするのは怖いのでナナさんにも女子トイレに入ってもらっている。

個室にはカギもあるのでまあ安心だろう。

「イジェスさん。」

用を足すフリをしながら隣で用を足す彼に声を掛ける。

「なんです。」

彼は完全に僕を頭のおかしいやつと思っている。

まあそうだよね。

初対面で真剣な話ししている時に連れションするやつだもん。

「『慈善の猫』という組織は初耳です。

でも今日、僕らは8時くらいにちょうどこの役所の前で怪しい二人組に『お前たち、猫か?』と聞かれました。」

 ここまで話して、イジェスさんは僕と同じ考えまで至ったらしい。

「なるほど。猫。それが彼らの間での仲間かどうかの確認方法なんでしょうか。」

 それは分からない。

ただ、時間的にも時期的にもその可能性は高い。

「どうでしょうね。僕らが猫に見えただけかも。」

 イジェスさんは少し考えてから言った。

「ん〜、それはないでしょう。」

 もう彼も用は済んでいるだろうがそのままの体勢でいる。

僕もまだこの体勢をキープする。

「なんでトイレで話すんです?」

当然の疑問をぶつけてきた。

「姉には聞かせたくなかったんです。不安にさせてしまうかも。」

いい弟だろう?

イジェスさんも納得するはず。

と思ったが、

「いや、弟が初対面の人急に連れションに誘うほうが不安になるでしょ。」

笑いながら彼は言った。

ド正論。

「ぐうの音も出ないッス。」

 僕らはズボンを上げてトイレの外へ出た。

イジェスさんはおもむろにポケットを弄り財布からコインを出した。

「これ、報酬。情報をありがとう。」

10クルス。

不確定とはいえ、「猫」という言葉を教えられたのは良かった。

「いえ、お役に立ててなによりです。」


 その後、ナナさんを呼んで僕らは役所の外へ出た。

「今後は『慈善の猫』にはご注意を。分かったことがあれば警察団本部へ通達をお願いします。」

イジェスさんは頭を下げて帰って行った。


 異世界生活6日目。

約5時間ぶりの伏線回収があった昼。

そして、時間は日暮れへ向かっていく。

少しずつ昨夜のような人通りが戻りつつある屋台街へ僕らはまた踏み出した。



 

僕は毎話5000字位を目安にしているのですが、少ないですかね?あまりに進まない。

調べてみると半分の2500字が読まれやすいとのこと。

それだとこの話までで28話使いますよ?

小説を書くというのは難しいですね…。

書きたい内容とどこで切るか。

そこで葛藤しながら毎話書いております。

次回は第15話。お楽しみに。

今回もご覧頂き、ありがとうございました。


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