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イデア  作者: すだちポン酢
ユツムギ編
11/39

一期一会になりますように。

異世界生活5日目。

僕たちの目的は3年以内に世界の中心、

聖山に最も近い都市、コロナへつくこと。

聖山から謎の生物が溢れ出す聖山騒動が起きたとき、

それを鎮める事が出来るのが、僕たち異世界人。

聖山の中には何があるのか、それさえ分からない。

けれども、聖山へ立ち入った異世界人が一人として帰ってこないことから、

元の世界へと帰ったのでは?

という推論も飛び交っている。

日本へ帰るため、僕達は聖山を目指し旅をする。


 初めての都市はエドクレイ。

2番目の都市がここ、シュトレス。

ここから何個の都市を超えるのか…。

そう考えるだけで鬱屈とした気分になる。

時計は朝の6時。

昨日ほどではないが、早起きだ。

隣を見る。

昨日はあられもない姿になっていたが、

さすがに今日は意識したらしい。

きっちり服のひもを締めている。

彼女は僕の先輩。

こちらに来る時に名前を忘れてしまったため、

僕、橘瑞樹の姉、橘ナナと言う名で暮らしている。

昨日僕らは3つの仕事をしてお金を稼いだ。

それと追加で最初に会ったウォズベンと言う親切な老人から貰ったお金もある。

今日はシュトレスから10時間行った先にある、

この世界3つ目の都市、ユツムギへの馬車に乗る。

異世界に来て本格的に冒険が始まるわけだ。

日本にいたときからそういうアニメはよく見ていた。

だから楽しみで目が冴えてしまったというわけだ。

馬車で寝れればいいか。

そう思いながら、洗面所へと向かった。


 時計は朝の6時半。

今日はユツムギに行くんだっけ。

体を起こして目をこする。

昨日は結局寝たの0:00過ぎだったからまだ眠い。

場所は9時出発だからまだ時間あるよね。

体制を仰向けにして、着替えをしている少年を見る。

まだ私が起きたことに気づいてない。

瑞樹くんといると、何度も何度もデジャヴを感じる。

けれど、昨日のは、びっくりしたな〜。

昨日、私は彼に、胸を見られてしまった。

彼はただ私を起こそうとしただけで、

私の寝相が悪いのが悪かったのだけれど、

恥ずかしさのあまり飛び出してしまった。

仕事をするうちに仲直りできたからよかった。

居酒屋の時も、小麦畑の時も、

やっぱり彼の背中は大きかった。

今見ても、そんなに大きい方じゃない。

165くらいかな。私とそんなに変わらない。

彼はなんだか、いろいろ考えているんだろうな、

私には全く想像もつかないことをあれこれと。

彼の言葉は自分の中にスッと入ってくるような感覚がある。国語は苦手なのに、彼の話すことは簡単に理解できる。

不思議だね、君。

見つめていると、彼はようやくこちらに気づいた。

「おはようございます。」

ズボンを締めながら言った。

見たことあるもの、見たこと無いもの、

ごちゃまぜだけど、

まだ見たことない君を、見たいと思うよ。


 先輩も目を覚まし一通り準備を済ませて、

時計は7時05分。

馬車は大体出発の30分前には待機しているので、

あと1時間半ほど。

必要なのは朝ごはんと、昼ごはんか。

あとは水とかも買っていくか。

ホントはあのおばあさんのパンをもう一度買いたいところだが、そうすると他のものが買えなくなってしまう。

如何せんあの店は時間がかかりすぎる。

安さは魅力的だが。

この世界の水は異世界系の漫画でよく見る

皮製の水袋に入っている。

持ってみると意外と重量がある。

2人で2つずつ購入して合計4つ。

予備で一応もう1個買うか。

これで合計5つ。1つにつき4クルスだから、20クルス。

今日はあまり出費を増やしたくないな。

ご飯はやはりパンかと思っていたが、

干し肉を見つけた。

結構たくさんある。

これだけあればご飯には充分か?

値段は10クルス。

2人分にしても余りそうな量だ。

「ナナさん、これ、ご飯でいいですか?」

許可が出ればかなり大きいが。

「ユツムギ着いたら美味しいの食べさせて。」

我慢してくれるのか。

さすが先輩。

干し肉を購入してこれで出費は30クルス。

時間は7時40分。

ここから直接馬車の乗車場へ行っても時間が余るな。

…そうだ。


 「あれミヅキさん?ナナさん?」

昨日お世話になったシュトレス中央図書館へ行った。

扉を開けるとアリスさんがいて、驚いたようにこちらを見ていた。

まぁ、昨日のうちにお別れの挨拶はしてたしな。

「馬車まで時間があるので、少しお話したいと思いまして。」

僕はアリスさんを心の底から尊敬している。

なんだかんだ、今まで出会ってきたどの人よりも自分の仕事にプライドを持っていて、かっこいいと思ったからだ。

彼女とは、もう少し長く話していたかったな。

ユツムギに関する話を少しして、

僕らは乗車場へ向かった。


 時計は8時30分。

『ユツムギ行き』

と書かれた看板をつり下げた馬車がやってきた。

馭者へ運賃180クルスを渡して、乗り込む。

3日ぶりの馬車だ。

前のは乗り心地良かったが、これはどうかな。

期待と不安を胸にハスハスしていたら、

同乗者が1人。

こちらも女性。

色黒で艶の濃い黒髪。

きれいな人だ。

「どうも。ユツムギへ?」

見とれていると話しかけてきた。

「はい、イルキュレムを目指していまして。」

「ホォ〜、イルキュレム。賢いんだな。」

賢い?

まぁ、イルキュレムは1番発達している国だからそりゃ賢いのか。

「そうですかね…。」

謙遜もそこそこにして、彼女について質問をぶつけてみた。

彼女の名はエウルク。

ユツムギの更に向こうの都市ナリボシの出身らしい。

ここにはある調査のために赴いていたんだとか。

その調査は国から極秘で請け負ったため言えないんだとか。

胸に何処か嫌な予感を抱えながら、

ユツムギへの旅路が始まった。


 とは言え、道中なにか面白いものがあるわけではない。ただただガタゴト揺れる箱の中にいるだけ。

せめて誰かと話せればこの退屈もどうにかなったが、

ナナさんは速攻で寝てしまったし、

エウルクさんと話すのもなぁ。

そんな事を考えながら、外へと目を向ける。

「ミヅキ、君は今何歳なんだい?」

エウルクさんが話を振ってきた。

正直意外だ。

この人とはもう何も話さず10時間が終わると思っていたから。

「16です。もうちょっとで17になります。」

こっちの世界は15で成人らしいから、

僕ももう立派な大人だ。

「そうか、そんな感じだね。そっちのは妹さん?」

そんな感じ、なのか。

まぁ17歳の大人として見てもらえているならいいか。

で、そっちのっていうのはグッスリ眠っているナナさんのことか。

まぁこれじゃ妹に見られてもしょうがないよな。

「いえ、姉です。ナナという名前です。」

ナナさんの名誉のためにも、僕は正直に設定を答えた。

「姉?!…。悪いがそうはみえないな。」

エウルクさんは目を丸くした。

…。そんな子供に見えるかな。

一応実年齢も僕より上なんだけど。

「エウルクさんはおいくつなんですか?」

パット見大体30くらいだろうか。

「レディに年齢聞いちゃいけないよ?」

女性に年齢を聞くのはこっちの世界でもタブーなのか。

じゃあなんで年齢聞いてきたんだよ。

「でもまぁこれも何かの縁だしね。

私は今度の12月に19歳になるんだ。」

そう言ってエウルクさんは特別サービスをしてくれた。

今度19歳ってことは…、今18歳?!

18歳で国から調査を依頼されるなんてすごいな。

それに18歳には見えない。

雰囲気が大人だ。

僕の兄は今年20歳になるがこんな大人びちゃいない。

「意外です。もっと大人なのかと。雰囲気も大人ですし。」

老けて見えたわけではないということを精一杯努めて伝えようとする。

「そりゃ私が老けてるって話かな?」

意味をなさない努力…。

それにこの返しもどこかおばさんくさい。

「全然違います。エウルクさん綺麗な方だし、

大人の魅力を持っていると言うか…。」

なんかエロい話になってきている。

「そういうことね。年の割にいろいろと経験してるからね。たぶん君の姉よりも多くを知ってるよ。」

経験…。

具体的には?

という問いは引っ込める。

エウルクさんからその手の話題は引き出せないだろう。

僕の勘がそう言っている。

それにやっぱり、経験は自分の血肉となるんだな。

雰囲気に表れるほどの経験値。

一体過去に何があったんだろう。

「そうでしょうね。僕も姉もまだまだ世間知らずですし。」

そう。

僕らはこの世界の経験値がほぼ0に等しい。

バイトはしたけれど、友達も知り合いももういない。

ここから先で経験を積むしかない。

この世界の普通の17歳、18歳になれるように。

「シュトレスなんかじゃ世間は学べないよ。

世界は広いんだ。旅に出るとそれを知るよ。」

エウルクさんは多分、国からの依頼で色んな所へ行ったことがあるんだろう。

その経験を全て自分のものにしたんだ。

だからこんな大人びているんだろう。

「ですね。イルキュレムにつくまで色々と学んでいきます。」

「それがいい。」

エウルクさんは微笑みながらそう言った。


 旅に出てから2時間くらい経っただろうか。

いつの間にかエウルクさんも眠っていて、

相変わらずナナさんはぐっすり寝ている。

まぁ昨日はバイト三連戦だったし、

寝たのは今日になってからだろう。

そりゃ眠いよね。

電車で眠るみたく椅子に座ったまま首を垂れて寝ている。

壁際にナナさん、その隣に僕が座っていて、

ナナさんは壁に寄っかかって寝ていた。

規則正しく肩を揺らし眠る姿がなんだか愛おしい。

しばらくナナさんの方を見ていると、

走りやすい道へでたのか、馬車が加速した。

そうすると僕の方へ向けて慣性が働く。

ナナさんは僕にもたれかかる形になった。

ドクドク心臓が波打つ。

ただ肩と肩が触れ合っているだけ。

相手がわざとやってきたわけじゃない。

なのに、やっぱりこの状況だと、ドキドキしてしまう。

日本でもそうだった。

電車に乗って、男の人にもたれかかられても特に何も感じないのに、女の人だとやけに心臓がうるさくなる。

そんな自分が気持ち悪くて極力男の人の隣に座るようにしていた。

長らく忘れていたけれど、

僕はやっぱり最低だ。

隣の少女は、僕のこんな葛藤も知らず、

肩を揺らしてすやすや眠っている。

…、別にいいか。

それを見ていたら、なんだか開き直ってきて、

僕も目を閉じ眠った。


 馬車に乗ったところ、エウルクさんと会ったところまでは覚えてる。

でもそこから先は何も覚えてない。

気がついたら、彼にもたれかかって眠っていた。

びっくりしたなぁ。

前は私寝なかったんだっけ。

ん〜。寝てたような寝てないような。

正面に寝ている人はエウルクさん。

彼女とはあまり話さないほうがいい。

仲良くなりすぎるのはよくない。

頼って助けてくれるような人ではないから。

本当なら瑞樹くんとも話して欲しくなかったな。

まぁ彼なら警戒心を怠ることはないと思うけど。

…、可愛い寝顔。

一昨日の夜もずっと見てた。

彼の寝顔は普段の表情から5歳くらい幼くなる。

私の寝顔もそうなのかな。

そう考えるとなんかちょっと恥ずかしい。

こんなジロジロ見るのはよくないよね。

彼は彼の右隣に置いた荷物に寄りかかっていた。

それを私の方へくいっと寄せる。

寝顔は見ないから、

せめてこれだけ、許してほしい。


 馬車を変えるアカラム村についた。

まだ瑞樹くんは寝ている。

その様子を見て、エウルクさんは

「仲の良い姉弟だね。」

と言ってくれた。

やっぱりいい人そうだ。

瑞樹くんは寝ぼけていたから、

「スーパーマンってジャンプ力3?」

とか変なこと言うし、

運ぶのが大変だった。

その様子を見て手伝ってくれたエウルクさん。

いい人なんだけど、これ以上は関わるな。

この人に深く踏み入るな。

私の勘がそう言っている。

別の馬車へと乗ったときも、

瑞樹くんは、

「介護。老人ホームで、給料。」

とかなんとか、

とにかくおかしなことを言っていた。

馬車を変えてからは特に何かを話すこともなく、

沈黙の中を過ごした。


「瑞樹くん起きて。」

先輩…?

「ユツムギだよ。起きて。」

ユツムギ…。ユツムギ?!

あれ?乗り換え…、したのか。

ずっと寝ていたような気がする。

ああでも、途中の乗り換えのとき、

エウルクさんかナナさんと話したような気がする…。

よく覚えてないけど。

せっかく買ったのに、干し肉どこで食べよう。


 馬車を降りると、確かにシュトレスよりかは繁盛していそうな街に出た。

エウルクさんはこっからもう一つ向こうの都市、

ナリボシへと向かう馬車に乗るらしい。

いい人だったな。

でもまぁ、これが最初で最後になりますように。

あの人に次会うのは、多分よくないときだ。

なんとなく、そう思った。 


 そんなこんなで、僕らはこの世界に来てから3つ目の都市、ユツムギへとたどり着いた。

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