第4話
今日は田んぼの防水のために畦に泥を盛り付けて塗り込む“畦塗り”をやっている。
あらかじめ畦に沿って水路を作ってそこに水を通してから土を練り込んで泥を作る。
ほどよい泥ができたらジョレンという先端が三角形した鍬のような農器具で畦に盛り付ける。
今度はジョレンの先端をうまく使って左官屋のように泥を平らにしていく。
はじめは苦戦したけど慣れればお手のもの。
畦塗りが終われば苗床づくりだ。
田んぼの端の方に種籾を蒔いたトレーをいくつも並べていく。
種籾は籾殻付きのお米を咲造さんが数日間、水につけて発芽させた。
「すごい。お米から芽って出るんですね」
「はじめて見るか?」
「はい」
トレーを並べ終わると今度はトレー周辺を囲うように田んぼの土で堤防を作る。
これはトレーを水に浸した状態にするためのプールづくりだ。
次にトレーの上にビニールシートトンネルをかけて苗床のビニールハウスを作るといよいよ水を入れる。
用水路の蓋を開けると勢いよく水が田んぼの中に入っていく。
ジワジワと苗床プールに水が入っていく様子はなんだかワクワクする光景だ。
俺が小学生だったらはしゃいでいた。
いや、本当はこの歳でもはしゃぎたくて仕方ない。
夜ーー
「今日も疲れたなぁ。クタクタだ。はやく風呂に入って寝るかぁ」
『勇者様。私のヒールはいかがですか?』
「ヒーリスか。頼むよーー⁉︎」
バッと俺は振り返る。
玄関にはマナミンの姿が。
「そうか。今日からか」
「そうだよ。ようやく一緒に暮らせるよ」
マナミンは靴を脱ぎ捨てるようにして俺に抱きつく。
「おいおい。いきなり熱いじゃないか」
「建人くん。私、ラジオパーソナリティの仕事決まったよ」
「そうか。じゃあこっちで働けるな」
「うん」
「おめでとう」
俺はマナミンを抱き上げてクルクルと回る。
2人の世界に浸っているところに咲造さんの視線が⋯⋯
「おかえり。範子」
「ただいま。おじいちゃん⋯⋯」
「リフォームしたときお前たちの部屋は防音にしてある。
子供をこさえるときはオラに遠慮するな」
「「は、はい⋯⋯」」
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