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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

表と裏、二重に仕掛けられた「第三者委員会報告書」の真実。

作者: asklib

 スターリンクエンターテインメントは、長年日本の芸能界の象徴だった。スタジオの大きなガラス張りのビルは東京の空に映える存在で、その社名が輝く夜のネオンは観光客のスマートフォンに何度となく収められてきた。所属タレントたちの笑顔は電車の中吊り広告から覗き、テレビ番組では常に彼らのドラマや音楽が流れていた。国民的アイドルグループ「ブルースター」の大きなポスターが表参道の交差点に掲げられ、若者たちが憧れの眼差しで見上げる光景は、ある意味で現代日本の風景そのものだった。


 その裏側で、誰もが薄々気づいていた。タレントたちの不自然な笑顔、インタビューでの緊張した表情、深夜までの撮影スケジュール。時折メディアに漏れ出る「厳しい指導」という言葉。


──ここは、どこか歪んでいる、と。


 けれど誰も、確かな証拠を持ってはいなかった。スターリンクの広報部は巧みに噂を打ち消し、問題を指摘するジャーナリストには「名誉毀損」という言葉を盾に対抗した。テレビ局も広告代理店も、彼らに逆らうことはなかった。ビジネスは、常に平穏無事が第一だったから。


 それが一変したのは、ある人気俳優の暴露だった。沢田陽一、29歳。「誰も傷つかない恋」のヒットで知られる若手スターだ。深夜、酔った勢いでSNSに投下された告白は、当初は「アカウント乗っ取り」と噂されたほどだった。


 「もう耐えられない。スターリンクの地下室で行われていることを全て話します」


 沢田のスマートフォンには、過去5年間の記録が残されていた。接待と呼ばれる深夜の宴会の音声。休日出勤を命じるLINEメッセージ。若手女優たちへの「特別レッスン」と称する行為の痕跡。そして、それら全てを「打ち合わせ費」「研修費」として処理する経理部とのやりとり。


 一夜にして、スターリンクは燃え上がった。メディアは連日報道し、SNSでは #スターリンクというハッシュタグが世界トレンドになった。タレントたちは深々と頭を下げ、涙を流した。記者会見場の白熱灯が照らし出す彼らの顔は、かつての輝きを失い、青白く震えていた。


 そして会社は、すぐに「第三者委員会」を設置した。社会的な批判を鎮めるために。専門家を集め、「真相を明らかにする」と宣言した。記者会見で社長の村瀬は厳しい表情で言った。「全容解明に努め、徹底的な再発防止策を講じます」。カメラのフラッシュを浴びながら、彼の瞳は何も映していなかった。


---


 委員の一人、三浦亮は、社外弁護士として選ばれた。38歳、企業法務を専門とする新進気鋭の弁護士だ。彼の事務所は小規模ながら、コンプライアンス問題で高い評価を得ていた。T大学法学部出身、司法試験首席合格という経歴は、第三者委員会の「信頼性」を高めるのに一役買っていた。


 銀座のホテルの会議室。最初に受け取った資料の山を前に、三浦は目を疑った。法律家の目には、これは単なる「不祥事」ではなかった。


 ──労働基準法違反、安全衛生法違反、性接待、買春防止法抵触。


 ──しかも、それを管理部門も経営陣も「知らなかった」では済まされないレベルで見逃していた。


 書類には明確な証拠が並んでいた。若手タレントの週休ゼロ、月間労働時間300時間超え。「健康診断免除」と称する定期検診の意図的なスキップ。そして「接待研修」と呼ばれる、若手女性タレントによる酒席への同席記録。全て日付、時間、場所が記されていた。


 これはもはや、不祥事ではない。組織ぐるみの犯罪だった。


 三浦は、心の底から思った。「ここまで腐っているとは。」彼の手が震え、コーヒーカップがカタカタと音を立てた。


 だが、白髪交じりの委員長・佐藤はあっさり言った。


 「我々は依頼された立場だ。必要以上に攻撃するのは得策じゃない」


 佐藤は大手法律事務所の名誉パートナー。政府委員会の常連であり、メディアにも顔が利く人物だった。彼は窓の外の東京の風景を眺め、続けた。


 「言葉を選ぼう。"ガバナンス不全"という便利な表現がある」


 彼の視線は三浦ではなく、遠くに向けられていた。会議室の空気が変わった。それは、無言の命令だった。


──見え方をコントロールしろ。それが、無言の指示だった。


 三浦は、自分の立場を思った。妻と3歳の娘。住宅ローン。事務所の若手スタッフたち。そして何より、自分の「名声」。全てが、この瞬間の判断にかかっていた。


 報告書の作成は1ヶ月を要した。三浦たちは昼夜を問わず働いた。資料を読み込み、関係者にヒアリングし、法的論点を整理した。


 そして最終的に、報告書は精緻に設計された。専門家が読めば「これは違法行為だ」とすぐにわかる。しかし、一般の読者には「まあ管理が甘かったんでしょ」という印象しか与えないように。


 違法性を示す事実は、全て脚注に小さく記された。問題行為は「慣行」「業界の習わし」と表現された。経営陣の責任については「認識が甘かった」という言葉で覆い隠された。


 二重構造のレポート。三浦は、その原稿に署名したとき、手が震えた。インクが紙に染み込む瞬間、彼は自分の目を閉じた。


 「これでいいのか」と問う心と、「これが現実だ」と諦める心が、胸の中で葛藤した。


---


 報告書が完成した翌週、スターリンクは異例の試みに出た。第三者委員会による記者会見の開催だ。通常、報告書の提出で終わるところを、あえてメディアを前に説明する機会を設けたのである。

 「透明性の確保」と銘打ったその会見場は、虎ノ門の高級ホテルの大宴会場だった。入り口にはスターリンクのロゴが輝いていた。記者たちはベージュのソファに座り、コーヒーとフランス菓子のサービスを受けながら開始を待った。

 三浦は内心、落ち着かなかった。彼の手元には報告書の要約版がある。全200ページの原本から「エッセンス」だけを抜き出した20ページの文書だ。佐藤委員長が作成したこの要約には、報告書の「核心」が意図的に薄められていた。

 「では、記者会見を始めます」

 スターリンクの広報責任者・藤村が壇上に立ち、マイクを持った。彼女は華やかな笑顔で場の雰囲気を和らげようとしていた。

 「本日は、第三者委員会による調査報告の説明会です。委員長の佐藤先生、委員の三浦先生、山岸先生にご登壇いただいております」

 カメラのフラッシュが光る中、佐藤は落ち着いた様子で報告書の概要を述べ始めた。彼の声は低く、権威を感じさせるものだった。

 「我々の調査では、スターリンクにおけるガバナンス体制の不備、コンプライアンス意識の欠如が主な原因であると結論づけました」

 専門用語を交えた20分の説明の後、質疑応答の時間になった。三浦は緊張した。ここで、本質を突く質問があれば、彼は何と答えるべきか。真実を語るべきか、それとも「合意された説明」を繰り返すべきか。

 最初の質問は、スポーツ紙の記者からだった。

 「沢田さんと若手女優Aさんの間に実際に関係があったのでしょうか?」

 三浦は眉をひそめた。これは報告書の本質とは全く関係ない。佐藤は落ち着いた様子で応じた。

 「個人のプライバシーに関わる事項であり、調査対象外です」

 次は芸能雑誌からの質問。

 「経営陣は実際に違法行為を知っていたんですか?」

 「調査の結果、確たる証拠は見つかりませんでした。しかし報告体制の不備は認められます」

 佐藤の回答は、報告書の通りだった。実際には、経営陣が毎月「接待記録」を受け取っていた証拠が提出されていたにもかかわらず。

 質問は続いた。

 「ブルースター解散の噂は本当ですか?」

 「沢田さんは今後も芸能活動を続けるのでしょうか?」

 「女優Aさんの親が示談金を要求しているという噂についてどう思いますか?」

 三浦は次第に驚きを隠せなくなった。質問は全て、ゴシップ寄りで、法的・組織的な問題点に触れるものはなかった。彼は一度、マイクを取ろうとしたが、佐藤の警告の目があり、思いとどまった。

 2時間に及ぶ会見の終わり頃、ようやく週刊誌の若い女性記者が手を挙げた。

 「報告書によると、若手タレントは月に300時間以上労働していたとありますが、これは法律違反ではないのですか?」

 一瞬、場が静まり返った。三浦は身を乗り出した。しかし、佐藤が素早く応じた。

 「タレント業は労働基準法上の特殊性があり、単純な時間計算だけでは判断できません。ただ、健全な労働環境の整備は必要です」

 その回答に、女性記者は納得していないようだったが、次の質問者に移った。それが会見の最後の質問となり、スターリンクへの本質的追及はついに行われなかった。

 会見後、控室に戻った第三者委員会のメンバーたちの間には、微妙な安堵感が流れていた。山岸委員はコーヒーを飲みながら言った。

 「思ったより簡単でしたね」

 佐藤は小さくうなずいた。「メディアは常に我々が考えるより浅い」

 三浦だけが、窓の外を見つめていた。春の陽光は眩しく、東京の街を照らしていた。彼の胸の内には、どこか空虚な感覚があった。

 「実は...」彼が言いかけたとき、スターリンクの広報・藤村が部屋に入ってきた。彼女の顔には明るい笑顔があった。

 「素晴らしい会見でした!本当にありがとうございます。村瀬社長も大変喜んでおります」

 彼女は三人に深々と頭を下げた。三浦は言葉を飲み込んだ。何かを言いたかったが、もう手遅れだと感じていた。

 「報告書は明日、ウェブサイトで公開します。もちろん、会見の内容と整合性を取ったバージョンです」

 藤村の言葉に、三浦は一瞬目を見開いた。報告書を修正するとは聞いていなかった。しかし、もう彼が口を挟む余地はなかった。

 会見から三日後、報告書はスターリンクのウェブサイトで公開された。そして予想通り、それは「要約版」だった。詳細な違法行為の記述は全て削除され、代わりに「改善計画」のページが追加されていた。

 三浦は自宅のパソコンでそれを見つめながら、こう思った。

「騙された。いや、自分が騙されることを許した」

 何かを言うべきだろうか。内部告発すべきだろうか。しかし、彼には家族がいる。将来がある。そして、そもそも彼自身が報告書に署名したのだ。

 三浦は窓の外を見た。東京の夜空には星がほとんど見えなかった。光害で、本当の空の姿は隠されていた。それはまるで、彼が関わったこの「真相究明」の過程そのものだった。


---


 世間では奇妙な現象が起きていた。「スキャンダル」として騒ぎは続いていたが、そのうち一部のインフルエンサーたちが配信を始めた。


 「いや、これただの芸能ゴシップじゃないから!」


 六本木の高層マンションから配信する男性は、グラスに注いだウイスキーをちらつかせながら熱弁をふるった。フォロワー数50万のビジネス系インフルエンサーだ。


 「これはね、ガバナンス問題ってやつなんだよ!海外ではコンプライアンスとかCSRとか、もっと厳しいんだよ!」


 カフェから配信する女性は、分厚い洋書を画面に見せながら説明した。NYで経営学を学んだというプロフィールが、彼女の言葉に権威を与えていた。


 「世間は表しか見てないけど、わたしたちは分かってるから!」


 得意満面に、誰も彼もが「賢者」を気取った。再生数は爆増し、投げ銭が飛び交った。「専門家視点」「内部告発者視点」「海外視点」。様々な角度から「分析」される映像が拡散した。


 しかし、彼らの語る「ガバナンス問題」は、皮肉にも、スターリンクが用意した"浅い理解"の枠から一歩も出なかった。犠牲者の苦しみではなく「システム」の話。実害ではなく「体制」の話。


 そして何より痛ましいことに、誰も、本当に苦しんだ人々のことなど、気にしなかった。スキャンダルという「コンテンツ」だけが消費され、人間の痛みは忘れ去られていった。


 月日は流れ、話題は次第に移り変わっていった。新しいドラマ、新しいスキャンダル、新しい「炎上」。人々の関心は、まるで砂漠の風のように形を変えた。


 スターリンク社内では、火消し作業が進められた。再発防止策のアピール、新しいコンプライアンス体制の発表。内部通報制度の「強化」。そして何より、メディア対応に全力が注がれた。


 「これで大丈夫だろう」


 副社長の北野は、高級寿司店の個室で酒を傾けながら、経営陣に語った。彼の顔には安堵の色が見えた。窓の外では、銀座の夜景が煌めいていた。


 「我々は適切に対応した。第三者委員会も設置した。これ以上何を求められるというのだ」


 彼らは互いに酒を注ぎ合い、生き延びたことを祝った。「嵐の中心」を脱したという安心感が、彼らを結束させていた。


 だが、数か月後。海外からの取引が、まるで潮が引くように消えていったのだ。


 米国の大手プロダクションからのオファーが突然キャンセルされた。中国の配信会社との契約更新が「保留」になった。韓国の芸能プロダクションからは「しばらくお待ちください」と言われるようになった。共同制作プロジェクトはキャンセルされ、国際映画祭からも招待状が届かなくなった。


 慌てたスターリンクは、海外の大手エージェントにアプローチを試みた。高級ホテルでの接待、豪華なプレゼント。古い手法で関係修復を図ろうとした。


 しかし、返ってきたのは冷たく一言。米国の大手エージェントの代表は、にこやかな表情で、しかし毅然とした声で告げた。


 「申し訳ありませんが、スターリンク様とは土俵が違います」


 北野は動揺を隠せなかった。「どういう意味ですか?」


 エージェントは微笑みながら言葉を選んだ。「リスクマネジメントの観点から...ご理解いただけると。」


 それ以上の言葉はなかった。ただ、別れ際に彼は小さく付け加えた。「第三者委員会のレポート、私たちは英訳して読みました。全文を。」



 スターリンクの役員たちは怒り狂った。役員会議室のテーブルを叩く音が、階下まで響いた。

 「俺たちは謝った!改善した!なんでだ!!」


 北野の声は割れんばかりだった。彼の額に青筋が浮き、ネクタイはしわくちゃになっていた。

 「海外のやつらは、なんなんだ!高潔ぶりやがって!」


 マーケティング担当の取締役は、冷静に状況を分析しようとした。

 「おそらく、彼らのコンプライアンス基準が...」


 だが、村瀬社長の一喝で彼は黙り込んだ。

 「言い訳だ!日本の文化を理解していないだけだ!」


 だが、誰も説明はしてくれない。「総合的判断」「リスク回避」という言葉だけが、空しく並んだ。


 何が悪かったのか。何が届かなかったのか。海外の取引先は、表向きは丁寧だったが、決して本音を語らなかった。そして、取引は再開されることはなかった。


 それすら理解できないまま、スターリンクは、静かに沈みはじめた。四半期ごとの決算数字は少しずつ悪化し、社内の雰囲気も暗くなっていった。


 社内では、まともな感覚を持つ社員たちから順番に辞めていった。渉外担当、マーケティング責任者、若手プロデューサー。


 人事部長の岡田は、離職率の高さに頭を抱えた。「なぜ彼らは去るのか」。出口面談での言葉は、いつも曖昧だった。「新しい挑戦がしたい」「自分のキャリアを考えて」。しかし、岡田は薄々感じていた。彼らはもう、この会社の「未来」を信じていないのだと。


 残されたのは、「俺たちは被害者だ」「世界のほうが間違っている」と本気で信じ始めた者たちだけだった。彼らは毎日、同じ会議室で、同じ言葉を繰り返した。

 「世間は陰謀に踊らされてる」

 「俺たちこそ真の正義だ」


 村瀬社長の言葉は、次第に宗教的な色彩を帯びていった。彼は自分の写真を社内の至る所に飾り、毎朝の朝礼ではその日の「教え」を述べるようになった。


 スターリンクは、次第に小さなカルト宗教のような組織に変わっていった。社内報には勇ましいスローガンが並び、全社員が一斉に社是を唱和する時間が設けられた。懐疑的な声は、「不忠誠」として糾弾された。


 外の世界との接点は絶たれ、内部だけで熱狂が回り続けた。東京の片隅で、彼らだけの「正義」が培養されていった。


 彼らは、もはや自分たちが「沈んでいる」ことすら、理解していなかった。市場シェアの低下、視聴率の下落、契約解除の連続。全てが「一時的な逆風」と呼ばれた。現実から目を背け、自らの世界に閉じこもることで、彼らは安心を得ていた。


 三浦は、その全てを静かに見ていた。彼はもう委員会の一員ではなかった。任務は終わり、報酬も受け取った。法律家としての仕事は、完璧にこなした。


 しかし、彼は時々、夜中に目が覚める。汗びっしょりになって、喉が渇いた状態で。


 (これが、一つの報告書で動いた未来か。)


 彼の署名も、そこに刻まれている。彼の沈黙も、そこに含まれている。彼は時々、自分の手を見つめた。この手で書いた言葉が、何千人もの運命を変えた。タレントたち、スタッフたち、そして視聴者たち。


 誰も悪意を持っていなかった。佐藤委員長も、三浦も、スターリンクの経営陣も。彼らはただ、「現実的に」振る舞っただけだ。できる範囲で「妥協」しただけだ。それなのに、誰もが少しずつ、少しずつ、崩壊に加担していた。


 三浦は今、別の仕事に取り組んでいる。別の会社の、別の問題。彼の評判は維持され、クライアントは増えた。彼の「専門性」は高く評価されている。


 しかし、夜になると、彼はスターリンクのビルを遠くから見つめることがある。かつての華やかさは影を潜め、窓の灯りも少なくなった。だが、屋上の社名は今も輝いている。


 そして、スターリンクは今日も煌々とビルに灯りを灯している。見えない国で、見えないまま、確かに沈み続けながら。


 ビルの最上階では、村瀬社長が一人、東京の夜景を見下ろしている。手元のグラスの氷が、静かに溶けていく。彼の目には、かつての輝きはない。ただ、虚ろな光だけが残っている。


 「我々は間違っていない。世界が間違っているんだ」


 彼はつぶやいた。誰にも聞こえない声で。


 窓の外では、新しい時代の東京が息づいていた。彼の知らない何かが、確かに動き出していた。しかし、彼の目には、もはやそれが見えなかった。


 彼の王国は、確かにまだそこにあった。しかし、それはもう誰の目にも映らない、見えない国になっていた。


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インターネットの片隅にある、ひっそりとした個人ブログに、以下の「分析資料」が掲載されていた。

―――――――――――――――――

昨今、大手企業における芸能界関係者の不祥事を受けて、設置された第三者委員会の報告書が公表されました。


 この報告書は、読む人の知識や立場によってまったく異なる印象を与える非常に巧妙な構造を持っています。

今回は、この報告書に仕掛けられた「見え方の罠」について考察します。


  国際的・法律的な専門家の目線では

  国際法や国内法の重大な違反が複数確認できる

  労働基準法、安全衛生法、買春防止法への抵触も明らか

  現場で発生した性接待の経費精算を、管理部門や経営陣が見逃していた


  もはや単なるガバナンス不全ではなく、組織犯罪化しているとさえ言える


  一般の世間目線では

  目立つのは有名芸能人の問題スキャンダル

  「ガバナンスが甘かった」という抽象的な理解で満足してしまう


 つまり、

 専門知識のある人が読めば「これは組織ぐるみの違法行為だ」とわかる一方で、

 一般の読み手には「まあ管理が甘かっただけでしょ、結局スキャンダルでしょ」と受け取らせるように、意図的に設計されているのです。


 第三者委員会はあくまで依頼主から調査を依頼される立場にあるため、

  依頼主を直接批判しすぎず

  社会的批判も最低限にとどめ

  世間と専門家の間で見え方をズラす


 ことで、組織全体のダメージを最小限に抑える構成になっています。


 このように、今回の第三者委員会報告書は、

 読む人の知識や立場によって全く違った世界を見せる、非常に巧妙に設計されたものであると言えます。


 しかし、国際的・法律的な専門家の目線から見れば、

 組織犯罪化の兆候を見逃すことはできず、

 もともと盤石とは言えなかった信頼基盤に、

 今回の騒動が決定的なダメージを与えたと言えます。


 この構造を本質的に是正する実効的な解決策を打ち出さない限り、

 国際社会において新たな信用を築くことすら、極めて困難なのではないでしょうか。

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