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玉手箱を貰わない方法

 浦島は亀を助けた礼に竜宮城へ招待された。

 海の底の竜宮城で盛大なもてなしをうけ、地上へ戻ることとなった。


「決して開けてはなりませんよ」


 乙姫が玉手箱を手渡す。


「いりません」


 浦島は丁重に断った。


「開けてはならないんだったらいりません」

「思い出ですよ。思い出」

「何が入ってるんですか」

「言えません。言ったら開けたくなるでしょう」

「言わない方が気になって開けたくなるじゃないですか」

「………」

「あれ? 開けさせようとしてます?」


 黙った乙姫を浦島が覗き込む。


「毎日これを見て私とここで過ごした日々を思い出せばいいじゃない」

「重い女~」

「あのお」


 横から亀が口をはさむ。


「出発しないんですかあ。待機してる時間ももったいないんですけどお」

「せっかちだな亀のくせに」


 亀差別を口にした浦島に乙姫は玉手箱を押し付ける。


「受け取りなさい」

「嫌ですって。もうむしろここで開けません? そうしましょう」

「それはなりません。受け取りなさい」


 玉手箱をはさんで押し問答。

 亀が腕時計を確認している。


「隙あり」

「あっ」


 玉手箱を閉じていた紐が解かれていた。

 乙姫は必死で上から押さえつける。


「なりませんんんんんんんっ」

「必死すぎる。やっぱり変なもの入れてるんじゃないですか!?」


 浦島は煽った。


「地上へ帰すって話も怪しくなってきたな! 異世界に飛ばされたりしません!?」

「なぜそこまで疑り深いのか! あれだけもてなしたのに!」

「もてなされたからじゃないですかね! 亀助けた程度で三日三晩ですよ!? タダより怖いものはありませんからね!」

「開けてはなりません!!!!!」


 二人は玉手箱の蓋を掴んでさらにヒートアップする。

 鯛と平目が観戦している。

 その様子を亀が足ヒレを踏み鳴らして見つめている。


「そろそろ出発しませんかあ」


 亀を無視して二人は玉手箱を押し付け合っている。


「開けましょうよ! 中身が変な物じゃないっていうならさ!」

「開けないことに意味があるんです! そういう物! 儀式! 礼節! 道徳!」


 亀がキレた。


「そんなに言うなら乙姫様も地上に出ればいいじゃないですかあ」


 押し問答が止まった。


 かくして、乙姫と浦島は地上へ出た。

 地上では千年の時が経ち浦島の父も母も亡くなっていたが、乙姫が玉手箱を開けさせようとしてきたのでそれどころではなかった。


 二人は夫婦になり、死の間際まで玉手箱の開ける開けないで喧嘩をしていたらしい。

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