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なんとか短編集  作者: 月這山中


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33/37

猫の妖精、アイドルになる

「ということで、よろしくお願いします」

 綺麗に三つ指ついてトラは言った。

 三か月前から地域猫として面倒を見ていて、自分もたまに撫でてやったりもしたのだが、突然正座して喋り出すとは思わなかった。

「わたくしアイドルとしてやっていきますので」

「あてはあるのか?」

「事務所は門前払いでした。母が今年二歳なので保護者として認めてもらえません」

 猫ならではの悩みを言いながらトラは毛づくろいを始める。ストレスを感じる質問だったらしい。

「あー……なろうか? 保護者」

 手を上げてみる。トラの髭が震える。

「よろしいのですか?」

「同じ地域に居るんだしな」

「ありがとうございます。早速事務所へ向かいましょう。」

 尻尾を立てたトラについていった。

 テナントビルに入っている芸能事務所に訪問する。

「だめだよ」

 門前払いを食らった。

「この子喋ってるじゃない。化け猫はうちはお断り」

「化け猫じゃなくて妖精です。アフレコの必要ありませんよ」

「だめだめ。絶対だめ」

 取り付く島もなかった。

「仕方ありません。別の事務所へ向かいましょう」

 候補はいくつかあるようだった。


「だめだね」

「無理です」

「魔女の手先よ、去れ!」

 すべて門前払いだった。酷いところでは箒で叩き出された。

「仕方ないな。作るか事務所」

 自分が提案すると、トラの髭が震える。

「よろしいのですか?」

「悔しいだろ。トップアイドルになってやろう」

「ありがとうございます。地域猫一同感謝を表明します」

 尻尾を立てたトラに足をこすられた。

 アパートの一室をもう一つ借りて『アイドル事務所 ちいきねこ』という看板を取り付けた。

 翌朝、枕元に大量のスズメやヤモリの遺体が転がっていた。

「感謝の表明か」

 ちょっと驚いたが冷静に処理した。


 ちいきねこの経営を始めて三日、初めてのオファーが入った。

「今度オープンするペットホテルのCMなんです」

「受けます!」

 トラはやる気だった。

「モデルウォーク、トーク技術も磨いてきました! いつでもやれます!」

「二足歩行、おしゃべり、その他猫らしからぬ行動は無しでお願いします」

「ぐっ」

 すごく残念そうだった。

 CM撮影は順調に始まって、終わった。

 トラは終始カメラの前で澄ました顔で座っていた。

「モデルウォーク……」

 まだ未練があるらしい。

「いつかお披露目できるよ」

 自分はよくわからない励ましをした。


 一か月後、初めての給与が発生した。

「すみません、自分猫なので銀行口座がなくて」

「じゃあ現物支給で」

 おやつを取り出す。トラの髭が揺れた。

 お皿に開けると顔を突っ込んで食べ始めた。

「うまいなあ、うまいなあ」

「しゃべる猫の動画みたいになってる」

 その様子を撮影した。

 動画サイトに上げたらそこそこ再生数が稼げた。

 事務所の経営はしばらく大丈夫だろう。



  了

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