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なんとか短編集  作者: 月這山中


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宇宙は猫に憧れる

 宇宙は猫に憧れる。

 あらゆる形になれる猫に。

 宇宙の形は長い長いひもによって、確定してしまったのだ。

 宇宙は猫に憧れる。

 ドーナツ型でもあり液体でもある猫に。

 猫は宇宙のことなど知らないし、自分がドーナツ型で液体であることも関係ない。

 宇宙は猫に憧れる。

 星を孕んだ宇宙は何百億年という爆発の末にいつか膨張を終えて、収束をむかえる。

 猫はいくつかの仔猫を孕んで未来を託す。

 宇宙は猫に憧れる。


 人間たちはある実験をした。

 外宇宙まで飛んでいけるロケットに、猫を乗せたのだ。

 生存可能なほどのご飯とトイレも乗せて、猫が退屈しないようにねこじゃらしも備え付けた。

 猫は入れられる時に少しだけ嫌がったが、狭いロケットの中が快適なことに気付いて中央のクッションに丸まった。

 ロケットは発射される。

 地上から離れ、燃料を切り離しながら推進し、重力圏を離脱した。

 猫を縛っていた安全ベルトが予定通り切り離されて、猫はご飯にありついた。

 宇宙の中を突っ切って、何日も何日もかけて宇宙の端へと到達する。

 猫はねこじゃらしで遊んで、自動で消臭と掃除をしてくれるトイレを使った。

 宇宙の端から外宇宙へと飛び出しても、推進力は衰えない。

 猫のバイタルサインは地球へ送られて、毎日テレビニュースで報道された。猫は毎日遊んで食べて眠った。

 その日、猫は宇宙にさよならをした。

 宇宙の形を初めて見た猫は、宇宙というものを認識して、それが自分たちに似ていることを知って、そっと目を閉じた。


 人間は宇宙にも猫にも憧れる。

 自分たちの可能性の向こうにそれがあると信じて、宇宙を、猫を、彼らの謎を解明しようとする。

 宇宙が猫に憧れていることを知った時、彼らはそれも解明しようとするだろう。


 猫を外宇宙へ飛ばした人間たちは批難され、職を追われた。

 残酷なだけでなんの意味もない実験だったと、人間たちは外宇宙へ行った猫に謝罪した。

 そんなことは猫には関係ない。

 猫は宇宙の形を知ったのだ。

 遊んで、食べて、眠って、孕んで、増えていくだけだった猫の目に、宇宙は認識されたのだ。


 宇宙は猫に憧れる。

 猫の目に認識された宇宙は、憧れの存在に認識された宇宙は、膨張速度を少し緩めた。

 終わりの時が少し遅くなった。


  了

 

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