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なんとか短編集  作者: 月這山中


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きみにじゃまされない

 きみは赤い雛壇の上に立って自慢気にしている。

 おだいり様の纓をふんふん嗅いで、かじってみたりして、好き放題だ。

 下ろしたら下ろしたで、彼女たちをしまっていた箱に入り込んで、そのまま押し入れにしまってしまわないかと、防虫剤を噛み破らないかとヒヤヒヤする。

 ようやく居なくなったかと思ったら、雛壇の裏側の空間で寝転んで、支えを外しそうになる。

 きみが居る空間でひなまつりを断行することは、あまりにも困難だった。

 三人官女の小さな道具を前足で叩いて転がしていったり、五人囃子の楽器を飲み込みそうになったり、しっぽで屏風を倒したり、扇子をバラバラにしかけたり、牛車の牛に威嚇してみたり、本当に。

 部屋の外で遊んでいればいいのに、きみは人間のそばから離れようとしないから、ひなあられが散らばっても知らんぷりなくせに、「手伝ってやってるんだ」って顔でおひなさまを並べる邪魔をしていた。

 邪魔をしていたんだ。

 きみがいるから、部屋に切り花の一本だって飾れなかった。

 ある年、きみに邪魔されなくなった。

 寒い冬の日にきみが去っていったから。

 あまりにも簡単に並べ終わって、きみが居なければひなまつりはこんなに簡単で、つまらないのだと気付いた。

 きみが居ない空間に耐えられなくて、ぼくは新しい子猫を飼った。

 この子も雛壇の上に立って自慢気にしている。

 纓をふんふん嗅いで、菱餅の角をかじって、箱に入り込んで、支えを外しそうになって、楽器を飲み込みそうになって、しっぽで屏風を跳ね飛ばして、扇子をとうとうバラバラにして、牛車の牛に勝ってしまった。

 きみとは違う。

 きみよりもおてんばだ。

 きみが居ない事実は変わらないけれど、ひなまつりはまた困難で楽しい日になった。

 だから、安心しなよ。


 おひなさまのほうが耐えられなくなったから、今年は修理に出した。一応おばあちゃんから受け継いだものだから大事にしたいのだ。代わりに折り紙のおひなさまを小さな手と一緒に飾った。

 大きくなった子猫はピンクの折り紙で折ったカエルを一生懸命追いかけている。

 きみが居ない事実は変わらないけれど、楽しくやっている。

 手伝わなくて邪魔ばっかりしていたと思っていたけれど、やっぱり手伝ってくれてたのかな。

 だけど、安心していいよ。


  了

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